2025年3月24日号をもって休刊します。
(3月24日号)
サーキュラーエコノミーという言葉をよく聞くようになった。「CE」と略されるらしい。先日リコーが発売した再生複合機は、以前は「RC(リコンディショニング)機」という名称だったが、今後はCE機として循環型社会を目指すという▼日本オフィス家具協会が年初に開催した講演会でサステイナビリティ技術設計機構の原田幸明代表理事は「CEがリサイクルすることだと勘違いしている人が多い」と指摘した▼一度使ったモノを廃棄せずに再資源化して利用するリサイクルはたしかに重要だが、「大量生産・大量廃棄を前提にしたまま、どんどん再生しましょう、というのは間違いです」と忠告▼環境にも優しく、経済も元気にするにはどうすればいいのかを考えるのがCEだという▼モノからコトの時代になってハード商品の価値が下がったような時代になったが、「サービスを提供するにはモノがいる。何も持たずに仕事する人はいない。やはり事務機≠ヘ必要です」▼CEは商品の経済的価値と持続可能価値の両方を上げることを目指す。「売れさえすれば良いというビジネスは行き詰まる。売ったあと、『劣化を抑えたい』『使い勝手を良くしたい』『使用後はどうする』という使用者のニーズをビジネスにする」▼メンテナンスやアップグレードなど顧客に寄り添う事務機屋さんは昔からCEの実践者だと思う。
(2月17日号)
数年前に発症した足の痺れが重症化し、病院や整体院を転々としている。レントゲンやMRIなど画像検査を受けても原因が分からず、医師によって診断が異なる▼症状が軽くなるだろうということで一年ほど前からリハビリを受けているが改善するどころか悪化している▼医療機関では様々な文書がやりとりされる。医師から他の病院の医師への紹介書、予約通知書、受け付け票、問診票、診療費請求書・領収書、明細書など、患者の私が手にするのは全て紙文書▼どんな施術を行なえばいいかを医師が記述し、その文書が理学療法士に手渡され、・・・略・・・
(1月17日号)
今年の年頭所感の冒頭で多く見られる語は、「混沌」「予測困難」「あいまい」「不確実性」「不透明感」「不安定」など。変化が激しい環境が続いて先行き見通しづらい時代だということだと思う▼課題解決をスムーズに実行するには明解な答えを得やすい時代になってほしいと思うが、脳生理学者の酒井邦嘉氏は著書『デジタル脳クライシス』で、すぐに答えを求めようとするAI時代の趨勢に警鐘を鳴らしている▼答えがなかなか見つからない「もやもや感」が大事だという。「ネットで検索し、答えらしきものを得て目的を達成したと勘違いしてしまう。探求のゴールではなく出発点なのに」▼もやもやした気持ちで悩み、分かりにくいことや複雑なことを体験する過程が重要だそうで、・・・略・・・
2025年↑
2024年↓
(12月16日号)
大阪府印刷工業組合に所属する印刷会社数社が8月に大阪で開催された「文紙メッセ」に初出展し、10月にこれも大阪で開催された「ぶんぐ博(オフィスフェア)」にもブースを構えていた▼来場者である一般企業のユーザーは会場に並んでいる商品に違和感はなかったようだが、業界的には流通も商習慣も異なり、我々は別物とみなしていた。商品に親和性があると気づく業界人は少なかったらしい▼レターセットやメッセージカード、カレンダーなど味わい深いオリジナルの紙製品を披露していた印刷出展社に聞くと「認知を広げたいので出展した」と語っていた▼複写サービス業を営む人たちと印刷屋さんとが交流し学び合う様子は近畿ドキュメントサービス組合の取材でこれまで何度かお伝えしてきたが、・・・略・・・
(11月15日号)
先日、外国籍の知人から「妹が一か月日本に滞在するので日本語を教えてやってほしい」と連絡があり、たまたま隣人がその国の言葉を学んでいたので両者を引き合わせた▼そのとき驚いたのは両者とも高性能の通訳アプリを自分のスマートフォンに搭載していることだった。自国語で入力すれば知りたい相手の国の言葉が文字だけでなく音声も流れる▼こんなすごいツールを持っているのならわざわざ会わなくても自習できるのにと思ったが、依頼者は「日本人と日本語で話したい」ニーズがあることがわかった▼数か月前、神戸で日本語教室を運営する知人にAI翻訳について尋ねた。「翻訳機能が進化して、もう教師は教える必要がないのでは?」・・・略・・・
(10月15日号)
情報漏洩と聞くとサイバー攻撃など外からの脅威だと思いがちだが、内部関係者の不正行為によって起こる漏洩もある。内部不正が発生する原因や対策についてSkyがメールマガジンで解説していた▼内部関係者の中にはすでに退職している人も含まれ、在職中にもっていた情報を勝手に利用するのも不正行為。アカウント情報を悪用しログインや印刷、USBメモリ、クラウドストレージなどへデータをコピーして持ち出すなどケースは様々▼個人が不正に手を染めるときの心理的要因を「機会」「動機」「正当化」の三つの観点からモデル化したのが「不正のトライアングル」。1950年代にアメリカの犯罪学者D・クレッシーが提唱した▼不正が発生すると、組織の社会的信用が失墜し、・・・略・・・
(9月17日号)
7月に開催されたJBMIAの成果発表会ではプリンター・複合機部会が「紙が残る事業領域(業種・業務)に関する調査」の結果を報告した。ペーパーレスが進むなか複合機・プリンターのビジネスが継続できるかどうか、これは事務機業界にとって大きな問題▼調査は、教育・医療・介護・販売の四つの業種のユーザーを訪ねて紙の出力量に影響を及ぼす要因として、働き方/コスト削減/セキュリティ意識/環境意識/法規制を切り口にして仮説を立てて行なわれた。その結果、紙の使用が根強く残る領域と、紙が減っていく領域が明確に分かれる「ドーナツ化現象」が発見された(詳細は前号の記事)▼「根強く残る領域」は存在するとはいえ、・・・略・・・
(8月9日号)
日本画像学会が発表した「第4回複写機遺産」では1962年から79年に開発された四つの製品が新たに認定された。同学会から頂いたパンフレットの冒頭には複写機遺産委員会の服部委員長の想いが綴られていた▼ロシアのウクライナ侵攻が止まず、「無人機による攻撃など最新の技術が破壊と殺戮に利用されているのを目の当たりにするや科学技術に携わってきた者として無念さを感じずにはいられない」▼科学技術者の使命の重さ。このパンフレットが刊行された6月、オッペンハイマーが終戦19年後に被爆者と面会し、「涙を流して謝った」と通訳が証言している映像が広島で発見されたニュースが報じられた▼文書を複製する機械が軍事転用される危険性があるのか
・・・略・・・
(7月16日号)
『縁の下のイミグレ』という外国人労働者をテーマにした映画を観た。技能実習制度の問題点が語られ、日本全体が抱える課題を訴える▼31年前に始まったこの制度は途上国への技術移転という理念があるが、技能実習生は実際は企業の現場で労働しているのに、「働いている」とは見なされず、職場を変更できないルールになっている。職業選択の自由が無く、映画では監理団体の事務長が「現代の奴隷制度だ!」と叫ぶ▼これを改善しようと新たに創設された「特定技能実習制度」では自分のしたい仕事を選ぶ権利がもてるようになり、仲介手数料もかからず来日のために多額の借金を背負うことも少なくなるという▼だがこの制度は、・・・略・・・
(6月17日号)
『風と共に去りぬ』はハリウッドの金字塔と言われた米国映画の題名だが、これとよく似たタイトルのニュースを見た▼『紙とともに去りぬ』。腹が立ったりカッとしたとき、紙に文字を書いて捨てると気持ちが鎮まることを名古屋大学大学院の情報学研究グループが実証した▼「アンガーマネジメント」という、怒りを予防し制御するための心理療法プログラムがビジネスコミュニケーションの観点でも取り上げられることが多いが、同研究グループによると、実験や客観的事実に基づいた手法ではないらしく、ノウハウを身につけるのに手間がかかり、また、怒っている最中に実践するのは困難だという▼このたびの実験では、怒りを感じたときの状況を客観的に紙に書き、その紙を丸めてゴミ箱に捨てると、憤った気持ちがおさまった。紙を捨てずに持ったままだと怒りは下がらなかった▼ゴミ箱に捨てるかわりにシュレッダーで細断すると効果はさらに高いらしい。今後は・・・略・・・
(5月20日号)
NHKで過去に放映されたドキュメンタリー番組「プロジェクトX」が先月から新シリーズとしてオンエアされている。旧シリーズでは昭和の高度経済成長期に様々な現場で奮闘した人たちの挑戦する姿を取り上げていた▼事務機業界として印象に残っているのは、「運命の最終テスト〜ワープロ・日本語に挑んだ若者たち」や「突破せよ 最強特許網〜新コピー機誕生」▼日本では文書を作成するのに和文タイピストに依頼するしかなく、「ひらがなを漢字に変換できて誰もが使える日本語ワードプロセッサーを作ろう」と東芝の技術者と工場の人たちが商品化に挑んだ▼キヤノンは独自の感光体とトナーのクリーニング技術で普通紙複写機を開発。耐久テストが何度も行なわた苦労をこの番組で知った人は少なくないと思う▼陰で支えた人たちに番組は脚光を浴びせた。これらは昭和の時代だけの話ではなく、今もひたむきに仕事をし、情熱を燃やしている「挑戦者」は多いはず。業界紙としてはそうした人たちを取り上げたい▼ただ、デジタルの時代になって奮闘努力の過程は見えにくくなっているかもしれない▼トヨタ自動車の元社長、豊田英二氏は・・・略・・・
(4月15日号)
2月に開かれた「キヤノングランドサミット」表彰式でCE部門の頂点に立ったステラグループの受賞者が語った言葉が印象に残った。「我々は降(くだ)っているエスカレーターに乗っているようなもので、何もしないでいるとどんどん下がってしまう」▼顧客先での現場対応力を維持するためには常に学び続けることが大切だと例えた表現。エスカレーターで必死で足をバタバタして逆走している光景を思い浮かべた。急き立てられるような気分になったが、それほどデジタル技術は日々刻々と進化していて気を抜いたら業界の動きについていけなくなるのだと思い知らされた▼リクルートマネジメントソリューションズ社が20〜59歳の一般社員や管理職に実施したアンケート調査では・・・略・・・
バックオフィスの課題を一挙に解決できる展示会 https://www.office-expo.jp/tokyo/ja-jp/visit.html
(3月25日号)
日本人の睡眠時間は世界的に少ないらしい。不足する理由として働きすぎや長い通勤時間などが指摘されているが、授業中に居眠りする高校生が日本は米国の4倍というデータがあり、働く前からの生活習慣に原因があるのかもしれない▼「ウトウトタイム」という10分間の昼寝時間を実施する熊本県の中学・高校を先日ニュースで見たが、短時間仮眠をとることでその後の学習に効果が表れるという▼プラスとゴールドウイン社が疲労回復と集中力の向上を効果的に得るための仮眠前後に行なうストレッチを実証実験するプロジェクトが12月のフェア会場で紹介されていた▼生産性を上げるだけでなく仮眠をとることは運輸や交通の仕事ではたいへん重要で、・・・略・・・
(3月11日号)
事務機の業界新聞社の記者らから素朴な質問を受けた。「オフィス家具の業界が好調だそうだが、信じられない。なぜ?」▼たしかに、リモートワークの発達で会社へ行く人が減り、職場の面積を縮小したり、拠点を閉鎖するところもあるなど、オフィス設備の需要は減少しているようなので儲かるはずはないと私も思っていた▼だが、オフィス家具を取り扱っている事務機屋さんに尋ねると、プチ・リニューアル≠フ要望が旺盛なのだという。例えば、・・・略・・・
(2月26日号)
友人にすすめられて自己啓発セミナーを視聴した。「今すべきことを見定めて100%行動すること」「過去を引きずらないようにすれば可能性は広がる」と教えを受けた▼「不安になったり、億劫に思っていた仕事も、少し距離を置いたところから自分を俯瞰するように見つめたら解消する」など数々の気づきがあって新鮮な気持ちになれた▼3年後に自分がどうなっていたいかを書き出し、それを妨害する事柄も書き並べる。自分を3年後の時点に置いて、その未来の自分が今の自分を見つめる演習だった▼Konel(コネル)という組織が、未来の自分からビデオレターが届くシステム「FUCHAT(フューチャット)」をAIを使って開発したというニュースを見た・・・略・・・
(2月12日号)
「当社の大半のお客様は中小企業=v。この業界で頻繁に聞く言葉だが、先々月のウエダ本社と一般社団法人ベンチャーFORジャパンとの連携協定締結を取材して、別の呼び方があることを知った▼「地域企業」。京都市では、規模の大小を表す中小企業≠ゥら、地域で必要とされる地域企業≠推奨していくために条例を定めて役所の部門名を変更しているという▼『京都市中小企業未来力会議』は『京都市地域企業未来力会議』に変わった。「多様な業種の企業が業種横断的に議論し、行動するこの会議において、現場の声を反映し、振興策を検討、企業間連携によって社会の課題解決に繋がるビジネスアイデアの創出を後押しする」▼先月の関西リコー会の賀詞交歓会で・・・略・・・
(1月29日号)
政治資金パーティーをめぐる裏金事件では議員の事務所でデータが消去される事態も起こった。こうした不信は他の領域でも起こりうるのではないかとの声がある。世の中には様々な問題が山積し解決に向けて頑張っている人たちもいるのに、政治が足を引っ張らないようにしてもらいたい▼大不祥事として記憶されるリクルート事件が発覚したとき自民党は反省を踏まえて「政治改革大綱」を掲げたが、年数が経つと理念は受け継がれなくなるのか▼弊紙には今年も多くの団体や企業から「年頭所感」が寄せられた。課題を明確にし、解決に向かっての抱負が語られている▼JIIMA(文書情報マネジメント協会)の勝丸理事長は、・・・略・・・
(1月10日号)
今年の干支「甲辰」は「春の日差しが、あまねく成長を助く年」という意味があるらしい。「成長」は、政府が提唱する経済対策の五本柱の文言に二度も出てくるし、なにより事務機業界では成長路線を歩みたい企業や個人が多数いると思われる▼NHK交響楽団の元コンサートマスターの篠崎史紀氏は、成長が止まってしまう人は、迷いが出て足踏みするのだと言う。若いころは無心にやれていたのに、ある時期になるといろんなものが見えてきて他人と比較したり競争を意識するようになり、本来追うべきものを違うものに変換してしまうのだと▼一歩踏み出せばいいことなのだが、・・・略・・・
2024年↑
2023年↓
(12月25日号)
「バックオフィス? 後ろじゃないよ 最前線」「大谷より すごいよ総務は 何刀流?」…。先月大阪で開催された「総務・人事・経理Week」でバックオフィス業務についての川柳の募集があり、来場者による投票の結果で優秀賞が後日に発表された▼審査員は「会社を変えようと努力している自負心と悲痛な叫びが見られた。ぜひ、他の部門の方や経営者に見てもらいたい」とコメントしていた▼弊紙など事務機器関連の業界紙にとってバックオフィス業務の効率化は昔から取材対象の中心だった。だが、最近は変化してきている。JIIMA(日本文書情報マネジメント協会)の講演(前号に記事)では、・・・略・・・
(12月日11号)
地球の環境を壊さず、未来の世代も美しい地球でずっと生活をし続けていける、そういう世の中にしなければという意識が高まっているが、どのように行動したらいいのか分からない人は少なくないのでは▼国際紙パルプ商事が先月までに全国各地9カ所で開催した「スポGOMI」は、「ゴミ拾い」に「スポーツ」の要素を加えて「競技」へと変換させたイベントで、参加者は「他のチームと競い合う意識で取り組むことができて楽しかった」と感想を話していた▼拾われたゴミは「燃えるゴミ」「燃えないゴミ」「ビン・缶」「ペットボトル」「たばこの吸い殻」。今年9回での総重量が約400sに及んだという▼これを個数に換算するのは難しいようだが、「ポイ捨て」される回数は相当な数だと思う。日本で美化運動が活性化したのは1964年の東京オリンピックを控えた頃だと聞いたことがあるが、・・・略・・・
(11月27日号)
リアルのオフィスワークとテレワークを切り替えて働くハイブリッドワーク。米国ではハイブリッドワークを行なう人の9割がこの働き方に満足している一方で、オンライン会議は65%が避けたがっているらしい▼理由は、会議室に出席している人とリモートで参加している人とで温度差が生じ、せっかくの会議が非効率なのだと▼先月横浜で開催されたキヤノンEXPOで黒山の人だかりが絶えないブースがあった。キヤノンUSAが「CESイノベーションアワード」で最優秀賞を受賞したウェブ会議ソリューション「アムロス(AMLOS)」は、リモートで参加している人もリアルの会議室にいるかのような臨場感の高いオンライン会議を実現できると説明していた▼リモート参加者に複数の視点を提供することができるのが特長。例えば、一般の会議システムでは、・・・略・・・
(11月13日号)
販売店の強みは何と言ってもエンドユーザーに近いところにいることだろう。日頃からユーザーに接することで顧客の微妙な変化を感じ取ることができる▼この3〜4年のコロナ禍でオフィスユーザーはかつてないほどの変化を経験しているはず▼NTT西日本のビジネス情報サイトでは「コロナ禍を経て働き方を取り巻く環境が大きく変化した。大企業だけでなく中小企業にも要求が高まってきている」としてデジタル化をあげている▼「アナログで生き抜くと決め込んでいても取引先からの要望に応える必要が出て、デジタル化に取り組まざるを得ない場合が多々ある」と指摘する▼そして「ビジネスパーソンの働き方は多様化した。AIを駆使して業務の内容や量を可視化する必要がある」と、・・・略・・・
(10月23日号)
新型コロナウイルスのmRNAワクチン開発でノーベル生理学・医学賞を受賞したカタリン・カリコ氏とドリュー・ワイスマン氏は26年前に大学のコピー機の前で出会ったことで研究への取り組みが始まったという。学術誌の写しをとろうと並んだ共用コピー機の前で会話したことが契機となった▼受賞会見でカリコ氏は「当時は対面で話し合うのが唯一の交流の方法で、素晴らしいプレゼンテーションを楽しんだ」「もっとコピー機を設置して、そこで話す機会を増やせばいいのに」と語った(朝日新聞)▼自席を離れて、コピー機が置いてあるところまで行き、そこで偶然会った人と立ち話しをする。そんな光景は昔はよくあったように思うが、今はどうだろうか・・・略・・・
(10月9日号)
18年ぶりにリーグ優勝を果たした阪神タイガースの岡田監督は今季の方針として「守り」を重視したという。スポーツニュースなどを見るとホームランやヒットなど打撃の場面が印象に残るが、チーム打率は全球団の中で上位ではなかったらしい▼ダントツの1位だったのは、四球(フォアボール)の数。今シーズン開始時、岡田監督は四球の査定ポイントを上げる制度を導入するよう球団にかけあった。四球で塁に出ることで得点力は上がった▼野球の「守備」は企業でいえばバックオフィス業務か。事務機器が最も稼働する部門かもしれない。投手の活躍は相手の攻撃を防御する強固なセキュリティシステムといえそう・・・略・・・
(9月25日号)
シャープが補聴器の「敬老の日キャッシュバックキャンペーン」を実施している。ホームページでは同社のオフィス機器担当の営業部長が難聴のため補聴器を使用するようになった経緯がストーリー風に掲載され、顧客の注文を聞き間違えたり、会議や懇親会で人の声が聞き取れなかった経験を語っている▼高齢になっても働く機会が増え、難聴に苦しむ人は少なくないと思われるが、補聴器をつけることに躊躇いを感じる人が多いのが現状。聴こえにくいとコミュニケーションがとりにくくなることから高齢期に認知症のリスクが高くなるというデータがある▼補聴器の適切な使用を働く人に寄り添ってサポートするのは事務機ディーラーが適任ではないかと思う。・・・略・・・
(9月11日号)
先月開催されたリコージャパンの「バリュープレゼンテーション23」で、HDT(ヒューマン・デジタル・ツイン・アットワーク)という研究が紹介された。これは、人間が捉えきれない、周囲の環境や働く人の状態をセンシングして、そのデータを働く人へフィードバックするという、第六感を与えるデバイス▼オフィスワークをはじめ、設備管理や物流での活用が想定されていて、一人ひとりの能力を最大限に発揮できる状況をつくり出すことを目指す。業務の記録やノウハウをデバイスでデジタル化するだけでなく、その人が気づかなかった注意事項もそっとさりげなく知らせる▼もう一つ紹介された「AIエージェント」は、AIが音声で実際に人と会話しているかのように提案したりコミュニケーションを良好にしてくれ、顧客や患者の本心を聞き出すこともできる。社内では例えば新人の営業担当者が商品知識が不充分な場合でもAIエージェントがさりげなく補助してくれる▼「ナッジ」というマーケティング手法がある。「nudge」とは・・・略・・・
(8月28日号)
日本で働く外国人はこの10年間で4倍近くに増えているらしい。労働人口が今後減少していく日本にとって外国人材は重要な存在だが、技能実習生の受け入れ状況などをみると、仕事場の安全配慮が不十分だったり残業代などの割り増し賃金が未払いだったりと法令を違反する事業所が昨年1年間で7千超あったと厚生労働省が先日発表した▼家族を帯同して来日する人も増え、「労働力」としてよりもまず「生活者」として異文化の人たちと接することが大切▼多文化共生社会に向けての人材育成を行なう団体が主催するセミナーを聴講した。講師は、共生には四つあると指摘した。「奴隷的共生」「同化的共生」「対等的共生」「植民的共生」▼記者などは「共生」と聞けば、それは誰もが平等で「対等的」なものだと思い込んでいたが、・・・略・・・
(8月10日号)
今年の猛暑は危険な∞災害級の¥汲ウだと警告されている。戸外だけでなく屋内でも要注意だというからオフィスで仕事をしているときも気をつけたい▼昨年「ひと涼みアワード」のトップランナー賞を受賞したウォーターネットは「熱中症予防声かけプロジェクト」に賛同している。「水分をとる」「部屋を涼しくする」「休息をとる」栄養を取る」など、声を掛け合うゆとりと気遣いをもつことが熱中症から人の命を救うことになり、予防啓発の輪を広げようとしている▼『いのちを守る水分補給〜熱中症・脱水症はこうして防ぐ』の著者で飲水学≠唱える医師の谷口英喜氏は、・・・略・・・
(7月27日号)
この時季になると気象庁による「顕著な大雨に関する情報」の発表が多くなる。河川の氾濫や土砂災害など危険度が急激に高まる。災害に備えるBCP対策を万全にしたいもの▼AKASHIコンタクトセンターの「ソムリエ通信」では、「夏は備えなければならない災害が多いうえに夏特有の二次災害に対しての備えも必要な『防災シーズン』」だと警告している▼日頃から非常食や毛布、簡易トイレ等の備えをしておくのは、家庭だけでなく企業でも重要。ゲリラ豪雨などによる水害対策では、会社が1階にある場合はまず止水グッズを揃えることが必要。防水性に優れたフィルターや仕切り板などを備えておくことで・・・略・・・
(7月10日号)
日本オフィス家具協会とケルンメッセが4月に開催した「第2回オルガテック東京2023」は、出展数も展示面積も昨年の2倍に拡大し来場者も5千名増えた▼昨年は東京ビッグサイトの南展示棟で開かれたが、今年は西展示棟、来年はさらなる増加を見込んで東展示棟で開催するという。今年は出展を申し込んでも会場のスペースがとれず「お断り」した企業も数社あったらしい▼新型コロナウイルスが2類から5類に移行して「オフィス回帰」がすすんだ。三年前は出社できずテレワークがもてはやされ、「オフィスが無くなってしまう」と懸念する声がささやかれたが、・・・略・・・
(6月26日号)
先月、「総合」展示会に出展した。バックオフィスに関わるイベントという捉え方では趣旨が定まっていたが、防災、HR、総務、会計・財務、福利厚生、法務・知財、広報・IR、健康経営など、「多彩」というよりも「雑多」で「総花的」な印象を受けた▼弊社のブースに一人の来場者がやって来て、「請求書が便利に扱えるサービスはどこにあるの?」と尋ねられた。自分が見たいブースがどこにあるのか分からないという▼それではじめて気がついたが、この催し会場には総合案内所が無かった。展示会を主催する事務局に聞くと、・・・略・・・
(6月12日号)
6月10日は「時の記念日」。1920年に「生活改善」という同盟が日常生活を合理的にしようと提唱して制定されたらしい。その後、6月に祭日がないのでこの日を国民の祝日にすべきだとの意見が多く出たが実現していない▼最近、テレビの経済番組やドラマを予め録画して後で早送りして見るようになった▼昨年暮れに新語大賞に選ばれた「タイパ」はタイムパフォーマンスの略でコストパフォーマンスの時間版だという。働き手の不足が深刻化する昨今、一人ひとりが限られた時間のなかで高いパフォーマンスを出すことが求められるようになった▼タイパはデジタルツールの進化に影響を受けているらしい。膨大な情報をできるだけ短時間で効率的に処理するにはどうすればいいのか・・・略・・・
(5月29日号)
このところ話題に多く上がるチャットGPT。G7サミットでも生成AIの適切な利用が議論された。情報の正確性や個人情報、著作権侵害などリスクをはらんでいるが、導入する企業や自治体が増えているらしい▼ビル・ゲイツは「携帯電話やインターネットの発明にも並ぶ革命だ」と述べているが、事務機の歴史を振り返ってみると、ワードプロセッサが登場したときの革命に匹敵する文書作成システムのように思える▼それまでは手書きやガリ版、タイプライターだったのが、・・・略・・・
(5月11日号)
京セラドキュメント社が同社のホームページに開設したバーチャルショールームでは、複合機のサイズや諸機能をパソコンの画面を見るだけで体験できる▼顧客ユーザーが導入を検討する際に実機を見るのが難しい場合でも、用紙カセットの開閉やオプション取り付け時の寸法などを動画で疑似的に確認できる▼事務機販売業者の営業の基本はお客さんのオフィスを訪問することで、かつては重たい機械を持ち運んで新製品に触れてもらう「デモ貸し出し」という営業手法があった。が、今それを実行しているところは・・・略・・・
(4月24日号)
OSGコーポレーションが2月に開催したSDGsイベント(3月27日号に記事)では、小さな地球≠作るワークショップが行なわれた。小さな瓶にメダカと水草と微生物を含んだ土を入れて、参加者は生体循環を体験した▼アクアポニックスという生産システムだそうで、水耕栽培と養殖を掛け合わせた循環農業。魚の排せつ物を微生物が分解し、植物が栄養として吸収、浄化された水が再び水槽へと戻り、生産性と環境配慮が両立する▼サステナブル社会への道のりを説明するプレゼンでは、現在は「無関心」期だと指摘された。世間一般の人々の意識がまだ低く、その次の「関心」期→「準備」期→「実行」期→「維持」期を経て、・・・略・・・
(4月10日号)
コニカミノルタジャパンのトップが長年「事務機」を担当していた大須賀氏から、ヘルスケア担当の一條氏に代わった。先月の社長交代会見では、「貴社はヘルスケア事業に舵を切ったのですか?」という質問があった▼様々な部門をもつ同社は「ワンKM」を2016年の設立当初から提唱しているので体制が変わることはないのだが、事務機の業界紙はその前のコニカミノルタビジネスソリューションズ、さらに統合前のコニカビジネスマシン、ミノルタ事務機販売の頃から取材を続けてきたので、違和感を抱いたのも頷ける▼昨今は働く人の「やりがい」が事務機の業界でも大きなテーマになってきているので、・・・略・・・
(3月27日号)
マスクの着用が個人の判断となって、人が集まるイベントも三年前の状況に戻りつつある。業界の展示会も活気が戻ってきた。先月、大塚商会と日興商会のフェアに行って、コロナ以前の時代とは展示会のあり方が変わったことを知った▼大塚商会の「実践ソリューションフェア」は昨年も開催されたが、昨年の来場者数は少なかった。今年は人数だけが戻ったのではなかった。「とくに目的もなく来る人は激減した」という。事前にオンラインで概要を見てもらい、自社の課題を見つけ、解決しようと問題意識の高い人が来場するようになった▼講演やセミナーも・・・略・・・
(3月13日号)
4月からリコーの社長に就く大山晃取締役が先日の緊急会見で「モットーは、大胆かつ細心」と語ったのを聞いて、日本映画の巨匠、黒澤明監督も同じ言葉を座右の銘にしていたことを思い出した▼「悪魔のように細心に、天使のように大胆に」。数々の名作を生み出す原動力にしていた▼ヴェネツィア国際映画祭で『羅生門』が最高位の金獅子賞を受賞し、日本の映画が初めて海外の人々に賞賛された。このときまで日本人は自国の映画が世界に通用する価値があることを知らなかった。その後、『七人の侍』や『用心棒』など多くの作品が海外の映画人に真似される≠謔、になり、「クロサワ」は日本人で最も有名な名前になる▼世界に影響を与えた、こうした独自性のある作品をどのようにして創出したのか?▼『人間、黒澤明の真実〜その創造の秘密』(都築政昭著)によると、・・・略・・・
(2月27日号)
各社が掲げる最近の経営理念を見ると、「未来」という文言がしばしば登場する。「社員が共通して見据える未来を具体化」「社会の発展と地球の未来に貢献」など、ありたい姿≠描く。不確実な時代といわれる今、将来に明るさを見出したい気持ちも反映されているのかもしれない▼今号掲載の「未来を予測する」の記事では、多くの経営者が情報を分析して事業計画を立てているアンケート回答を掲載した。未来をデータで予測することが可能だと思う人は7割以上いる▼『未来は予測するものではなく創造するものである』の著者・樋口恭介氏は・・・略・・・
(2月13日号)
今年いただいた年頭所感では、社会課題への貢献、また、この時代を生き抜く「力」の必要性を訴えたメッセージが印象に残った▼先月、集合住宅の全戸で突然、断水が起った。受水槽を制御している部品が老朽化したようだが管理会社に電話したら深夜でもすぐに復旧してくれた。たった数時間の辛抱だったが不便さを感じずにはいられなかった▼インフラが長期間途絶え、命も奪われるウクライナの人々のことを思った。侵攻が続いて一年にもなる。その現状を映像等で詳細に世界中に伝える進んだ技術があるのに、侵攻自体を止めさせる術はないものなのか。平穏な日常を人々に提供することが真の社会貢献ではないのかと思う▼長年ロシア語を学んでいる友人に電話した。以前教わっていた日本人の先生は昔、・・・略・・・
(1月27日号)
コニカミノルタジャパンが昨秋開催したカンファレンスで感情マネジメント≠説明するセミナーを視聴した。仕事をするとき、昔は「感情を出さないように取り組む」ことが大事だとする常識≠フような暗黙のルールがあったように思うが、これからはこのマネジメントによって成果をあげることができるという▼弊紙でも働き甲斐を高める記事が増えている。「ウェルビーイング」「働く歓び」「職場に笑顔を」「従業員満足度」「ストレスチェック」…▼聴講して驚いたのは、人間には2185個もの感情があるとのこと。記者などは喜怒哀楽の四つだけだと思っていた。全てを書ききれないが、・・・略・・・
(1月9日号)
「寄り添う」という言葉が頻繁に言われるようになったのはここ数年のことのように思うが、記者が初めてこの語を知ったのは十数年前。外国籍住民の日本語学習を支援する人らの会合でSヒサコさんという先輩の支援者が口にした▼ある日、日本人支援者達だけで催した食事会に誰とも面識のない外国人が会場に紛れ込んだ。そんな「場違いで招かれざる」人にヒサコさんは優しく話しかけ、その後もメールや電話でコミュニケーションを続けた。我々支援者らにも日本語の教え方を丁寧に教えてくれ、分け隔てなく人に寄り添う方だった▼七年前の夏、ヒサコさん本人から死亡を伝える便りが届いた。文面は・・・略・・・
2023年↑
2022年↓
(12月26日号)
コロナとインフルエンザの同時流行に注意してこの冬を過ごしたい。コロナは3年経過したことで感染防止対策は、マスク着用・3密の回避・手洗い・換気など、基本的にすべきことは生活習慣として定着したのではないかと思う▼「感染予防の次は衛生への備えだ」と警告している人の話しを聞いた。とくに食品の業界ではコロナ以前から重視するのが衛生管理▼この夏、某中華料理店の厨房で大量のゴキブリやナメクジが発生して不衛生な管理実態が報じられて以降、外食産業やスーパーマーケットからオゾン発生器への問い合わせが増えているという・・・略・・・
(12月12日号)
「プラスティック」。1967年の米国映画「卒業」で、大学を卒業したものの就職先が決まっていない主人公に伯父がこの一語で助言する▼この頃はプラスティックを製造する会社は将来性があると期待されていた。紙や木、鉄に変わる新素材としてもてはやされたが、半世紀を経た今、深刻なゴミ問題を起こし、地球を破滅へと導く存在に▼前々号で報じた国際紙パルプ商事の梱包ソリューションは貨物の保護に用いられる緩衝材を気泡性のプラスティックから紙製に切り替える取り組みで、EC業界だけでなく事務機器の運搬にも提案していきたいと・・・略・・・
(11月28日号)
十年ほど前、TBSテレビの「がっちりマンデー」の「業界新聞記者に聞く、最近の新商品」というコーナーで弊紙を取り上げてもらったことがあるが、その後この番組はいろんな企画を放っている▼二か月前に放送された「儲かるスゴい工場のヒミツ!」を見て、目を疑うような人事管理の方法でビジネスサクセスを遂げている食品加工工場があることを知った▼そこで働くパートタイマーの人たちは自分の好きな日に出社したらいいようで、「無断欠勤OK」。欠席するとき連絡する必要がない。勤務する人はそれによってストレスが無くなり、辞めるケースがなくなったらしい▼また、この会社のルールは「私語厳禁」。・・・略・・・
(11月14日号)
円安の要因は日本の競争力の低下だと言う声が目立つようになった。生産性を上げるスキルの向上が急務であると。DX人材を育成するための研修の拡充も求められている▼高度なスキルを身につければ仕事の成果は上がるはず。だが、楠木建氏・山口周氏共著の『仕事ができるとはどういうことか』を読むと、「仕事で成果を出せる人は希少。スキル以前にセンスがないから。スキルを伝授する本は無数にあるが、センスの問題に正面から向き合ったものはない」と、感性の重要性を訴えている・・・略・・・
(10月24日号)
大阪府の福祉部がIT各社と事業連携協定を締結したことを前号で報じた。高齢者や子どもなど府民の生活の質(QOL)の向上を目指す「スマート福祉」に取り組むというもの▼この実現に向けて、府庁で働く職員の業務を改善するため各社はオンライン会議の推進やテレワーク環境のネットワークセキュリティ対策などICTツールの導入・活用の支援を行なう▼ただ、記者発表会では業務改善サービスの話しばかりで、QOLをどのように向上させるのかについて福祉部から説明がなかったという▼仕事の負担が減って時間ができてから考える予定なのだろうか?▼高齢者や子どもは認知機能が充分に備わっていないとみなされて支援の対象となっているが、・・・略・・・
(10月10日号)
この春までリコージャパンの社長を務めた坂主智弘さんが農業流通の道に転身したと聞いた。日経新聞にも記事が載っていた▼「大学4年生の気持ちでもう一度就活した。63歳ならまだやれる」。リコージャパンに勤務していたときに全国各地の地方創生に取り組んだ関係で印刷の顧客でもあったスーパーマーケット協会に関わった▼「年を取るにつれ一日が短くなったが、今は長い。寿命が延びている感じがする」▼坂主さんと歳が近い筆者は「一日が短い」は全く同感。年をとるとなぜ月日の経つのが速く感じられるのか?今年もあと三か月を切った▼19世紀のフランスの哲学者、ポール・ジャネが考案した「ジャネーの法則」によると、・・・略・・・
(9月26日号)
市役所での外国籍住民との対話を支援するサービスとしてコニカミノルタはAIで機械通訳に行政用語を登録したタブレット型の多言語通訳サービスを二年前から提供していて30か国の言語に及ぶそうだが、この春、「やさしい日本語」を加えた▼「やさしい日本語」とは、難しい言葉を小学校低学年程度の表現に言い換えたもので、災害時の情報伝達手段として用いられている▼ただ、日本語を学ぶ目的で来日したのではない人たちに薦めることになれば、郷に入りては郷に従え≠ナ、共生社会に相応しくないのでは?と思っていたらその数日後、このサービスにウクライナ語が追加された。外国語を長年勉強してもものにならなかった身としても安堵▼「やさしい日本語」の「やさしい」は、「易しい」のか「優しい」のか?▼神戸で中国残留帰国者の日本語学習を支援する協会から会報をもらった。・・・略・・・
(9月12日号)
先々月のリコージャパンのメディア向け説明会で、春に同社のトップに就いた木村和広社長は、課題発掘@ヘの重要性を強調した▼「お客様から要望されたことに対して、提供する力はこれまで持ち合わせていたが、お客様それぞれの課題を発掘する力を上げることが今後の課題。これがモノ売りとコト売りの違いだ」▼「事務機」の商売は「プッシュ(push)」のビジネスだと聞いたことがある。これに対して家電や日用品の販売は「プル(pull)」のビジネスで、店頭で商品を「指名買い」されることを目指す▼「プッシュ」という言葉から、昔は「押し売り」だと批判する声もあったようだ▼家電業界は商品を売ったら終わり。一方、・・・略・・・
(8月25日号)
前号の暑中名刺広告の欄では代表者の顔写真を載せている会社があったので驚かれた読者もいたのではないかと思う▼先月号まで5回の連載記事が続いた岡山のワークスマイルラボ。版下をもらった時はそれまで前例がなかったのでちょっとためらったが、商談の際に相手に差し出す名刺に顔写真を載っているのは珍しいことではないし、もともと弊紙の名刺広告は縦書き・横書き混在、メッセージ文言の位置など統一性がなく自由に入稿してもらってきたので特に異例とはいえないが、新しいことに取り組み続ける「ワクスマ」らしさを感じた▼この写真入りデザインを考案したのは同社の広報担当の瀬尾さん。・・・略・・・
(8月8日号)
中国政府が複合機の設計や製造の全工程を中国国内で行なうよう定める規制案が発信された。まだ草案だが、今後事務機業界が大きく影響を受けるのか懸念される▼草案には「中国政府などが購入するオフィス設備について『中国国内で設計・開発・生産を完成すべきだ』」と記され、対象は「主に印刷・スキャン・ファクス・コピーの一つ以上の機能をもつ機器=複合機など」だという▼JBMIAや日本画像学会はまだ見解を示していないが(8月1日時点)、日本政府関係省庁と連携し今後の動向を注視して対応していくという▼業界の方々に意見をきいた。「中国人技術者の育成には力を入れているし、・・・略・・・
(7月25日号)
安倍元首相が凶弾に倒れた日の夜、海外の日本語学校で働く友人からメールが届いた。彼が十数年前にJICA(国際協力機構)の任務で東南アジアの人々の日本語支援を進めるプロジェクトにフィリピンで取り組んでいたときに安倍首相が訪れ、握手を交わした思い出を綴ってくれた▼自分が不審者ではない(プロジェクトの責任者)とわかっていても、そのときの警護は厳重だったそうで、それに比べてこのたびの事件ではセキュリティが甘すぎると嘆いていた▼46年前の米国映画『タクシードライバー』の一場面を思い出した。主人公が ・・・略・・・
(7月11日号)
今回の参院選で各党は賃金アップを政策提言に掲げていたが、物価高が激しい今、賃上げは必ず実現してもらいたい。報酬は働く人の満足感に大きく関わるが、精神的な働き甲斐も重要▼「働くに喜びを」「幸せプロバイダーを目指す」「働くに笑顔を」…。ウェルビーイングという言葉がこの業界で言われるようになったのは一年くらい前からか。「働き方改革」の次のステージとして企業経営にとって重視されるようになったと思われる▼SDGsの三つ目の目標にも記されているウェルビーイングとは、その人にとって
・・・略・・・
(6月27日号)
新たな時代をむかえて当惑する人は少なくない。先月の東芝テック中核ビジネスパートナー会でリテール会の恒成会長はこう語った。「キャッシュレスやペーパーレスが進んで、もう戻ることはないと思う。時代が変わってもお客様との対面での営業がなくなることはないと信じていたが、本当にそうなのかなとも思うようになった。皆様にDXについて教えていただきたい」▼複合機販売の会の石田会長は、「このビジネスは他の業界の人たちから羨ましがられることがある。固定客をもち、定期的に請求でき、訪問を通して人的つながりが強い業界だと。長年積み上げてきた資産が負債にならないようにしたい」▼顧客ユーザーと長く付き合うには、・・・(略)・・・
(6月13日号)
「オフィス家具」という語に違和感を覚える。「家具」は、箪笥やテーブルなど家の中に据え置かれる調度品。「オフィス家具=vと呼ばれる、職場に配置された事務机やイスは、家財道具に従属した商品のような印象をもってしまう▼日本で初めてオフィス家具のイベント「第1回オルガテック東京」が4月にケルン見本市会社とJOIFA(日本オフィス家具協会)の主催で開催された。ケルン見本市会社のヴァイスプレジデント、マティアス・ポールマン氏に、ドイツ語でオフィス家具は何と言うのか聞いてみた・・・(略)・・・
(5月30日号)
発表会や説明会と違って懇談会は登壇者の本心を聞ける機会かもしれない。3月31日に開かれたコニカミノルタの業界紙記者との懇談会でこんな質問を投げかけた▼「2年前の1月に発表された、売上全体に占めるDX事業の割合は、当時は14%で、数年後は22%との見通しでしたが想定通りにすすんでいますか?」▼これに対して新リーダーの大幸社長は「その後はコロナの影響で思うように活動できずリモートワークの提供等もあったが想定通りには伸びていない」と▼2年前のこのときはマスクもアクリル板のパーティションもなく会見が行なわれていたが、そのすぐあと、緊急事態宣言が発令され、世の中は変わった▼大幸社長はさらに売上至上主義を否定するコメントを発した・・・(略)・・・
(5月12日号)
「ワークスマイルラボ」と聞いてすぐに分かる読者は少ないかもしれないが、岡山の「石井事務機センター」ならこの業界で昔から知られた老舗。4年ほど前に社名を変更し、業容も変わっていたことを最近知った▼1990年代頃まではOA機器やオフィス家具の販売を拡大したが、2000年頃から複合機の保守メンテナンス料下落や事務用品の通販台頭、同業他社との価格競争激化で取引先が減少し業績が低迷。社員数も少なくなり、2009年に倒産寸前に陥った▼現在四代目の社長を務める石井聖博氏は、・・・(略)・・・
(4月25日号)
「課題解決」という語が頻繁に叫ばれている。最近はビジネスの領域にとどまらず、「『社会』課題の解決を目指す」と視野が広がり、なかには「『真』の課題解決を」という言い方まで聞かれるようになった▼今の世の中、解決すべき課題は沢山ある。「真の」といえる最優先課題は何なのか?日本にとって大きな課題として人口減少がある。「人口が減っていく国に未来はない」と言い切る人は少なくない。とくに労働人口は、現在のペースで少子高齢化が進むと、40年後に4割減少するとの予測がある▼高齢になっても健康と体力を維持して若い頃と同様に働き続けることができれば、・・・(略)・・・
(4月11日号)
「ハイブリッド戦争」は最近の軍事戦略かと思っていたが昔からあるらしい。映像がなかった時代はビラをまいたりラジオで戦況を伝え国民の士気を高めたりしたが、このたびのロシアによるウクライナ侵攻ではIT技術が情報戦をさらに激化させている▼プーチン大統領は「SNSは武器だ」として偽の情報やフェイクニュースを発信して侵攻の正当性を訴えた。ウクライナのゼレンスキー大統領が降伏を呼びかけるニセ動画はAI(人工知能)技術で作られたという▼2月24日の侵攻は不意を突いた奇襲だと思っていたが、米国はロシア軍の動向を察知していたようで、・・・(略)・・・
(3月日28号)
先日読者から「複合機チャージ料金システムの考古学」と題した投稿が寄せられた。複写機・複合機が絶好調だった頃を振り返り、今後この業界の主食≠ニして存続しうるかを検証している▼かつて黒船≠ニ呼ばれたプリンターの台頭で、コピー機の出力ボリュームを超える『Xデー』がまことしやかに囁かれた。それに対抗した自衛策▼「オフィス業務をサポートするマシンを安心して利用してもらうために生涯にわたって発生するコストを算出し、それを1枚あたりの使用単価に置き換えた。単価の集合体はマシンの技術サポート料金だ」▼「21世紀になって導入された『トナー込み価格』は・・・(略)・・・
(3月14日号)
環境負荷や貧困、飢餓、不平等、人権など、暮らしやすい地球の実現に向けた持続可能な開発のための国際的な目標SDGs。そういう時代だというのにロシアのウクライナ侵攻はこれらの取り組みを踏みにじるものでしかない。人命を奪い、設備や建物を破壊する惨事に目を覆う▼各国の経済制裁はウクライナ、ロシアに進出している企業の活動に影響を及ぼすだけでなく、
・・・(略)・・・
(2月28日号)
JBMIAが取り組む事務機のセキュリティプログラム「BMSec」は、SOHOからオフィス向けの複合機やプリンター、スキャナーに幅広く対応し、ユーザーが安心して使用できる環境づくりを展開している▼複合機やプリンターが実際に脅威にさらされたらどんなトラブルが起こるのだろうか?例えば、夜中にプリンターが勝手に動き出し、身代金を要求する脅迫文が書かれた紙が大量に印刷され続ける被害が最近あった▼業界を越えて衝撃的な事件≠ニして記憶されるのは6年前の1月6日の朝日新聞の1面トップ記事。・・・(略)・・・
(2月14日号)
昨年文化庁が発表した「国語に関する世論調査」によると、コロナ感染によって広まった言葉に対する意識を調査していた▼『不要不急』『コロナ禍』『3密』『ステイホーム』『濃厚接触』『ソーシャルディスタンス』『クラスター』などについて、「この言葉をそのまま使うのがいい」と答えた人は5割から7割弱で、連日報じられているのに皆が受け入れているわけではないことが明らかになった▼「この言葉を使うなら説明をつけたほうがいい」と回答した人は2割から3割強に及び、「ほかの言い方にしたほうがいい」と思っている人も僅かだがいた▼皆がなんとなく知っていても充分理解せずに使っている言葉として、『DX』はどうなのか?・・・(略)・・・
(1月24日号)
トロイア遺跡を発掘し18カ国語を話したという考古学者シュリーマンは外国語を独習するとき傍らに誰かにいてもらうよう頼んだらしい▼学生時代に成績優秀だった人が「自分の目の前に誰かいると仮定して、学んだことをその人に教え伝えるように反復すれば理解力と記憶力が格段に上がった」と秘策≠語っていた▼プラスが、作業性を高め、居心地が良く、互いに刺激し合え∞仲間の気配を感じることができる<Iフィス空間創りに工夫を凝らしている・・・(略)・・・
(1月10日号)
どんなビジネスにおいても、社内コミュニケーションでも、また、生活面でも、良好に進めるための原動力になるのは「共感」だと思う。トヨタ自動車も脱炭素の取り組みで「カーボンニュートラルは共感で動く」と宣言しているし、古今東西だれも疑う余地がない価値観だと思われる。が、それに異論を唱える本に出会った・・・(略)・・・
2022年↑
2021年↓
(12月24日号)
京セラの事業戦略説明会で谷本社長は、今後の成長拡大には社員のマインドが大切で、昔ながらの精神論では人の力を引き出せないとコメントした。「私の世代は怒られて成長したが、今の若い人は叱られたらシュンとなるので褒めてあげないと」▼職場でのコミュニケーションの良好化や従業員のストレス対策としてアンガーマネジメントが注目されるようになった。怒りの感情をコントロールする研修会が盛んに開催され・・・(略)
(12月13日号)
半導体など部品の不足をはじめ原油価格の高騰など素材やエネルギーの心配事は一過性のものなのだろうか?こうした状況についてある識者は「世界は今、クリーンエネルギーへの移行期における最初の大きな危機に直面している。この危機は今後も繰り返される」と警告している▼さらに「2050年までに世界の電力消費量は60%増加する。デジタル化が進み、安定した電力の必要性はこれまで以上に高まる」と▼これを聞いて、パソコンの電源を入れっぱなしで一日中使い続けていてもいいものなのか不安に思っていたら電話がかかってきた。・・・(略)
(11月22日号)
ノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎さんが45年前にアメリカ国籍を取得した理由は米国のほうが研究に没頭できたかたらだという。受賞会見で「私は協調性がないので仕事する場を米国にした」と語っていた▼組織が意思決定を行なうときに少数意見をもつ者に対して暗黙のうちに多数意見に合わせるように誘導する「同調圧力」という言葉を最近よく聞く。日本は協調性を重んじる社会?▼ジャーナリストの玉川徹氏は「日本では協調と同調を混同している」と指摘し・・・(略)
(11月8日号)
先月、緊急事態宣言が解除され、それまでずっと家で仕事をしていた人が久しぶりに職場に行ったら、「ドキドキして、アウェーを感じた」と言っていた。アウェー≠ニは、スポーツの試合でよく用いられる語で、敵地のこと。居心地がよくなく、場違いな雰囲気だったと▼プラスがビジネスパーソンにアンケートした調査では、コロナ収束後もオフィスワークとリモートワークを併用する働き方(ハイブリッドワーク)を続けたいと希望する回答が8割にのぼった▼昨年来、「リモートワーク」や「テレワーク」「在宅勤務」「サテライトオフィス」という言葉が頻繁に聞かれるようになったが、以前に流行った「SOHO」はあまり見聞きしない・・・(略)
(10月25日号)
リコーとJAXA(宇宙航空研究開発機構)が宇宙空間で撮影した360度全天球映像を公開したのは2年前。先月、中秋の名月を見たとき、今の地球は綺麗に見えるか不安になった▼今年は民間人が宇宙に行くニュースが報じられ、宇宙旅行が商業化し、空の彼方が身近になった感がある▼一方で、UFOを捉えたとみられる不思議な映像が米国で新たに流出し、・・・(略)
(10月11日号)
新内閣が発足し、岸田総裁は就任会見で「新しい日本型の資本主義を構築する」と何度も語った。日本の資本主義は明治の初め頃からなので150年以上になるが、新たな経済政策は国民に共感をもたらすだろうか▼新1万円札に描かれる渋沢栄一は近代日本資本主義の父≠ニ称されるが、「資本主義」という言葉は一度も口にしたことがないらしい。語っていたのは「合本主義」▼これは、公益を追求するために経済活動をするという考え方で、・・・(略)
(9月27日号)
コニカミノルタジャパンが中小の小売店の在庫や注文を予測できるサービスを開始し、人手不足の解消や生産性の向上が期待されている▼データを蓄積して予測を立てるサービスとしては気象庁などによる天気予報があるが、精度はますます上がっているようで、今年は線状降水帯という言葉が幾度となく聞かれたが、長雨や豪雨が頻発する昨今、天候の予測は命を守るサービスといえる▼NHKで放送されている朝ドラの主人公は気象予報士で人の役に立ちたいと日々努力する姿が描かれているが、職場の先輩から苦渋の経験談を聞かされる。・・・(略)
(9月13日号)
みずほ銀行がシステム障害を何度も起こし、その原因がはっきりしないという。次元が違うが、弊社も春に事務所を移転したときパソコンに不具合が起り、その原因は不明のまま▼近所の通信屋さんにパソコンを接続してもらったら翌日からネット環境の調子が悪くなった。作業中に突然真っ青な画面が表れ再起動する「ブルースクリーン」が発生したり、ウィンドウズがバージョンアップしなくなったり▼問い合わせたら、「パソコンのメーカーに聞いてください」「マイクロソフトに電話してくだい」という返事だけ▼事務機屋さんに電話したら、・・・(略)
(8月23日号)
7月23日に催された東京オリンピックの開会式は数々のパフォーマンスが繰り広げられたが、開会前にサイバーテロを心配していた人がいた▼オリンピックはハッカーたちが能力を競い合う祭典だそうで、発電所や病院、金融機関など様々な社会インフラが狙われ、「開会式の日にスタジアム(国立競技場)で停電が起こる可能性は50%」と予想していた▼サイバーテロの標的にならなくても、日本の各地では道路や橋、水道、建築物などが更新の時期を迎え、老朽化が問題になっている・・・(略)
(8月9日号)
ノークリサーチ社による「DXやコロナ禍で求められる中堅・中小企業のIT活用」調査(前号に記事)では、業務効率を改善するために取り組んでいる企業が4割弱、売上利益を向上させるために取り組む企業が3割弱、コスト削減を目的とする企業が約15%という状況がうかがえた▼一方、「これから取り組む予定」と回答した企業は1割ほどで、「実行できていない」「取り組む必要がない」「今は判断できない」も1割程度だった▼コロナ禍によってデジタル化をすすめる意識は高まっているといえるが、「導入の目的や効果を明確化できているところはまだ少ない」という▼弊社にも様々なIT企業からDXを勧めるメールが連日届くが、・・・(略)
(7月26日号)
キヤノンマーケティングジャパンが春に策定した中長期の経営構想の根本には「共生」の理念があるという。事業活動を通じて社会課題を解決することが、社会と同社双方の持続的な発展につながるという考え方▼今ではよく見聞きする「共生」という言葉だが、いつ頃から言われるようになったのか? 筆者が1997年に京都で在住外国籍住民のための日本語ボランティア教室を立ち上げた頃はまだ世の中に定着していなかった。教室の活動を取材に来た京都新聞の記者が記事の見出しの「多文化共生」の文字を打ち間違えていた・・・(略)
(7月12日号)
「夏季オリンピック報道の世界 Photo by アフロスポーツ」(前号に記事)のリリースに掲載されていた、撮影者の独自の視点でとらえた写真を見て、1965年に公開されたドキュメンタリー映画『東京オリンピック』のいくつかの場面を思い出した▼開催が迫る今年の東京五輪。新型コロナウイルス感染のリスクとどう向き合えばいいのか、様々な意見や議論が飛び交っているが、前回の東京オリンピックのときも、映画監督・市川崑氏が総監督を務めた記録映画『東京オリンピック』の評価について賛否両論が巻き起こったといわれている▼アスリートが競技に挑む時の緊張した面持ち、また、彼らを見守る観客、・・・(略)
(6月28日号)
先日、入院中の叔母にかわって後期高齢者医療保険と介護保険の手続きをしに市役所へ行ったら、それぞれの課は同じ階のすぐそばにあるのに書類も手続きの仕方も異なるので理由を聞くと「組織が縦割りなので…」と職員が溜息をつきながら返事していた▼コニカミノルタが自治体の業務を標準化・効率化するプラットフォームを構築するサービスを来月から開始する。全国の自治体の業務手順書が管理・共有され、法令情報や簿冊やマニュアルなどをリンクし、職場内に限らずどこからでも必要情報にアクセスして効率的に業務が行なえる。・・・・・・(略)
(6月14日号)
テニスの大坂なおみ選手が記者会見を拒否し、他の選手や多くの人々からメンタルヘルスの観点で共感の声があがった。元選手の一人が「記者会見で不快な質問や誘導尋問を受けたり、映像や言葉を編集されて意図しない文脈で伝えられたりしたことがあったが、プロとして報酬をもらっているので義務と権利だと思って割り切っていた」と語っていた▼こういうのをトレードオフ(一得一失)というのだろうか? この業界では製品の製造・使用と二酸化炭素排出量削減がトレードオフの関係にあると言われることが多い▼『人新世の「資本論」』の著者・斎藤幸平氏は・・・・・・(略)
(5月24日号)
3月に事務所を移転したとき小紙の約五十年分の新聞を手狭な移転先にもっていけないので破棄しようかとも思ったが、近くにある大阪府立中之島図書館に電話したら、引き取って保存してくれると快諾をもらった▼創刊当初の紙面は黄ばんで、めくると破れそうな状態。当時は電子計算機の記事が多かった。数年前にNHKから電卓の歴史番組の取材を受け、高性能カメラでこの古い紙面が撮影された。テレビで放送を見たら実物よりも鮮明に映っていて驚いた▼中之島図書館に弊紙が保存されるのは短期間で、・・・・・・(略)
(5月10日号)
前号では各社の入社式の様子をお伝えしたが、コロナ禍で今年も感染対策に配慮しながら社長が個別に向き合う「個別入社式」やライブ映像配信の形をとるなどの対応がみられた。ただ、企業のトップから歓迎の言葉をうけながら、「入社」はできても、「出社」ができない新入社員は今年も少なくないのでは▼新社会人がどんなタイプなのか時代によって色々言われてきたが、去年や今年の新入社員は「仲間か゛恋しいソロキャンフ゜タイフ゜」なのだそうだ。不安て゛孤独な就職活動を行ない、初めてた゛らけのソロキャンフ゜のようにまこ゛つくことも多いのだとか▼それよりも、「歴史上初めて、上司よりもスキルが高い人材」という高い評価があるらしい▼スマホやパソコンは子どもの頃からできて当たり前の世代なので、ITリテラシーが高く、年配の上司よりもすぐに習熟する▼そのためか、ITが苦手な上司に対して不快な態度をとる「テクハラ」といういじめ≠ェ起こっているケースがあるという・・・(略)
(4月26日号)
ソフィアという名のAIロボットが芸術作品を創ってオークションで7千5百万円で落札されたらしい。ソフィアはさらに、創作についての想いも語ったという▼2か月前、公益社団法人日本複製権センター(JRRC)が「AIと著作権」というテーマでセミナーやディスカッションを開いた。開会時に土肥理事長が挨拶のなかでこう述べた。「AIは思想や感情など人間の本来的な感性を持ち合わせていないと言われてきたが、やがては持つかもしれない」▼記者も「人工知能なんてまだまだ先の話しだろう」と思っていたが、いつの間にかすぐそばに・・・(略)
(3月15日号)
先月の2月6日、リコーが創立記念日のイベントをオンラインで開催した。創立は1936年というから85周年を迎えたことになる。リコーグループの社員は創業者である市村清氏が提唱した三愛精神を思い起こして原点に立ち返り、コロナ禍の国難にどう立ち向かうかなど考えたという▼チャールズ・チャップリンが機械文明を題材に制作した映画作品『モダン・タイムス』が公開されたのは1936年2月5日。主人公がベルトコンベアの流れ作業で歯車に巻き込まれたり自動給食機の実験台にされるなど、機械化・大量生産が本格化した時代。世界恐慌で失業者があふれた状況も描いている▼市村氏は感光紙をはじめ石油事業やデパート、大衆カメラブームを巻き起こしたりリース会社の先駆けとなる会社をおこすなど多角的に活躍。「常識の裏をかくアイディア社長」と呼ばれた▼チャップリンも、俳優だけでなく監督・脚本・作曲などを手掛け、社会に訴える映画を作り続けた。製作も行なう企業経営者でもあった。どの作品にも「働く」「食べる」「愛す」「夢をみる」の四つのシーンがある▼こうして両者の業績や行動の軌跡を調べると、「頭は革新、心は保守」を持ち合わせた稀有なビジネス人であり生活者だったのではないかと思う▼チャップリンが他界したのは1977年。リコーが「OA」を提唱した年だった。
(3月8日号)
いまNHKで放送されている朝の連続ドラマに登場する主人公の父親は「朝ドラ史上、最低の父」らしい。娘に非道ともとれる行為を繰り返す。だが、演者は「この父親は悪気はなく、ピュアで、ノーソリューションな人物なんです」とインタビューで言い訳≠オていた▼悪気があるのとないのとではどちらが「たちが悪い」のだろうか?『問題発見力を鍛える』の著者・細谷功氏は、「悪気がないということは裏を返せば、その発言について『何が悪いのか理解していない』ので、反省をせずに延々とそういう発想を繰りかえすことになり、長期的に問題を放置することになる」と忠告している▼「VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の時代は、解く力よりも問題を見つける力が大事。何が起こるか分からない時代。常識も変わり、これまで取り引きしていた顧客も変わる。これからの思考法は180度変わる」▼顧客や上司、親会社から与えられた問題を速く正確に説くことが社会でも教育でも求められてきたが、もうそういう時代ではないらしい▼「問題解決と問題発見のプロセスは全く逆の思考回路」だとも。デジタル化が進んでビジネスのプロセスが変わりつつある。AIやロボットに任せて自分は何も考えずに仕事がはかどってよかったと安心してしまうのはソリューション活動ではないことになる。
(2月22日号)
「女性は会議の時間が長い」との発言で内外に波紋を広げ、日本の遅れ≠露呈したとされる東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長。次元は違うが首相時代にIT革命のことを「イット革命」と読み違えていたのを思い出した。言葉を正確かつ適切に伝えるにはどうしたらいいか支援するのはドキュメント業界の仕事ではないかと思った▼先日、ハローワークで介護福祉の相談員をしている人に話しを聞く機会があった。求人の全件数の四割以上も占め、人手不足の業種だとは聞いていたが想像を超えた▼施設を利用する要介護者は女性が多いという。例えば夫婦で夫が要介護になったとき妻が家で看るケースが多いが、その逆は少ない▼介護の仕事の基本は排泄や入浴のケア。介護する人が男性だと女性の利用者は嫌がり、女性に世話をしてもらいたいと望む傾向がある▼「つまり介護の現場は女性が求められ、今の日本社会では介護の仕事は女性に向いているということなんです」「せっかく資格をとって就職しても現場についたらすぐ辞めてしまう人は男性が多い」とも▼こうした日本の常識≠ヘこの先変わるのだろうか?「ただ、利用者さんから信頼される介護者は男とか女とか外国人とか関係ない。人柄です」▼言葉が通じにくい現場では非言語コミュニケーションが重要かもしれない。
(2月8日号)
昨年創業100周年を迎えたアピックスの河村社長は本紙インタビュー(1月4日号)で、内閣府が提唱する『Society5・0』を自社の歴史に照らし合わせてこう説明した▼「創業から1995年頃までは大量生産の時代で、当社が青焼きや複写加工でプロダクトアウトを行なっていた『Society3・0=工業社会』の時代。その後2019年まではネットワークで繋がり小ロット多品種を提供する『Society4・0=情報社会』。そして『Society5・0』は、サイバー空間と現実空間を高度に融合させたシステムによって経済発展と社会課題の解決を両立させる人間中心の社会」▼IoTやビッグデータ、AI、ロボットが支える『5・0』は「創造社会≠フ時代になる」と社員に伝えているという▼ちなみに『1・0』は狩猟社会、『2・0』は農耕社会というから、工業社会や情報社会はアッという間の出来事だったといえる。この100年が過去のどの世紀よりもはるかに変化が激しい時代なのだと思い知らされる。アピックスが今後力を入れるのは、顧客企業それぞれの価値を引き出すBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービス。「お客様に総合的に必要とされる仕事をしなければ」とこの領域へ進んだ▼「事務機」や「OA」が過去のものであることも思い知らされた。
(1月25日号)
本紙恒例の全国ディーラーアンケートは今回で35回目(1月4日号)となるが、猛威を振るい続ける新型コロナウイルス感染拡大の影響が色濃く反映された▼昨年の業績を尋ねた質問には、「減収」と答えた販社が63%、「増収」は16%と、過去10年間をみても最悪の数字となった▼コロナ禍が経営に影響を与えて「いる」と回答したのは82%にのぼった。「テレワーク対応などへの出費増」「人員削減」「事業縮小」「顧客が離れた」「テレワークによる消耗品減少」「営業がやりづらい」「スピードの遅れ」「顧客の購買力が落ちた」「訪問営業の自粛によるモチベーション低下」などの声があがった▼将来への不安が募るのも懸念される。「成熟市場から衰退市場へ」「ペーパーレスが加速」「オフィスオートメーションからワークオートメーションの時代になり、人の役割が重要になるが、その人の役割に対して人がついていけるのか不安を覚える」「いま生き残れているのが不思議」「OA業界はなくなる」「将来のことは考えないようにしている」▼一方で、「自社の強みを再認識できた」という記述もあった。それまで水面下にあったものがコロナで浮き彫りになるケースは課題である場合が多いようだが、改善のチャンスも与えてくれる。「将来は会社ごとに違う」▼こんな力強い回答もあった。「今こそ事務機ディーラーの出番だ」。
(1月18日号)
業界の方々からの今年の年頭所感(小紙1月4日号掲載分)を拝読し、いま私たちが時代の大きな節目にいることを再認識する。日本複製権センターの瀬尾副理事長は「この変化は本当の意味での21世紀の始まり」と指摘▼ジャーナリストの田原総一朗氏が「実質的な20世紀は1914年(第一次世界大戦)から1991年(ソビエト連邦崩壊)だった」と語っていたのを思い出したが、実際の年号と時代の区分とは異なるようで、2021年にもなってから21世紀が始まるとは、いかに私たちのビジネスが20世紀の慣習を引きずっていたか思わざるをえない▼戦争を体験した日本人の多くの人たちにとって1945年は大転換だったにちがいない。二十歳で終戦を迎えた作家・三島由紀夫氏は1965年に「自分の人生の展開を考える一つのメドになっている」と述べた▼そして、「戦後の20年は一見太平無事な時代が続いているようだが、これは日本の工業化のおかげで、精神的には何ら知的再建に値するものではない」と▼「死が近くにある(戦争時)と思っていたときのほうが心理状態は今よりも幸福だった」と言い残して5年後に衝撃的な自決≠遂げる▼コロナ禍で自死を選んだ人は少なくない。働き盛りのはずなのに自分の時代を終結しようと考える心の声への傾聴こそ社会課題解決だと思う。
(1月4日号)
毎年暮れに友人5〜6人で会食する忘年会を今回はどうしようか、メールを交わしているといろんな意見が出た。「オンラインでやろう」「リアルでないと気分がでない」「Zoomのホストをやったことがない」など▼ところが、最初は「オンライン派」だった者が議論が進むといつの間にか「リアル派」に転じたり、その逆の者もいた。状況への対応の仕方がコロコロ変わるやりとりを見ていて「今年もコロナ禍で優柔不断になるのかな?」と思うと同時に、「メンバーらは皆60歳になるのに右往左往していてもいいのか、みじめな気持ちにも▼『還暦からの底力』の著者、出口治明氏は「人間はいい加減で、『西遊記』に登場する猪八戒(ちょはっかい)のような存在。自分勝手でハチャメチャ。それが人間の本性だ」と言う▼「60歳を超えたのに自分は何事も成してないと真面目に悩む人を見かけることがあるが、いちいち気に病むことはない。人生100年の折り返し地点と考えれば、もっと楽しくいろいろなことにチャレンジできる」▼とはいえ、これまで仕事が人生と働き続けてきたつもりなのに会社の第一線から外されてしまい、すっきりできない気分▼「仕事が生きがい≠ニいう考え方は自分を失う。楽しく過ごすことが一番大切。逆説的だが、こうした見極めがつくと、思い切って仕事ができるようになる」。
2021年↑
2020年↓
(12月28日号)
予備校に通っていたときのカリスマ講師が後に著わした本が書棚にあったので手にとった。書名は『答えが見つかるまで考え抜く技術』。20年近く前に書かれた本だが、このコロナ禍で考えることが増えたからか、タイトルに目がいった▼冒頭には「考えることは誰にだってできるが、答えが見つかるまで考え抜くことができる人はそれほど多くない」とあり、自分は「考えている」のではなく単に「思っている」だけだと気づかされた▼「たいていの人は途中でうやむやにして放棄してしまう。『考える』と『考え抜く』の溝を埋めるのはたいへんなのである」「どんなに頭を使っても考え抜いていることにはならない。考え抜くとは、自分の全存在を賭けて考え続けることなのだ」▼そのためにはどうすればいいのか? それは「『問い』をもつこと。ただ、それだけだ」と▼「『問い』をもって生きる人間だけが『答え』にめぐりあうことができる。もたない人間はいつまでも解が見つからない人生をおくる」▼予備校でこの先生の授業を聴いていたときの興奮が蘇ってきた。けれども進学して退屈な講義を聞いているうちに熱意も問題意識も薄れていった。時代は安定成長期だった▼それからおよそ30年、様々な変化がありながら当座をしのげばなんとかなると高を括っていたかもしれない。真剣に考えるべき難局は来年も続く。
(12月14日号)
今年はベートーヴェンの生誕250年。誕生日は12月16日。記者が小学生のとき音楽室の壁に十人くらいの作曲家の肖像画が古い順に並んでいてベートーヴェンから髪型が変わるのは何故だか分からなかったが、時代の大きな変わり目に生きた人だと後に知った▼フランス革命が起こって、その影響を大きく受ける。自由・平等・友愛の精神に熱狂。それまで音楽は王侯貴族や特権階級だけが聴くものだったらしい▼革命以前は宮廷に仕えて作曲の仕事をしていたが、市民が台頭してからはフリーランスとして自由な働き方に変わった。また、それまでは同じような曲が量産されていたが、「新商品≠ニいうものは新しい機能を付けて売り出さなければならない」という価値ビジネスの先鞭をつけた▼事務機器・情報システムの業界でいえば、「オンデマンド」や「プロダクトアウトからマーケットイン」などの革新をやってのけたといえるのかも▼人間の意思や感情を音楽で表現した。いま事務機業界も従来の「会社の業務の効率化」から「働く人の生きがい」へとシフトしている▼革新の象徴といわれる交響曲第3番を発表する前年、ベートーヴェンは遺書≠書いた。それは、死を選ぶのではなく、耳が聴こえなくなるなど苦悩や絶望を克服して音楽家として生きていこうと強い意志を綴った家族への手紙だった。
(12月7日号)
「winwinの関係になりたいね」「双方がハッピーなんてありえないよ」。そう遠くない昔、業界の懇親宴の隅でこんな会話を聞いたことがある。シェア争いが激しかった頃。商品はすでにデジタル化していたが、売り方はアナログ的だったかもしれない▼福島県の事務機販社、鈴弥洋行が先月、『FGOP(ふくしまオンライン化計画)』というオンラインイベントを開催した。仕事をデジタル化して事業成長のチャンスを生むための企業支援プロジェクト▼地元ですでに取り組まれている様々な事例を動画配信で紹介していた。とくに八百屋さんの若手経営者の取り組みに引き込まれた▼SNSを使って情報発信の仕方を工夫し、インスタグラムのフォロワー数を増やし多くの顧客と繋がることで、コロナ禍でも売上を確保。また効果的な求人方法、さらにコミュニティサイトを立ち上げて、顧客どうし、また顧客と自分の店の取引先と繋げるなど、関わる人たち皆がwinwinwinを実現できたという▼将来の地方のあり方を展望できるこうした事例をみて、デジタル化は単なる手段ではないと納得した人は多かったのでないかと思う▼鈴弥洋行は今年、数々のオンラインセミナーを精力的に開催している。長年の事務機販売活動で培った力を基盤に、地域のビジネスに未来を作り出す≠ニいうビジョンを掲げている。
(11月23日号)
「職場をデザインすると働く人が幸せになる」。NHKで放送された「ルソンの壺」を見てデザインすることに価値があると納得した人は多いのではないかと思う。オフィスのプラニングや施工を手掛ける株式会社ヴィスによって変革を遂げた企業が紹介された▼作業着のメーカーは従来の事務所と倉庫を改造。ブーメランのような形のデスクに変えたことで周囲の人たちと気軽に話し合えるようになったり、執務中に商品が目に入るレイアウトに変更したことでそれまで野暮ったかった商品をカッコよくしようとアイディアが生まれたり▼自社製品をPRするのが下手だった精密機器メーカーでは商談室とショールームを改造し、社員に宣伝する意識が芽生えたり▼ヴィスの中村社長は「効果が表れてこそデザインだ」と言う。顧客の現場を見、そこで働く人たちが感じていることを吸い上げる▼15年ほど前は「オフィスをデザインする必要なんてない」と笑うお客さんが多かったという。今は企業イメージが働く人を勇気づける世の中に変わってきた。「コーポレートアイデンティティー」という言葉を聞くようになったのもこの頃か▼「これからのオフィスは、ワークプレイスからカルチャープレイスへ」。在宅勤務が続いて職場へ行くのが億劫になっている人でも「行きたくなる」オフィスは様々な課題を解決する。
(11月9日号)
一年ほど前から足や肩などに軽い痺れや痛みがあり、仕事に集中しにくいときがある。このような慢性的な症状をもって働いているビジネスワーカーは少なくないのではないかと思う▼医療機関に通ってもいっこうに治らない。現代医学は進歩しているのになぜなのか?▼日本自然療法研究会が編纂する『手足のしびれはこれで治せ!』などの本を読むと、その理由は、現代医学が臓器の治療を基本にしているからだという。手術や薬で原因を除去しさえすれば術後の後遺症や副作用など患者の苦痛は考慮しない傾向にあると▼コニカミノルタが今後の事業についての報道向け説明会を開き、「これまで見えなかった課題を可視化することで、ビジネス顧客の個々の欲求に応える」という方針を打ち出した。そのなかのヘルスケア事業では「分子レベルでの診断を可能にし、従来の医療では見えなかった疾病の状態を解明し、個別化医療分野に参入する」という▼同社は長年事務機業界で「働く人々」に寄り添ってきた。その強みをヘルスケア事業でも発揮していただき、ワーカーのQOL(生活の質)を上げてもらいたい▼そして、長年のパートナーである全国各地の「事務機屋さん」が一人ひとりのビジネスユーザーの健康に貢献できるヘルスケアソリューション提供の仕組みを早急に構築していただくことを欲求する。
(11月2日号)
マスクやフェイスシールド、アクリル板などが新しい日常≠ノなったが、これらを装着・装備せずに人とコミュニケーションしたいと思う人は多いと思う。逆に、「このほうが安心して仕事ができる」と思う人もいる▼『「繊細さん」の本』を著わしたHSPカウンセラーの武田友紀氏は、周囲の人に気をつかってストレスがたまり仕事が手につかなくなったり、気がつきすぎて疲れやすくなる、そうした悩みをもつ6百人を超える人たちから相談を受けてきた▼HSPとは「ハイリー・センシティブ・パーソン」の略で、高度な感覚処理感受性を気質として持つ人のこと。「とても敏感な人」▼武田氏はこうアドバイスしている。「相手の話しを聞いていて疲れたら、あの分厚くて透明なアクリル板を心の中でイメージしておろすのです。効果は抜群。相手が何を言っても自分は安全。相手のエネルギーを直接浴びることはありません」▼新型コロナウイルスの感染拡大が起こり、アクリル板で仕切る作法が現実のものとなった。感染防止が目的だが、「繊細さん」には有難い日常が到来したのかもしれない▼武田氏は「繊細さを克服する必要はなく、そのままの自分を活かす」技術を説く。HSPには、「リスクを察知する」「相手のニーズに細やかにケアする」「改善点に気づきやすい」などの優位性もあると指摘している。
(10月26日号)
長期化しそうなコロナ禍は世界規模での災い。人種も思想も主義も分け隔てなく¥Pう▼今年の「京都流°c定書」イベントのテーマは『共存』だった。開会時に門川大作京都市長がこんな挨拶をした▼「デジタル化は大事だが、新たな格差が生まれるのではないか心配。きめ細かな配慮が必要」「地球環境や孤立の問題もある」▼「ウィズコロナの時代に私たちはどう生きていけばいいのかウイルスの専門家に尋ねたら『京都では1千年前からウィズコロナですよ』と言われた。祇園祭に象徴されるように自然災害や疫病と闘い、それを乗り越えてよりよい街づくりを行なってきた歴史を思い、未来社会を展望したい」と、いつもの着物姿で後ろを振り向き、「私はSDGsのバッジを胸にも背中にも付けている。家紋もこれにした。あらゆる社会課題の解決に挑む」と抱負を語った▼セッションでは、様々な分野の専門家が参加して様々な視点での発言があった。「遠隔コミュニケーションを行なうアバター(分身ロボット)はリアルを大切にする技術なので、ロボットが嫌いな人にこそ扱ってもらいたい」「オンラインで心を動かすには、自分自身がマイノリティの立場になること」「コロナは世界共通の問題。いまこそ立場を超えて力を合わせるべきなのに」▼いま求められるのは少数派の声を聞く姿勢ということか。
(10月12日号)
先月、8か月ぶりに東京方面へ出張した。20年以上、月に一度くらいのペースで上京していたが、こんなに空いたのは初めて。都内での人の往来はコロナ前に比べてそれほど少ないとは思わなかった▼閑散さを感じたのは幕張メッセでの展示会。弊紙は「総務・人事・経理Week」にブースを構えて出展した。主催者が集計した三日間の来場者数は1万8千629人だった▼この展示会には毎年出展していて、昨年の来場者数は失念したが、一昨年(2018年)は東京ビッグサイトでの開催で6万1千人、2017年は4万8千人だった▼大塚商会やアマゾンジャパンは予定していたブースのエリアを残したまま、その空地≠ノは出展をとりやめた旨を伝える立札があった▼このように今年はコロナ禍で来場者数も出展数も減少したが、新規の取引先を開拓する活動そのものが細ったとはいいきれない。「こんな状況でも会場まで足を運んでくれた来場者とは質の高い商談ができた」との声もあったようで、オンラインで商品を紹介するサービスも初めて実施された▼いつ収まるか見通せないウィズコロナは、顧客との対面を長年重視してきたOA業界には厳しさを強いるが、招待者と順番に面会する予約制を準備するところもあり、物理的な密を避けながらも顧客との精神的な密は疎かにしない工夫が行なわれている。
(10月5日号)
この新聞を刷ってもらっている印刷屋さんは4年ほど前からのお付き合いになる。提出した原稿に誤字脱字があったときなど文字を修正すべきと知らせてくれたり、ときには記事の内容についても指摘してくれるなど、一緒に新聞をつくってくれている$M頼感を抱く▼コニカミノルタジャパンが開催した「印刷会社の売上向上を目的としたオンラインセミナー」で講師の岡本達彦氏(販売促進コンサルタント)は、「プロフェッショナルの思考で仕事を進めてしまうことは危険だ」と訴えた▼「お客さん(ユーザーや消費者)の気持ちや現状を把握しないままクライアントの人たちだけで販促会議を行なっていてはだめだ」と▼「不確かな情報で印刷会社にチラシや広告を発注」→「商品が売れないのはこんなチラシをつくった印刷会社が悪いのだ」ととんでもない非難が▼それを防ぐために、「お客さんに直接聞くべき五つの質問」を提示。それによって改善したチラシを紹介した▼ひと目見ると、改善前の方がレイアウトもデザインも綺麗。だが、改善後のは特定の悩みを抱えるユーザーに呼びかける文言が真っ先に目に入ってくる。さらに、不安を吐露するユーザーの声や、その解決法を掲載。後者と前者の広告効果は雲泥の差だったという▼売れるか売れないかは顧客に伴走するかどうかにかかっているようだ。
(9月21日号)
先月のTV東京系列の経済番組「カンブリア宮殿」でボランタリーチェーンの「コスモスベリーズ」が取り上げられた。一年ほど前、同社の加盟店開発部の方から「事務機屋さんもお客さんから急に家電製品を求められたとき便利ですよ」と話しを聞いたことがあった。今回の放送でも事務機関連の販売店十数社から問い合わせがあったという▼昔、三種の神器と呼ばれたテレビや洗濯機、冷蔵庫など夢の商品を消費者は街の電器店で買った。大型家電量販店が台頭してからは苦戦を強いられ、1982年の時点で全国に7万店以上あった街の電器屋さんは2018年には約1万8000店にまで減少▼コスモスベリーズ(創業者=三浦一光氏)はヤマダ電機とタッグを組む。地域で長年店をかまえる異業種の店舗も、仕入れだけでなくヤマダ電機のサービスも受けられる。こうした仕組みを作り出した背景には三浦氏とヤマダ電機・山田昇社長との人間関係があったという▼量販店、ネット販売と時代が進めば地域の小さな店舗は姿を消すのではと記者などは単純に心配していたが、商売は価格勝負だけでないことを改めて教えられる▼「街の電器屋さんになる」。大塚商会が掲げる標語を思い出した。どんな時代でも顧客の困りごとを解決するにはそこで営む人たちに身近に接すること。地域の事務機屋さんも復活できる。
(9月14日号)
自民党総裁選の投開票が今日行なわれるが、次のリーダーに期待したいことの一つは、格差の是正▼長引くコロナ禍で、多くの働く現場で活動が滞り景況が悪化しているのに、とくに米国では株価が上昇するという現象が▼金融緩和政策もあるが、ナスダックに上場する上位企業がIT大手で、米国の全ての株の80%以上を保有しているのは限られた富裕層。そのため九割の米国の庶民にとって株価の下は関係なくなってしまっている▼IT企業が集中するカリフォルニアでは地価が高騰して一般市民は家も買えず家賃も高くて払えないらしい▼昔は株が上がれば景気が良くなり皆が豊かに暮らせる感覚があったが、株式市況と庶民生活との乖離がすすんでいる。何かと米国に追随しようとする日本も今後が不安▼デジタル産業が世の中全体を牽引していくのだろうが、儲かる仕組みを考え出すことだけが「価値のある仕事」ではないだろう。「日常の人々の生活基盤を支えるために働く仕事」こそ大事なのでは▼米国では「資本主義こそウイルス(疫病)だ!」と街頭でデモをする人たちが増えているという▼先月リコーが社員の働きがい改革≠ヨの取り組みを発表した。業界はこれまで「働き方」に重点をおいてきたが、これからは「やりがい」を高めるほうが、全ての働く人たちからの支持が得られると思う。
(9月7日号)
過酷な暑さでエアコンなしでは過ごせない日が続いたが、冷房をつけ過ぎて電気代を無駄にしたと思ったことが何度かある。生活の場面でも仕事をしているときも、「ムダ」を感じることが少なくないが、どうすれば減らすことができるのだろうか▼『無駄学』の著者・西成活裕氏は「何がムダなのかを考え、それを取り除くために『目的』と『期間』を共有しなければならない」と述べている。たしかに、今は役に立たないように見えても将来役立つこともあるので、これらをはっきりさせておくことが重要▼人間社会はこれまであらゆるムダを取り払うことで発展してきたが、とりわけこのOA業界は顧客満足を得るための大きな提案要件となっている▼ウエダ本社が開催した二回目のオンラインセッションでは、「無駄をたくさん蓄えた会社ほど強くなれる」という主張が注目を集めた。私語や雑談はムダと評価されるが、「新しいアイディアが生まれた途端、それは価値≠ノ様変わりする」。ムダとカチは正反対のようで、表裏一体の関係にあるのか?▼「ITリテラシーを高めたいとシステム屋に全部任せて、そのあとほったらかしでは、それこそムダ」▼西成氏は「ムダ取りはコンピュータにはできない」と断言している。「人間だけが全体を一歩引いて眺めることができる。コンピュータは矛盾を処理できない」。
(8月24日号)
先月シャープがビジネス向けのプラットフォームサービスを発表した会見で販売目標を訊かれた中山専務執行役員は「IT関連サービスのウェートを30%に引き上げたい。リコージャパンさんは50%くらい行ってるのでは」と返答していたが、従来のハードや消耗品を中心とした事業をいかに変えていくかがこの業界の最大の目標といえる▼今年の1月にコニカミノルタジャパンが複合機一体型のITサービス「ワークプレイスハブスマート」を発表した会見では、同社が国内約1万社の企業に働き方の成熟度を調査していたデータが紹介された▼成熟度は4段階に分類されていた(「レベル0」=紙や帳票に縛られ働く場に縛られている/「レベル1」=プロセスがITでつながりデジタル化が始まる/「レベル2」=現場同士がデジタルでつながる/「レベル3」=必要な人やナレッジがつながり何時でも何処でも誰とでも価値創造できる)▼ITサービスを乗せたこの新しい複合機をどうやって売るか。大須賀社長(当時は副社長)は、「中小企業のお客様に寄り添ってきた事務機業界ならではの強みを活かしたい」と語った。が、その後の質疑応答では、現状の大半の事務機販売店では「担ぐのが難しい」という実態も見えてきた▼顧客ユーザーの成熟度を上げる前に事務機屋さんの成熟度を上げてもらいたい。
(8月10日号)
長引くコロナ禍で働き方やオフィスはどれくらい変わったのだろうか? 京都のウエダ本社が6月にオンラインで開催したトークセッションでは、在宅勤務が定着するにはまだまだ時間がかかるだろうとの指摘があった▼「テレワークが一気に広がった感があるが、ずいぶん以前からあったのに取り組む人は少なかった。コロナ禍でやらざるをえない状況になって、実際にやってみたら、『難しいと思ってたけど、案外できるじゃん』と感じた人が多かったもよう。でも、それは勘違い≠ネのだ」▼増収増益を誇る米国の巨大ネット企業が今後の職場についての考え方を表明していて、そのコメントが印象に残った。各社の意見は慎重▼「アップル社はアフターコロナにはオフィス勤務に戻す方針。一方、ザッカーバーグ(フェイスブック)は在宅勤務が安定するのに5年から10年はかかると言っている。すぐに取り掛かれると言いそうな企業にしては意外な発言だと思った」▼「人間ってすごいセンサーをもっている。かすかな雑音≠竄サの場の空気感も聞き逃さない技術が開発されたら、テレワークは進化するが、まだ年月がかかりそう。ザッカーバーグはそういうことを言っているのだと思う」▼「これまでは執務と会議をする場だけのオフィスが大半だったが、これからは社員が一緒に考え、創造する共有空間が必要」。
(8月3日号)
この春他界した作家・環境保護活動家のC・W・ニコル氏が残したメッセージ「森の祈り」のポスターが先月、東京メトロ駅13ヵ所に掲出された。「…違いを受け入れ、みんなで一つの森になろう…砂漠化してしまったみんなの心にもう一度緑を取り戻そう」▼国際紙パルプ商事が昨年11月に催した展示会の基調講演でニコル氏は「人間は12才くらいまで脳が発達するが、自然からの刺激を受けていないと脳の発達に異常をきたす可能性がある」と語った▼ニコル氏が生まれ育った英国南ウェールズは石炭など豊富な地下資源を産出して産業革命の起点を支えた地。自然環境の破壊を子ども時代の脳裏に刻み込んだのかもしれない▼長野県黒姫高原の荒れた里山の一部を購入し里山の再生運動を展開する「アファンの森」は生物多様性が豊かに甦った森。多くの動植物の命があふれ、心に傷を負った人々の心を癒してくれる場となっているという▼コロナ禍に実施されたロックダウンで世界各地の大気汚染や水質汚濁など環境がいくぶん改善され、感染防止と経済再生の両立が昨今真剣に議論されるようになった▼ニコル氏は生前、環境保護と経済のバランスを訴えていた。森に生きる動物や植物はバランスを保っているのに、人間社会は…▼人と自然環境との共生。産業革命以前に戻すにはどうすればいいのか?
(7月20日号)
プロ野球やサッカーJリーグが観客を入れる試合を10日に開始したが、音楽コンサートの業界ではもう少し前から実施している楽団があったらしい。長引く公演中止で打撃を受け存続の危機に瀕したオーケストラは少なくない▼コロナ禍での再開。楽団員らはソーシャルディスタンスをとって音響への影響を考えて楽器を配置するなど様々な工夫を凝らした。リモート演奏では味わえないナマの良さを届けようと▼昔、コンサートマネジメントの会社で働いていたときのことを思い出した。客席が聴衆で満席になり、割れんばかりの拍手と歓声。観客と演奏者に瞬間の感動を提供できたときの満足感は今も忘れられない▼その当時携わった仕事は、企画、主催者との打ち合わせ、ホールの場所取り、広告営業、チラシの作成、アーティストのスケジュール管理など▼上司からこんなことを言われた。「我々裏方の仕事は紙と鉛筆があればできる」。今ならデジタルツールで素早くできそうだが、ペーパーであれペーパーレスであれ、ドキュメント業務が大切なのは昔も今も変わらない▼また、「仕事の基本はチケットを売ること」だとも教わった▼事務機業界での仕事の基本は何なのか。もちろん新製品が売れたときの喜びは大きいが、瞬間的な満足かも。「商品を使い続けてもらう」ことで持続的な満足を共有できるのでは。
(7月13日号)
コロナ感染がなければ今月24日から東京オリンピックが開催されるはずだったが、その開会式を記念して制定された「スポーツの日」は祝日として施行される。10月の「体育の日」は無くなったようだが、これも先の東京オリンピックの開会式を記念した祝日だった▼浅学な記者は「スポーツ」と「体育」はほとんど同じことだと思っていたが、両者は異なるものらしい。知育・体育・徳育がバランス良く取り入れられているのがスポーツで、体育は運動能力や体力の向上など、限定的▼スポーツは、一定のルールに則って勝敗を競ったり、楽しみを求めたりする競技活動の総称。過去のオリンピックでは、歌や作曲、絵画、彫刻などの芸術活動も競技種目に含まれていたようなので、最近話題のeスポーツはたぶんスポーツの範疇といえそう▼政府が「体育=スポーツ」と思ってしまう風潮を変えようと打ち出したのが「スポーツの日」だそうだから、単に言葉が変わっただけではないことになる▼事務機の業界では販売活動を「体育会系」と表現していた時代がある(?)。「コピー機を担ぐ」とか「泥臭い営業」という言い方はもう聞かれないか▼「体育会系」は昨今「ブラック企業」とも関連づけられてイメージがあまりよくないが、根性論や団結心もアフターコロナの時代には非難されるようになるかもしれない。
(7月6日号)
「コロナ禍で変わるのは働き方だけではない。生き方も変わっていくだろう」という意見をよく聞くようになった。ワーク・ライフ・バランスやストレスチェックはビフォアコロナの時代から課題となっているが、ワークとライフはどうバランスをとればいいのか?▼『日本人は「やめる練習」がたりてない』の著者・野本響子氏は「日本はトライ&エラーができない社会だ」と述べ、移住したマレーシアの文化習慣を記している。「就職しても自分に合わなければすぐに辞めてしまう。転職回数が多くてもこの国ではデメリットにならない」▼著者自身、子どもの頃から何かを選んで挑戦したり挫折した経験が少ななかったために自分の適性になかなか向き合えなかったと振り返る▼日本では「サービスは完全な形で提供されて当たり前と怒ってクレームを言う」人が多いが、マレーシアでは過度な期待をしない。そういう寛容さ≠ェあるので、「自分で動き、冒険的になり、自分から変わることができる」のだと▼一方で、「勤勉で、一つのことを何十年も続け、努力する、そんな日本人に学びたいというマレーシア人もいる」▼これは別の人から聞いた話しだが、アジア諸国で唯一、欧米の文化に対して劣等感をもっていないのがマレーシア人らしい。私たち日本人は西洋崇拝の思想が長年刷り込まれているのでどうしようもないのだと。
(6月22日号)
米国出身の大学教授ジェフ・バーグランド氏は降水量の少ない地域で生まれ育ったため日本に来るまで傘をもったことがなかったという話しを聞いたことがある。初来日したのは6月。高温多湿に驚き、「この重たい空気、ナイフで切れるのでは?」と感じたらしい▼今年の梅雨は例年以上の鬱陶しさかもしれない。コロナ禍でマスクを着け続ける毎日。気温が上がるにつれ蒸し暑さと息苦しさが襲いかかる▼生活や仕事の環境変化、経済の困窮が加わり、これらの重苦しい空気感から心身の不調を訴える人がこの季節に急増するかもしれない。事務機販売会社では顧客や社員、その家族にオンラインで心理相談会を実施しているところもある▼多数の心理学書を著わしている社会学者の加藤諦三氏によると、身体の不調よりも、不安に思う心のほうが恐ろしいと述べている。「心の病には自覚がなく、『病気になったら頑張らなくてもいい』と口実をつけて消極的に解決しようとしてしまう」▼その消極的解決の仕方を加藤氏は『合理化』と呼んでいる。「その場の不安は逃れるけれども、結局我々は弱くなる。どのくらい弱くなったのか分からない」▼ここでいう合理化は心理学用語だが、事務機業界では永年金科玉条としている語だけに気になる▼なお、不安を積極的に解決する方法は、信じる価値への献身だそうだ。
(6月8日号)
「レトロ印刷」で検索したらすぐにサイトが出てくるアート系のJAMはデジタル孔版印刷やシルクスクリーン製版のサービスを展開している。だが、コロナ禍で店舗は営業停止、イベントやワークショップも中止になり、売上も激減した▼かつてない危機に陥り、この文化を途絶えさせないためクラウドファンディングを行なったところ、数日で目標額1千万円を達成。その後も増加し、(6月3日現在で)2千8百万円、支援者数は4千8百人を超えている▼代表の山川さんに状況を聞くと「3密で成長してきた当社にとってコロナは大打撃。でも、こんなに多くの方々に応援していただいて」と、顧客への感謝と印刷業への愛情が伝わってくる▼JAMは13年前に日本で初めてできたリソグラフのアートスタジオでもあり、付加価値を求めアート表現を模索するクリエーターに、制作意図を聞き、それに合うインクや用紙を選ぶなど、時間を惜しまず♀り添ってきた▼ピンチの報を受けリツイートされているコメントは温かい▼「顧客と共に培った文化」はアートの世界に限ったものではないだろう。西洋の「アート」に対して日本には「用の美(ようのび)」という、ものづくり全般への美意識があると聞いたことがある▼今は3密を避けなければならないが、顧客に長年密着してきた業界には支持される力があると思う。
(6月1日号)
日本で緊急事態宣言がまだ出ていなかった4月の初め、タイのバンコクで働いている友人からメールが届いた。「こっちは発令が出て諸々が封鎖。BTS(高架鉄道)やMRT(地下鉄)は席の一つおきに×のテープが貼られ、外出時にマスクを着用しないと30万円の罰金か1年の禁固刑。夜10時以降に外出すると逮捕される」▼「軍政府の独裁国家なので、命令として即日施行され、国民は守っている。それが功を奏して先週あたりから感染者が少なくなってきた」▼これを読んだとき、「こういうときは軍事独裁制のほうが頼りになるのでは?」「日本は自粛を呼びかけているだけなので感染拡大を防げないのでは?」などと不安がよぎってしまった▼発令の延長もあったが先々週から段階的に解除されることになった。「思っていたよりも早く解除になった」という声もあり、各自治体のトップと市民との信頼関係、医療機関への援助や感謝など、対応への理解と協力がすすんだからとの評価も聞く▼バンコクの友人の仕事は日本語教師。日本で働きたいと願うタイ人の生徒たちの日本語学習を支援している。当初はインターネット環境に不安があったが、最近ようやくオンライン授業に慣れてきたとか▼生徒たちは日本の会社に就職し活躍することを夢みている。来日したら日本の民主主義の良さも堪能してほしいと思う。
(5月25日号)
オーケストラの指揮者は客席に背を向けているのに聴衆の反応を感じることができるらしい。舞台や演台に立つ人も観客や聴講者がどう受け取っているのかを感じ取れるという▼コロナの感染拡大で記者を会場に呼ばないオンライン会見が増えた。3月のリコーの会社説明会のとき山下社長は「どこを向いて話せばいいのか分からない」と戸惑った様子だったが、その場に聴く人が1人もいないとプレゼンはやりにくかっただろうと思う▼客や話し相手が黙っていても雰囲気を感じるのは目や耳よりも皮膚のセンサーのほうが優れているからだとNHKの「ヘウレーカ」という番組で知った。皮膚科学研究者の傳田光洋氏によると、皮膚は触感だけでなく、光の色の違いや耳には聞こえない高周波の音まで感じるのだという▼「超高周波はイヤホンで聴いても伝わらず、高級のスピーカーなら体感できる」「『閑さや岩にしみ入る蝉の声』を詠んだ松尾芭蕉は耳に入ってくる蝉の声だけなら喧しいはずなのになぜ静寂を感じたのか」「人類は120万年前に体毛を捨てたことで感性が進化≠オた」「理路整然とした説明を聞いても納得できないのは、その人が肌に合わ≠ネいから?」など興味深い話しが続いた▼いま脚光を浴びるオンラインシステム商品。ナマの臨場感に迫れたら会議やプレゼンの質も進化するかも。
(5月18日号)
緊急事態宣言が発令されて以降、ビジネスの様々な面でも影響が大きくなっている。事務機の業界は顧客のオフィスへ訪問することを基本としてきただけにダメージははかり知れないものがある▼2月に事務機販売会社の営業担当の方々に状況を聞いたときは顧客への訪問活動は通常に行なわれているところが多かったが、3月以降は様相が厳しくなっている。数社に近況を聞いた▼「お客さんのところには要請がないかぎりこちらからは出向くことはなくなった。出社されてないお客さんも増えた」▼「当社の社員も在宅勤務する者が増え、出社するときは時差出勤や交代制にするなど、3密≠ノならないよう工夫している」▼「営業担当者らの在宅ワークをみると、電話やメールを駆使して、フェースtoフェースに匹敵するくらいの成果をあげている者がいる(新規は無理)。一方、実質、自宅待機しているだけの者もいる。この差は大きい」▼「お客さんの会社の売上は2月が前年比25%ダウン、3月は50%ダウン。4月は…。当社もそれにともなって業績が落ちている」▼「テレワークの商材については問い合わせが増えている。このご時世だからこそのお客様のお困りごとを聞かせていただいている」▼「経済活動はもちろん大事だが、まず社員の命を守るのが経営者の役目。命あっての経済。心の健康も心配」。
(4月27日号)
今週からゴールデンウイーク。通常なら胸がわくわく弾む黄金週間だが、今年はコロナウイルスの感染拡大でそれどころではなくなっている。緊急事態措置の5月6日まで休業するところもあればGW期間中の営業日はテレワーク体制で臨むところも▼昨年は5月1日に新天皇が即位され令和が始まって祝祭感に満ち、超大型10連休の過ごし方も話題になったが、遠い昔のことのように思える▼外出自粛が続くなか家でどんな休暇を過ごすか▼「やはり映画鑑賞三昧だ」と言う友人が何人かいる。今はレンタルビデオ店まで足を運ばなくても宅配してくれるしネットで鑑賞することもできる▼友人の1人は「『未知との遭遇』を観るつもりだ」と。先が見えず未知のウイルスと闘う今の状況から連想したのか▼これは1977年に公開されたアメリカ映画で、世界各地で発生するUFO遭遇事件と、人類と宇宙人のコンタクトを描いており、アカデミー賞の撮影賞や音響効果編集を受賞している▼この年には『スターウォーズ』の第一作も公開された。筆者はこのとき高校生だったが映画館へ行ってどちらの作品も見、新しい時代についていけないような不安感を覚えた記憶がある▼この年、事務機の業界では「OA」が提唱された。映画産業との関連はないだろうが、オフィスビジネスの世界にも新しい潮流が生まれた。
(4月13日号)
コロナウイルス感染拡大で在宅勤務を始めた人、また、短期間のつもりで始めたものの想定以上に長引いている人もいる▼OA機器の業界では数年前から「オフィス以外で働くお客さまも支援する」というスタンスを打ち出す企業が増えているが、「在宅」という、オフィスとは異なる領域ではどのような支援が行なわれているのだろうか▼「テレワーク」や「リモートワーク」の商材やサービスは前々号でも紹介したように内容が充実してきた。モバイル機器によるインターネット環境構築、データのアクセスや共有、等々▼とはいえ、「テレ」や「リモート」という接頭語を見るかぎり、今もオフィスが中心という考え方は変わっていないように思える▼在宅勤務を始めて一か月になる知人に感想を聞くと、「腰にくる」という悲鳴がかえってきた。自宅にはローテーブルやリビングテーブルしかないのかもしれない。長時間の執務がつらいと▼シンプルなパソコンデスクもない(筆者も)、このような生活環境にある人は少なくないのでは▼「SOHO市場」というユーザー層は以前から存在するが、小型化・軽量化した情報機器のほかにどんな商品がそろっていたか▼先日、コワーキングスペースを設ける新型マンションが売りに出されたというニュースを見た▼OA業界は働く人≠ヨ寄り添う余地がもっとありそう。
(4月6日号)
コロナウイルス感染拡大で自宅で仕事をする人が増えている。在宅勤務するようになった方々にお聞きすると様々な感想を寄せていただいた。ネットで紹介されているものもある▼在宅勤務のメリットとしては、「通勤がなくなって時間的な余裕ができ、家事をしたり家族と過ごす時間がふえ、仕事と育児の両立も可能になった」「オンラインツールを使って会議が効率化できた」「思っていたよりも早く、数日で慣れた」▼一方、デメリットは、「職場の環境とは違うので集中しにくい」「紙の書類を全て電子化しておかないと何かと不便。数日に一度はオフィスに行かなければならない」「オンラインで初めて会う人と商談したが、違和感があった」「対面でのちょっとしたコミュニケーションがしにくい」「会社ではデスクトップパソコンを使っているが、家で使うノートパソコンは画面もスペックも小さく、長時間操作するのが苦痛」▼また、「オフィスで働くことの良さが改めて分かった」という声もあった▼いずれにしても課題を克服して時間を短縮し、働き方改革をすすめているもよう。一方、テレワーク支援ソフトを販売しているある会社は「問い合わせが殺到して寝る間もない」と多忙に追われ、「支援する側も改革が必要だ」と▼感染拡大が長引いている。働き方を変えるだけでは済まない状況にならないことを祈る。
(3月23日号)
先日、車検の手続きをしにカーディーラー店に行ったらショールームの片隅にどこからかのお祝いか、胡蝶蘭が飾られていた。聞くと、この店の整備士が近畿ブロック大会で優勝したという▼ほかに来店していたお客さんらは気にも留めていない様子だったが、この店に勤務する販売担当や事務員らは「とても誇らしいことです」と盛り上がっていた。選抜されたエンジニアは2か月ほど通常業務から離れて猛勉強に勤しみ、ブロック大会、さらに全国大会へと進む▼複合機やプリンターのCE競技会の様子は12月にいくつか記事で取り上げたが、こちらも鎬を削る熱戦が毎年繰り広げられている▼「競技会に出場するだけでもたいへんなこと」「彼らは当社の宝」。こうしたエンジニアに対する高い評価や尊敬の声をこれまで取材しているときに幾度となく聞いたことがある。とはいえ、一般のユーザーにあまり知られていないのは自動車業界と似ているかもしれない▼展示会などでCE自らがブースに立って来場顧客にプレゼンを行なう光景が増えてきているように思う。知識だけでなくコミュニケーション力に長けた専門家は「ITコンシェルジュ」と呼ばれるらしい▼事務機業界のエンジニアは求められる技能が幅広くなっている。お客さんの現場へ行って、相談にのり、提案も行なう▼「宝」の価値はさらに高まる。
(3月9日号)
コロナウイルスの感染拡大で政府がイベントなどの開催自粛を呼び掛けたのは2月26日。催しの中止や延期、規模縮小を「今後2週間は」という要請だったので、この紙面が届くころには収束していることを祈る▼政府が呼び掛けるよりも前に開催中止を決めた展示会は少なくなかったが、なかでも早かったのはカメラ映像機器工業会主催の「CP+(シーピープラス)2020」。カメラ愛好家に聞くと、「新製品に触れる≠アとが楽しみなイベントなので、その判断は的確だったと思う」と▼弊紙が出品を予定している「総務・人事・経理ワールド」(東京ビッグサイト)は4月15日〜17日。この頃には経済活動が通常に戻っていてほしい▼事務機販売店に状況を聞くと、訪問営業やインハウス(企業内プリントセンター運営サービス)での慎重な行動、販促企画セミナーの延期、社内での時差出勤の検討、などの返答を頂いた。メーカーから納品予定の機械が部品調達の遅れでまだ届かないというところも▼テレワークの問い合わせが増えたという販社もあった。昨年、台風が接近する前日にパソコンを自宅に持ち帰って仕事をした経験を顧客に伝えていたら、その反響がここへきて急増したという▼今、あらゆるメディアでテレワークの必要性が報じられている。これまでの働き方改革の実践が活かされる。
(3月2日号)
先月亡くなった元プロ野球選手・監督の野村克也氏はビジネスにも役立つ著書を数多く手掛けた▼「なぜか結果を出す人の理由」「頭を使った二流は一流に勝てる」「(勝ちに不思議の勝ちあり、)負けに不思議の負けなし」「言葉一つで人は変わる」「指導者のエゴが才能をダメにする」「人間の最大の悪は鈍感である」「弱小企業を一流へと導く経営理論」…▼後輩やマスコミに語った言葉も印象に残る▼「上手くやるより、全力でやれ」「気を使う人間になれ」「人間的な成長なしに技術の成長はない」「適材適所は能力に勝る」「監督は気づかせ屋」「劣等感が自分を支えてきた」「人間という字は、人と人の間と書く。ついそれを忘れがちになるが、そこに感謝という言葉が生まれてくる」▼「気合と根性だけで野球ができる時代ではなくなった」は、OA業界にも通じる警句だと思う▼後輩や取材記者はこのように話す。「この仕事で生きていく財産をいただいた」「自分が漠然と思っていたことを言葉にして表してくれた」「『ID野球』といわれるが、単にデータを集めるだけではなかった」「目に見えにくいものを見る大事さを学んだ」「毒舌の裏にいつも優しさがあった」▼「財を遺すは下、仕事を遺すは中、人を遺すを上とする」▼OA業界にもこのような指導者がおられたのではないかと思う。記事にしますのでぜひお知らせください。
2月24日号)
新型コロナウイルスの感染拡大。人工呼吸器を装着する患者もいるという。早く収束することを願うばかり▼このウイルスは「空気感染」はしないとされるものの、連日の報道を見ていると息苦しくなってくる▼『すべての不調は呼吸が原因』(本間生夫著)を読むと、呼吸には「良い呼吸」と「悪い呼吸」があって、酸素の取り過ぎや口で息をするのはよくないと書かれている。酸素よりも二酸化炭素のほうが大事だそうで、二酸化炭素は酸性とアルカリ性のバランスを調整する重要な機能があるという▼二酸化炭素は地球温暖化を引き起こす温室効果ガスと言われるので全くの悪者だと思っていた。また、深呼吸があまりよくないとも書かれていて、目から鱗の連続▼呼吸には三種類あるそうで、深呼吸のように意識して行なう「随意呼吸」、無意識に行なう「代謝性呼吸」、また、喜怒哀楽の感情や不安など心の動きによって変化する「情動性呼吸」があるという▼深呼吸で気分転換するのも悪くはないが、代謝性呼吸をゆったりしたペースで行なうのがベストとか▼そして、ずっと健康でいられるためには、肺を膨らませたり縮めたりする「呼吸筋」を鍛えることを著者はすすめる▼働いているときも休んでいるときも、生きている限りずっと動き続ける呼吸筋は、他の筋肉とは違った特別仕様≠ノ設定されているという。
(2月10日号)
働こうとせず一日のほとんどを家の中で過ごす知人がいる。以前は会社勤めやアルバイトをしたことがあるが、どの職場でも人間関係がうまくいかず、仕事をすること、そして、知らない人と話すことが億劫になったという。こうした引きこもりの人は日本国内に60万人以上いるという▼人手不足が叫ばれる昨今、このような状況にいる人たちを労働力に加える動きも出てきているらしい。知人はパソコンの操作に長け、情報収集能力や事象に対する情感も豊か。心の片隅には働きたい気持ちをもっている▼リコーはこの春からの中期経営計画で「働くお客様に働く歓び≠届ける会社になりたい」という理念を打ち出すという。この業界はこれまで生産性や効率性を追求してきたが、歓び≠提供するとなれば、どの業界よりもグレードアップするにちがいない▼その際、「働くお客様」だけでなく、「働いていない」あるいは、「働きたい気持ちはあても一歩前へ踏み出せない」人たちへ歓び≠届けてもらえたら、この上ない▼ただ、働く歓びや楽しみは案外、仕事に手間ひまかけて取り組むことで生まれるものかもしれないから、デジタル化にまい進するこの業界がそれを実現できるかどうか。人間はアナログの存在なので▼デジタルとアナログの両方の良さを知っているのがこの業界でもある。期待したい。
(2月3日号)
先月、米国ラスベガスで開催されたテクノロジー見本市CES2020では、「日本の出展社はプレゼンテーションが下手だ」と報じられていた。日本人は本当に伝える力が乏しいのだろうか?▼昨年、「ものづくりワールド」の立花エレテックのブースで黒山の人だかりのなかプレゼンしていた男性は、大塚商会の実践ソリューションフェアのステージに毎年登場している人だった▼この方は本職が役者さんだそうで、リコージャパンの展示会で複合機の特長を説明していた「実演販売士」まかせんしゃい井上≠ウんは働き方改革EXPOでも見かけた▼イベントのときだけ雇う≠アういう人たちのことを主催社は「プレゼンテーター」とか「ナレーター」と呼んでいるらしい▼プレゼンする内容は企業によって異なるのに、説明がとても上手い。だが、主催社の展示会担当者に聞くと、「彼らは展示の内容を分かっていない。前日にシナリオを読むだけ」だと▼それなのにお客を惹きつけ一体感をもたらすことができるのは何故なのか?記者にはどう見ても、主催社の言いたいことを100%表現し、物事を噛み砕いて誰にでも分かるように表現しているようにみえるのだが▼ふだん営業の現場で活動する事務機ディーラーは豊富な知識をもっている。両者の強みを組み合わせれば、伝達力はこの上ないものになるはず。
(1月27日号)
第四次産業革命と言われる今、技術発展の速度は第一次から第三次までの時間とは比べものにならないくらいスピードアップし、この先どんな社会になるのか読みにくい▼今年も業界の各団体や企業のトップの方々からの「年頭所感」を頂戴した。JIIMA(日本文書情報マネジメント協会)の勝丸泰志理事長は、技術の進化のあり方に警鐘を鳴らしている▼「働き方改革が叫ばれ、昨今はデジタル・トランスフォーメーションが流行語のようになっていますが、生産性や効率性でしか経営の成果を見なくなっているように感じます」▼「残業が減って生活が苦しくなった、というのでは何のためのデジタル化なのでしょうか。短時間でできるようになることは大切ですが、それ以上に社会を豊かにする企業の活動に目を向けたいものです」▼1964年、東京オリンピックが開催された年、新幹線が開業した。日本の高度経済成長を支えた世界一の高速鉄道。それを開発したのは、戦時中に特攻戦闘機の設計を上官に命じられた三木忠直という人だと年明けのNHKのドキュメンタリーを見て知った▼三木さんは「技術は人を幸せにするためのものでなければならない」という反省と信念をもって初代新幹線「0系」の開発に取り組んだ▼56年経った今、技術はどう使うべきかを考えたら、先が見えてくるのでは。
(1月20日号)
本紙恒例のディーラーアンケート集計結果(1月6日号)では、昨年に業績が伸びた企業が回答社の57%と前年の39%を上回り、「増収企業半数を超える」という見出しを打った▼とはいえ売上が低下したディーラーが回答自体をためらわれたとしたら、この数値にどれだけ信憑性があるか▼「増収」の要因としてあがったのは「新規事業が好調」を筆頭に、「システム化の進展」「取扱商品構成を変えた」「人を増やした」が続いた▼ここ数年、数社に状況を尋ねてきたが、新しい事業は多様。取り組んできた新ビジネスが芽吹いてきたのだと思われる▼アンケート結果と同じ紙面にヤチヨコアシステム・前田社長のインタビューの記事を掲載した。同社の場合は、新規事業ではなく、「創業した50年前から基本戦略は変えず」というメッセージが語られた。「OAビジネスに誇りを感じる」と▼「新規事業が上手くいかないと生き残れない」と多くのディーラーが喘いでいるというのに、なぜなのか?▼ある人に聞くと、「多くは洪水がやってきて絶命してしまうが、ノアの方舟に乗れる種族は限られる」と▼どんな不況業種でも、商品やサービスの価値が無くならないかぎり元気な会社は存続している。分断や格差と言われる今の世の中で選民思想は受け入れたくないが、お客に選ばれる努力の結果であるなら納得できる。
(1月6日号)
昨年はラグビーW杯が日本で開催され、初の8強入りを果たした日本代表は多くの人々に感動を与えた。記者はにわかファンでしかなかったが、身体と身体のぶつかり合いの凄さやこのスポーツ特有の「ノーサイド」という精神を知った▼ラグビーでは試合の終了を「ゲームオーバー」とは言わず、ノーサイドと言うらしい。「選手は互いに健闘を讃えエールを送る」。また、観戦する側も「敵味方なく混じって応援する」と▼こうした精神はビジネスの世界でもこれから大事になるのではないかと思われる。コラボレーションという言葉は以前からあったが、競い合う関係にある企業どうしも手を組んで力を合わせる、今後は本格的なキーワードになりそう▼社員が大勢いる企業でも、1社だけではなかなかできないことが多くなった▼京セラドキュメントが昨秋オープンした新スペース「ナレッジプラス」は、多くの人々が交流し、その知識と知識が掛け合わされて新たなビジネスの価値を創出する場を志向している▼本紙もこの春に刊行する「OA年鑑」のテーマを共創≠ノしようと考えている▼「捨てられる銀行3」(橋本卓典著)を読んでいたらこんなくだりがあった。「そういう銀行は、人と人の繋がりや共感がかけがえのない事業価値となる時代が到来したことに気づかず、計測できる世界≠オか見ていない」。
2020年↑
2019年↓
(12月23日号)
今年は元号が代わり、大きな節目の年となったが、30年余の平成とはどんな時代だったのか?▼今年5月のJBMIA(ビジネス機械・情報システム産業協会)の総会後の懇親会で山下会長は「平成は、ベルリンの壁が崩壊した頃に始まって、トランプ米大統領がメキシコ国境に壁を建てようとしたところで終わった」と語った▼「平成時代に起きた最も大きな事件は何だったか?」。こんな問いに「ベルリンの壁崩壊」と答える人は少なくない。日本で起こったことではないのに何故最大の出来事なのか?▼東西分断がなくなって冷戦構造が終わり、経済がグローバル化し、どの国も競争に参加しなければならなくなり、人の移動も増えた。日本にとっても、海外で起こったことが大きく影響するようになった▼あるジャーナリストが「あれで20世紀という時代は実質的に終わった」と言っていたが、どの国にとっても歴史の大きな転換点だったといえる▼冷戦が終わっても難題は続く。先日の大阪文紙事務器卸協同組合の総会で松本元理事長はこう述べた。「世界情勢をみると、米中は貿易摩擦、日韓関係もスッキリせず、ヨーロッパもはっきりしない、中東もややこしい。そんな年末」▼2020年は「壁」を建てたり壊したりするよりも、先月来日したローマ教皇のメッセージ「橋を架ける」世界になることを願う。
(12月9日号)
昔のビジネスシヨウなど展示会の主役は複写機(複合機)だったが、近ごろのイベントでは見かけることが少なくなった。先日の「働き方改革EXPO」では一台も置かれてなかったのではないかと思う▼先月のリコージャパンの催しでも、複合機はあるにはあったが、各ブースの様々なソリューションの陰に隠れて目立たない印象を受けた。が、メインステージで働き方改革のプレゼンを聞いたとき、複合機の存在の大きさを再確認した▼「請求書業務を紙でやっていると経理担当者はたいへん。手入力でミスすることもあるし、郵送料もかかる。けれど『複合機』を使ってスキャンしてクラウドに入れたら後はAIがやってくれるので55時間かかっていた作業は15時間でできる」と▼「営業担当者は名刺を1枚ずつスマホで撮っていたらたいへん。『複合機』で十数枚まとめてスキャンし、あとはクラウドが電話帳の形にし、OCR処理で文字をテキスト化して全社で連絡先を共有できる」▼「テレワークも、紙を電子化することで社外で働ける環境がつくれる。職場にある文書も検索でき、行動は早くなる」▼「これらのことができるようになるのは、『複合機』のおかげ」▼いま、時代の寵児のように世にもてはやされているのはAIやクラウドだが、複合機こそ昔から働き方改革の主役なのだとあらためて思った。
(12月2日号)
印刷会社に就職したいと思う若者が減っているらしい。印刷業界は斜陽産業の代名詞≠ネどと言われている(新聞業も)▼「職人気質が残っている」「機材の稼働音がやかましい」「インクで手が汚れる」「もうペーパーレスの時代なのに」などのイメージをもたれているようだ▼それを払拭するような展示会が京都で開かれた(前号に記事)。ホリゾン・インターナショナルが昨年の「IGAS」のときに近未来の印刷産業の形≠提起し、多くのデジタル出力機器メーカーがこれに賛同して開催が実現したという▼会場は従来の印刷機材展のようなメーカー毎のブースが個々に立ち並ぶ形ではなく、会場が一つの印刷工場のような、一体感のある景観。出展各社が上流から後加工まで連携し、全体構築されたワークフローのデモンストレーションが行なわれた。自動化による省力化や効率化が披露され、印刷産業の進化した形が示された▼ヨーロッパではこうしたスタイルのイベントが既に開かれているようで、それに倣ったらしい。フードコートは無料で、話題のタピオカミルクティーをいただいた。出展者も来場者も外国人が多く、会場はインターナショナルでお洒落な雰囲気▼出力された画像の美しさや、工程のクリーンさ、製本された成果物の豪華さ。これから就職活動する学生さんにも見てほしい展示会だった。
(11月25日号)
コピー機(複合機)の原稿台のガラスの側面に「コピー禁止事項」が記されているのをご存じだろうか?「コピーすると犯罪になるもの」また、「制限のあるもの」など、限られた範囲内での使用目的以外は禁じられていることが明記されている▼常識≠ニして心得てはいるものの、複合機を毎日のように使っていながら、しかもこの業界で記者を長年しているのに、この表示に今まで気づかなかった▼自分だけかと思って、周囲の人たち(業界の人たちにも)恐る恐る聞いてみたら、気づいていない人が意外に多かった▼書籍や楽譜、絵画、地図、図面、写真など「著作権」のあるものに制限があることを今一つ認識せずにコピーやスキャンをしてしまう犯罪≠ヘどれくらいあるのだろうか?▼JRRC(日本複製権センター)が出版社や新聞社から複写等に係る権利を受託する「個別受託制度」を開始して数年が経過したが、複製利用の許諾契約を結ぶ企業はそれほど増加していないという▼JASRAC(日本音楽著作権協会)によると、カラオケ店が音楽の使用料を手続きするよう行なった啓蒙♀動の効果は絶大だったようで、その際大いに貢献したのがコンピュータによる楽曲のデータベース管理だったという▼著作権の理解者を増やすには、誰も気づかない注意書きだけでなくIT活用がのぞまれる。
(11月11日号)
今年のノーベル化学賞を受賞した旭化成の吉野彰名誉フェローが開発したのは、スマホやパソコンに広く用いられているリチウムイオン電池。このおかげで世の中の様々なものが電源コード不要となり、モバイル時代を開いたといわれる▼さらにリチウムイオン電池には、再生可能エネルギーの普及、持続可能な社会に向けての貢献が期待されている▼先月の受賞会見のとき吉野フェローは「大切なのは執着心と柔軟さ」だと語った。そして、「私自身は携帯電話を持つことに拒否感があったので最近まで持っていなかった」と話していたのが気になった▼もし吉野氏が早い時期から携帯を持っていたら、今回のような受賞は無かったかもしれないと思った。というのは、「スマホを使い続けると記憶力や想像力が低下する」という指摘をどこかで聞いたことがあったから▼仕事や生活に欠かせなくなった携帯端末だが、執着心や集中力がおろそかになる怖れはないか? 毎日充電し、急用でもない連絡にせっせと返事していていると、便利に使っているというよりも、スマホに支配されているようなかんじ▼ITに浸かることとITを駆使することは違う▼業界では「紙に縛られない」とか「働く場所に縛られない」がキーワードになっているが、常に携帯に縛られる働き方をしていたら、創造的な仕事はできそうにない。
(11月4日号)
この11月1日で小紙は創刊50年を迎え、今号では特集を組みました。業界団体、メーカー、販売会社の方々からお祝いのお言葉やご寄稿をいただき、感謝いたします▼25周年号や30年誌のときにと比べると特集のボリュームは随分小さくなり、事務機業界は新たな価値に向けて変革している最中といえます▼このたびの企画に際して寄稿文に各社様の歴史を記して頂きたいとお願いしたところ、いくつかのご意見をいただきました▼「今の時代、他社がたどった足跡に関心をもつ人は少ないのでは?特に若い人は」「これからデジタルで如何に勝負していくかに心をくだいているときに過去のアナログ時代は役に立たない」▼また、「当社は創業30年、50年のときは社史を編纂したが、来年70周年を迎えるにあたって社内で話しあったところ出版を中止した」▼たしかに、立派な装丁の本は印刷費もかかるし、読みたい人が少ないならわざわざ作らなくてもという気になる▼「歴史小説なら武将や改革者が考えた策略を知りたいと興味をもつけれど」▼事務機業界の歴史には価値がない?▼フランスの著作家ポール・ヴァレリーはこのような言葉を残している。「我々は過去の風景を見ながら後ろ向きに未来へと進んでいく。ボートを漕ぐようにして」▼業界を築いた先輩方の行動から次代のヒントが得られるのでは。
(10月28日号)
今年の「グッドデザイン賞」の審査講評では、「形の美しさだけではなく、社会へ波及する共振@ヘに着目した」という。人々にどれだけ影響を与えるかが評価ポイントに加わった▼いまや「デザイン」は形ある製品だけではなく、顧客の課題を解決できるサービスの力が問われ、業界各社の受賞をみても(前号に記事)、ソリューションやビジネスモデルなど従来とは異なる視点がうかがえた▼そんななか日本放送協会が90年前に開始したラジオ体操がグッドデザインの「ロングライフ賞」を受賞した。「いつでも・.どこでも・誰でも行なえ、健康増進につながる」ことが優れたデザインだと評価された▼人間の筋肉は約6百あるそうだが、ラジオ体操は約4百を動かし、様々な効果が期待できるという。筋肉は90歳を過ぎても鍛えることができ、「体力が衰えるのは歳をとるからではなく、筋力が弱まるから」だとも▼『「筋力」をつけると病気は防げる』(石原結実著)を読むと、昔に比べて日本人の平均体温は下がっているらしく、「低体温は免疫力を低下させ、あらゆる病気の下地をつくる」と。癌の発症率が高まるのもこれが原因かも▼昔に比べて身体を動かす機会が減っている。家では家電製品が、職場では事務機器が発達しすぎたか▼仕事の時間を短縮するだけでなく筋肉を強くしてくれる商品の登場が待たれる。
(10月14号)
ヤフーがアパレル・ファッション業のZOZOを買収したニュースを見て、昨秋のトヨタとの提携など、IT大手はAI技術を駆使してそのうち人類のすべての営みをのみ込んでいくのではないかと怖さを感じた▼片山恭一著『世界の中心でAIをさけぶ』を読んだ。デジタルテクノロジーの中心地アメリカ西海岸を旅しながら、近未来の企業のあり方や労働、人間存在の意味を思索するエッセイ▼いつの間にかインターネットが世の中を支配するようになり、片山氏は、「アマゾンやグーグルにアクセスできない状況に陥れば禁断症状が出る」「パソコンがうまく起動しないと頭を掻きむしりたくなる」と「インフラというよりもライフラインに近いものとなっている」今の状況を危惧する▼仕事はAIがしてくれるから多くの人々は働くことがなくなり、自分の個人情報をIT大手に提供するだけの存在になる。多くの会社が淘汰され、生き残ったIT企業は国が行なうサービスも提供▼それによって国家も民主主義も力を失う。一方、これまで競争で混乱していた世界情勢は安定に向かう▼AIが人間を超える「シンギュラリティ」に達したら、よりよい未来社会が訪れるのだろうか?▼競争することでこれまで発展してきた事務機業界にもユートピア(理想郷)が訪れるのか? それともディストピア(暗黒世界)か?
(10月7日号)
大塚実さんが9月7日、永眠された。1961年に大塚商会を創業し、OAの専門商社として同社を発展させ、2001年まで40年間社長を務めた。創業の精神『サービスに勝る商法無し』をモットーに顧客満足を徹底、時代の変化に対応し、常に業界の先を歩み続けた▼弊紙の創刊者藤本忠男は生前、「大きな紙を広げて戦略を書き出し、拡大構想を語る大塚さんの目は輝いていた」と振り返っていた▼2011年7月、「創業50周年感謝の集い」を盛大に開催。その日行なわれた記者会見で、「これほどの隆盛を築いた最大の要因は?」との質問に大塚実氏は、「病的なまでに不安感をもっていた」と語った。現状に満足せず、細心の注意を払い、用心深かった、と。「遠くで少しでも雲行きがあやしいと思ったら対策を講じた」▼先々週、原発事故をめぐって東電旧経営陣の無罪判決が言い渡されたが、右記の会見があったのは震災発生から4カ月後。被災地への支援活動についての質問に、「『想定外』という言葉はありえない。全て想定内でないと経営はできない」とも語った▼そのとき社長10年目を迎えていた大塚裕司氏への評価を尋ねる記者もいた。「将棋でいえば、『成り飛車(角)』。どの方向へも進める」。その高い評価どおり、ワンストップソリューションのプロバイダーへとさらなる成長を遂げている。
ドキュメント機器メーカーが持ち前の画像技術等を発展させ、医療やヘルスケアの領域に進んでいる。収益性が低くなったといわれる「オフィス」の分野から離れていってしまうのか?▼リコーが先般の決算説明会でヘルスケア事業についてのプレゼンに時間を割いた。「今後医療にどれだけ踏み込むのか?」と質問した投資系の新聞記者に松石CFOは「競合他社ほどではない。全方位的には考えていない」とこたえた▼脳磁計や脊磁計を開発するリコーは「アンメット・メディカル・ニーズ」というスタンスで取り組むという▼これは『いまだ有効な治療方法が確立されていない疾病に対する医療への強い要望』。「神経活動を可視化するメディカルイメージング技術とiPS細胞などを用いたバイオメディカル技術で、数千万人に及ぶ脳・神経疾患患者を救いたい」と▼医療現場の従事者に訊くと「今の技術は終末期の患者を延命するのにいくらでも介入できる」と、自然の摂理に対する行き過ぎを非難していたが、「アンメット」はいつまでも元気で働きたいと願う人々の要望に的確に応える取り組みといえる▼働く人に寄り添ってこそ産み出された技術ということであれば、こういうメディカル機器は広い意味で事務機業界の商材とはいえないだろうか?▼販売パートナーも共に貢献できる事業に育つことを望む。
(9月9日号)
ウエダ本社が毎年夏に開催する「京都流議定書」イベントが今年で12年目を迎えた(8月26日号に記事)。発足当初からこの催しに関わり、いつも開会冒頭でスピーチするのが門川大作京都市長▼最初の頃は「ウエダ本社さん、こういう催しをするのはいいけれど、本業のお商売のほうは大丈夫?」と冗談交じりで心配する言葉が混じっていたが、昨年あたりから聞かなくなった▼10年ほど前なら、事務機販売店に環境対策などを聞いても、「CSRとか我々には関係ない。ああいうのは大企業が取り組む話し」と無関心な声が少なくなかった。が、時代は変わった▼今年の京都流議定書のテーマは『SDGs×イノベーション×いい会社×働き方改革の本質を探る』。社会課題への取り組みとビジネスをどう両立させるのか議論が交わされた▼SDGs(持続可能な開発目標)については、「これが提示する17項目のどれ一つにも抵触せずに稼げるかが勝負だ」という意見や、「SDGsが画期的なのはバックキャスティングで発想する手法だから」という発言が印象に残った▼最初に目標を想定し、そこを起点に現在を振り返って今何をすべきかを考える方法。「頭がいい人は目的から逆算して仕事をするのだ」と▼頭がよくなくても、経営者も社員も「将来こうなりたい」ものを持つことが何よりも重要だと思われる。
(9月2日号)
社会人になって初めて外回りの営業を命じられたとき直属の上司からこんな助言をもらった。「商品を買ってもらおうなんて思うな。お客さん一人ひとりがどう断るか、その言葉を聞いてこい」▼明光商会の創業者・木禮二氏が著した『人を動かす力』(営業実践編)を手にとって、思い出した。この書には、「お客さんにノーと言われて引き下がってしまったら、その関係は修復できなくなる。そこでお仕舞いではなく、そこからが始まりなのです」と書かれている▼明光商会は今年創立60周年を迎え、7月に記念イベントを開催した(8月5日号に記事)。展示会場では、創業者が情報社会の到来を予見して機密文書を処理する解決法として開発した国内初のシュレッダー1号機から、今もトップシェアを誇る新製品のラインアップが紹介されていた▼とはいえ、近年は収益性が低く苦しい状況にあった。現社長の青木氏は長年の顧客基盤が重要な財産だと考え、働き方や体制を変革している▼『人を動かす力』が書かれた2002年頃の明光商会はセールスの最強集団として広く知られた。本書では十の力について詳説している。「選ばれる力」「胸襟を開く力」「商品の魅力を引き出す力」「勝ち残る力」「否定されない力」「協力してもらう力」「長く付き合う力」「相手を揺さぶる力」「継続する力」「逆境を乗り越える力」。
「保管文書だけでなく、現用文書も電子化した」。先日、ペーパーレス化を実行した企業を二社訪ねた▼A社が電子化した切っ掛けは、オフィスを以前よりも手狭なところに移転したため。社員数は変わらず机や椅子の数も同じ。紙を無くし、前と同じスペース感覚で仕事ができるようになった▼フリーアドレス制は採らなかったが、毎月くじ引きで社員全員が席替えをする。紙に縛られない働き方ができるようになると席替えを頻繁に行なうのも容易。部署に関係なく座席が変わることで気分もリフレッシュでき、社員どうしのコミュニケーションも活発に▼会議や話し合いでメモをとるときはタブレット端末の画面に手書きする。テレビ会議システムや電子黒板の使用も慣れた▼紙は全く存在しないのか? 複合機は設置されている。紙を出力することは滅多にないが、取引先からのFAX受信や外でもらった紙文書や名刺はスキャンする▼本の話しになって、おすすめの書物を紹介すると、「キンドルで読めるんだったら、読んでみたい」と▼金融機関のB社は、この春にC社と合併したことで積極的に電子化に踏みきった。C社は同業だが紙の使用量が以前からB社の三分の一もなかった。担当者は「積極的というより、なかば強制的」だと▼ペーパーレス化に本格的に取り組む動機や背景、刺激の受け方は各社各様。
(8月12日号)
今年の国際モダンホスピタルショウは会場の関係で展示面積が減ったが、それでも3百を超える企業や団体が出展し、約7万人が来場した。医療や介護は誰もが関わる領域であることを再認識した▼展示会場は6つのゾーンで構成。会場図をみると6色で表示されているので、「医療情報システム」ゾーンへの出展社が圧倒的に多いことが一目瞭然▼ここは「診療業務に関わる情報システムや医療機関の経営・管理の情報化・業務効率化をサポートする」商材が紹介されるゾーン。電子カルテなど医療や介護の現場での文書をどのように扱いやすくするかなどの提案が繰り広げられた▼身内の高齢者が体調を崩し、このところ病院や介護施設を頻繁に行き来するようになった。医師と話していて「ACP」という語を初めて聞いた▼ACP(アドバンス・ケア・プランニング)は、患者本人と家族が医療者や介護提供者などと共に意思決定能力の低下に備えて予め終末期の医療や介護について話し合い、本人に代わって意思決定する人を決めておく等のプロセス▼話し合いの都度、文書として残し、価値観を共有し、医療・ケアの方針を決める▼当事者間のコミュニケーションと文書作成を最善のものとするにはどうすれば?「医療情報システム」ゾーンに出展していたドキュメントソリューション各社への期待が高まる。
(8月5日号)
違いを楽しみ、力に変える≠ニいう標語を掲げて参院選に立候補したスリランカ出身の「にしゃんた」氏は、大学教授やお笑いタレントなど多彩な顔をもつ。大阪の激戦区を制することはできなかったが、外国人労働者が増加するなか、日本語の習得や異文化理解の苦労を身をもって体験した国会議員が誕生するか期待されていた▼記者が20年ほど前、京都で外国人の日本語学習を支援する活動に関わっていた頃、研修会の講師を何度か依頼した▼言葉の壁だけでなく日本の制度や社会、心に潜む壁について関西弁交じりの日本語でユーモアを交えて語ってもらった。名前をカタカナで表記しないのは彼ならではの主張があると聞いた▼世間やこの業界で多文化共生やダイバーシティが注目されるようになったのはここ10年くらいだと思われるが、日本語ボランティアの業界≠ナは20年前からキーワードになっている▼子どもの頃、母国でドラマ『おしん』を見て、昔の日本の「貧しさ」や主人公に共感。高校生のときボーイスカウトで来日、この国の「美しさ」に感激し、留学を決意。立命館大学在学中は朝刊夕刊の新聞配達アルバイトをしながら優秀な成績で卒業した▼日本での生活や仕事に夢や希望を抱く外国人が今後増える。選挙の投票率が低かったことを思うと、国民以上に熱意のある人たちかもしれない。
(7月22日号)
昨年本紙で事務機販売の現場を描いた小説『もう一つの沖縄戦』を紹介した(著者=新納昭彦氏)。その前は杉山大二郎氏の『至高の営業』『ザ・マネジメント』を紹介した。新納氏も杉山氏も販売の最前線を体験している▼これまで事務機業界の先達が自らの経験をもとに、ビジネス書を執筆することは多くみられたが、小説という形をとった書物は見たことがなかった。現実としてのビジネスと、フィクションの小説は相容れないものだと思っていた▼複合機メーカーを主対象として成長した技術派遣会社ジャパニアスの創業者、西川三郎氏は小説家としても知られ、著書『小説家の経営術』で「経営者には物事の全体を見渡す小説家的想像力が必要だ」と述べ、ビジネスと小説の共通点を浮き彫りにしている▼小説にもビジョンは大切だという。「登場人物の行動が強い動機と欲求に裏打ちされていなければならない」「ともに働く人々一人ひとりがもっているストーリーに想いを巡らして」▼小説家にとって読者は顧客。読後感は顧客満足度にほかならず、どのように感じてほしいのか、商品戦略や営業戦略の仕方(ストーリー)が決まっていく、と▼事実に基づいた小説を多数世に送った山崎豊子氏は、ノンフィクションの形をとらなかった理由を「フィクションのほうが真実が伝わる」と語っていたのを思い出した。
(7月8日号)
「アクティブ・ドキュメント」。JIIMA(日本文書情報マネジメント協会)の勝丸泰志理事長が考案した新語だと聞いた。先般のJIIMAセミナーの基調講演で勝丸理事長は「これまで文書情報マネジメントの対象は記録することに重きを置いていたので守り≠ェ目的になっていたが、これからはビジネスの現用文書にどう取り組んでいくか、攻め≠ェ課題だ」と訴えた▼行政手続きを電子申請に原則統一するデジタルファースト法案が5月に参院本会議で可決・成立し、「ワンスオンリー」(同一の情報提供は求めない)、「ワンストップ」(複数の手続きを一度に済ます)などITで処理することによって行政手続きの飛躍的な効率化が見込まれ、その次は民間の手続きにも拡大されると予測▼「企業活動の活性化やイノベーション創出に貢献するアクティブ・ドキュメント≠すすめていきたい」と▼そのためには、「ベンダーはユーザーの状況を把握・診断し、それに応じたコンサルティングやシステム提供が必要」と指摘した▼事務機ディーラーはユーザーがコピーやプリント、スキャンする枚数を常時把握している。これからが本格的な出番▼「ドキュメント」はこれまで、多いか少ないか、ボリュームの多寡を問うことだけに終始していた感がある。今後はどのように運用するかの意識が高まっていきそう。
(7月1日号)
米国でGAFAに対する監視や規制を強化する動きがあるようだが、日本の独占禁止法にあたる反トラスト法違反の可能性があるのかどうか。先日のJIIMA懇親会の来賓挨拶で土屋正忠前衆議院議員はGAFAの日本代表等にヒアリングしたときのことにふれた。「彼らは『我々はメーカーなのだ』と言っていた」と▼「我々は商品を売っているのだ。だから、価格を決めることができるのだ」と主張していたと▼IT企業は製造業になりたがっている? 一方、日本のメーカーは戦略発表などを聞いているとIT企業になりたがっているようにみえる▼「モノからコトへ」という標語がずっと前から言われているが、本心はモノづくりの会社としての誇りを持ち続けているメーカーが多いのではないかと思う▼エプソン販売の新社長に就任した鈴村社長は4月のお披露目会で、モノもコトも重要だという趣旨の発言をしていた。「これからはモノの価値をコトの価値に翻訳する必要がある」と▼これまでは単体としてのモノの価値だけを訴求していたために顧客に価値が届いていなかったという反省を踏まえ、新しい売り方に挑む▼エコロジーへの貢献、サブスクリプションなど新しい形のサービス提供…▼ユーザーが満足して使い続ければ、周囲から監視されたり規制されたりすることなく堂々と商売できる。
(6月24日号)
「売る」とはどういうことなのか?それを考え抜いてビジネス書など手掛けるお笑い芸人 兼 絵本作家がいる。ブラザー販売のイベント「BWJ」の講演会で西野亮廣氏は「買う側の立場に立って考えた」と語った▼自分自身を振り返り、買っているものは食料や冷蔵庫など生活必需品。その次に何を買ったか、部屋を見まわすと、観光地のペナントや神社のお守りなどお土産品を購入していた▼「人は、旅したときなどの思い出として残る、自分の体験と結びついたものにお金を払う」ことに気づいた▼それをもとにそれまで売れなかった絵本の売り方を変えたら驚くほど注文がとれた。また、絵本は一人で作るものだという従来の常識に疑問をもつようになり、「大勢でもっといいものを作りたい。どうすればいいか?」。そこでお金とは何かを考える▼「芸能人は、SNSに投稿すれば数多くの反応を集めるが、クラウドファンディングを募っても上手くいかない。なぜなら彼らはCMなどで自分の本心でないことを口にするから」▼「クラウドファンディングを『お金を集める装置』だと思ったら失敗する。お金に両替する機械なのだ」▼お金とは信用を数値化≠オたものだという。「これからは、人から信頼される人が居心地よくなる時代になる」▼令和がそんな時代になれば平成より確実に進歩することになる。
(6月10日号)
スポーツや芸術、そして、ビジネスの分野でも、技術面だけでなく精神面でも成長する人は専属のトレーナーのような存在が大きいといわれる。自分と相性のいい上司やコーチから受ける適切な助言は有難い▼アックスコンサルティング社は入社式で新入社員に向けて「人生に成功するためには4人のトレーナーを付けよう」というメッセージをおくった▼4人とは、「厳しく叱咤激励してくれる鬼軍曹」「やさしく励ましてくれるマザー・テレサ」「陽気で楽しく応援してくれるチア・リーダー」「冷静沈着に物事を見つめるエジソン」▼夜寝る前に「明日はどのトレーナーと一緒に過ごすか」を決めておけばいいという▼入社して1週間くらいは「マザー・テレサ」と「チア・リーダー」と過ごし、1ヵ月くらいしたら 「エジソン」や「鬼軍曹」の視点が重要になる、と▼1ヵ月の中で必ずどのトレーナーとも会い、これを3ヵ月繰り返せば 習慣化されて自然とできるようになるという▼独学で比類のない奏法を編み出し、不世出のギタリストと呼ばれたアンドレス・セゴビアはこんな言葉を残している。「自分の身体の中に、良き先生と、その先生の言うことを素直に聞き続ける生徒がいた。この二人はずっと仲良く過ごすことができた」▼他者の声を聴くのは強くなれるチャンス。自分の中に他者がいる人はもっと強くなれる。
(6月3日号)
東芝テックのビジネスパートナー会総会でMFP部門の鈴木会長は平成の時代に起こった大きな出来事はベルリンの壁が崩壊したことだと指摘した。たしかに、これによって世界各国がグローバル競争に巻きこまれ経済が大きく転換した▼リテール部門の恒成会長は平成の前半と後半で消費の潮流が逆転したことにふれた。「情報機器はパソコンのように職場で導入されたあと一般消費者の生活面に浸透していったが、後半はスマホやSNSなどように逆になった。買う時代から借りる時代に」と▼令和の時代を迎え、私たちの働き方や暮らし方は今後どう変わっていくのだろうか。少子高齢化がすすむ日本社会。企業経営は厳しくなり、非正規雇用、定年延長と、70歳を過ぎても働いている人は平成の前半は少なかった▼政府は社会保障の充実を図っているが、医療費の増加や介護の長期化など心配事は絶えない。健康寿命を延ばし、生活水準を下げずに暮らしていけるのか▼令和の時代には「2025年問題」と「2040年問題」がひかえている。団塊世代が75歳を超えるのが2025年。40年はそのジュニア世代が高齢化し、彼らを支えることが非常に困難になっていく▼事務機業界ではこうした社会課題に向き合おうとする企業も出てきている。今後の日本を元気にすることが最大のソリューションとなる。
(5月27日号)
コニカミノルタが今後のオフィス事業戦略の説明に加えて発表した新世代複合機「ビズハブi(アイ)シリーズ」の「i」は「iゼネレーション、ポストミレニアル世代」から採られたものらしい▼1995年以降に生まれ、これから令和の新しい時代のビジネスを支えていく、こうした世代のデジタルネイティブの感性に呼応し、オフィスにおける新しい価値を提供することを「i」に象徴させた≠ニいう▼記者会見では「ここには一人もいないでしょうが」との発言があり、笑いが巻き起こったが、これからのオフィス環境の変化を表した予想図を見て、笑っている場合ではないと思った▼多人数の社員が一つの事務所で執務を行なう一般的なオフィスが減少し、どこでも働ける<Xモールオフィスやコワーキングスペースにシフトしていくと、モバイルの個人端末は需要が高まるが、複合機は減っていくという予測▼場所や時間に縛られない働き方≠ヘ、やがて、組織に縛られない働き方≠ノすすんでいきそう。欧米では一人で起業する「マイクロ法人」が増えているというデータもある▼SOHOビジネスを営む身近な知人は「小さなプリンターとスキャナがあれば事足りる」と言う▼とはいえ誰もが高度なITを駆使できるとも思えない。新世代複合機がデジタルネイティブに重宝されることを期待。
(5月20日号)
「IWB」。少し前までは何の略かすぐに分からなかったが最近は「インタラクティブホワイトボード」だと定着してきたかんじがする。電子黒板が進化し、オフィスや学校で昔ながらに使われている黒板やホワイトボードでは叶えられない効率性を実現する▼とはいえこのIWB、展示会や会見では頻繁に目にするけれど、実際のユーザーの現場にはそれほど導入されていないらしい(前号の1面記事)。2018年の国内市場は1万6千台▼IWBはパソコンの画面を表示できるタッチセンサー搭載型のディスプレイ。パソコンや端末の情報をディスプレイに表示したり、情報を表示した画面に直接手書きで書き込みができるほか、ディスプレイに映された内容をデータとして保存することもできる▼また、複数のIWBをつなげば遠隔地同士で情報を共有することができる。会議や授業、ディスカッション、共同作業時に効果的なツール▼こうした、これからの「働き方改革」では主役になりそうな存在であるのに、なぜ優れた機能や操作性が多くのユーザーに普及しないのか▼以前、プロジェクターの営業員が「コピー機のように一部署に一台ずつ使っていただくことを目指す」と抱負を語っていたのを思い出したが、事務機販売者は画像機器の魅力を伝えるのは得意でも、映像商品を扱うのは苦手なのか?それとも。
(5月6日号)
新天皇即位の祝賀ムードを高めるのが狙いで実施された10連休。240時間も仕事から離れて、今、緩んだ気持ちを元に戻すのに苦しんでいる人もいるかもしれない▼10日間も休息を与えられた人はホワイトカラーと呼ばれる職業の人たちだけかも▼サービス業に携わる人たちの話しを聞くと、この大型連休のおかげでてんやわんやの忙しさだったという▼OA業界では昨今、「サービス業への転換を図る」と叫ぶ声が聞かれるようになったから、ゆっくり休んだ人はあまりいなかったのでは▼とはいえ、業界が提供するソリューション商材の多くはホワイトカラーの生産性を高めるためのものが今も主流だと思われる▼一般的なビジネスパーソンの日ごろの業務を精査し、非効率な働き方をしていないか、その解決方法が進化する▼某メーカーの調査では、普段オフィスで必要な資料を探し出すために費やされる時間は1年間に150時間にもなるという。「この無駄を省いて、ホワイトカラーのお客様の生産性を高めることが当社の責務です」▼前述のサービス業者に、改元で商機をつかんだか聞こうとしたら、「我々ブルーカラーには10連休も働き方改革も関係ないわ。休める日が少なくて」と▼サービス業への転換を機に、一般的なビジネスパーソンではないワーカーにも効くソリューション提案が急がれる。
(4月22日号)
新しい元号が発表され、まもなく平成が終わり、「令和」の時代が始まる。元号の制度を現在も用いているのは世界中でも日本だけのようで、この二文字が発表された瞬間、新しい時代の幕開けを感じた人は多かったのではないかと思う▼この業界も、二つの文字で表される、一時代を象徴する語があった。それは「OA」▼小紙では現在も「OA年鑑」を発刊しているが、かつては「OA時代」というタイトルの冊子を毎月発行していた。昭和50年代後半ごろの冊子をみると、ほとんどすべての記事や見出しにこの文字がひしめき、OA花盛りだった頃をうかがわせる▼この業界はOAの他にどんな元号≠ェあったのだろうか? 大塚商会の事業の歴史を拝見すると、1980年ごろから1990年の初めごろまでの期間、OAの大塚商会≠ニいうキャッチコピーを標ぼうしていた▼その前の1970年代はCOFの大塚商会=BCOFとは、コピーマシン・オフィスコンピューター・ファクシミリの略。1960年代は複写機の大塚商会≠セった▼OA≠フ次はトータル・アンド・ワンストップ、ソリューションプロバイダの大塚商会=・ユーザーニーズの多様化や商材・提案内容の複雑化でこうした文言になるのだろうが、昭和や平成のように広く馴染むには二文字くらいの単語がほしいところ。
(4月8日号)
新入社員を迎える季節。人手不足が深刻化するなか、せっかく採用した人材がすぐ辞めてしまうことがないようしたい。この業界では「人材」ではなく、「人財」だと表現する企業が少なくない▼テレビ東京の番組『Newsモーニングサテライト』に「リーダーの栞」という各界のリーダーが愛読書を紹介するコーナーがある。先月、ブラザー工業の佐々木一郎社長が登場した▼佐々木社長が座右の書として読み返しているのは心理学者キャロル・ドウェットが著した『マインドセット』。この本に書かれている「人間の能力は努力しだいで伸ばせる」に影響を受けたという▼佐々木社長が日ごろから重要だと考えているのは社員の育成。社員を褒めるとき「元々備わっている才能を褒めるのではなく、その人の努力を褒めることが大事だ」と▼生まれつきの性質や資質を褒めたら、「その人の成長は止まってしまう」▼同社では上司と部下が一対一で向き合うミーティングを実施している。自分を振り返り、話のネタを考える訓練を積んでいる▼「相手の努力を理解しないと褒められない」「褒めるとは理解すること」「ビジネス全体を理解する人間に育てること」「これらはビジネスを順調にするためにとても大切」であると▼努力は陰ですることが多いから、見えにくい。努力を続けること、それ自体が凄い能力だと思う。
(4月1日号)
「働き方改革EXPO」や「オフィスサービスEXPO」など8つの専門展で構成する「総務・人事・経理ワールド」。今年の東京展の開催時期が去年までの7月から5月に変更されることになった。オリンピックを控えて会場の東京ビッグサイトの一部がメディアセンターに改装され、今年の4月から利用制限が始まったため▼そうした状況だが、今年は出展社がさらに増加する傾向にあるという。「昨年、多くの受注に繋がった」との評判を聞いて新たに出展を希望する企業が増えたらしい▼主催のリードエグジビションジャパンは「出展企業のPRではなく、売り上げ拡大に貢献することを使命としている」と先月行われた出展社向けの説明会でポリシーを語った▼説明会では、来場者の動員の方法から開催当日のブース設営まで懇切丁寧に準備のための心構えを伝授していた▼ブースでは「テーブルとイスを用意し、座って商談」することが大事であると。「ブースは自分のオフィスと同じ。訪ねてきたお客さんと立ち話していて商談が進むと思いますか?」▼他の展示会などを見ていると、ブースの周りでコンパニオンのような出で立ちの人たちがチラシを配って勧誘している風景があるが、「こういうのは遮断しているようなもの。お客は入りにくくなる」▼このEXPOには弊社も出展する。その極意を教わった。
(3月25日号)
今年の「OA年鑑」のテーマは働き方改革、第2ステージへ=Bワークスタイルを変革することで時間やコストを削減し、生産性を向上する取り組みが「改革」というキーワードになって5年以上経過、次の段階に入ったと思われるOA業界の動きを取り上げた▼先月東京オフィスをリニューアルしたブラザー販売がオフィス環境を刷新した理由について「働き方改革をさらに進めるため」だと説明した(2月25日号に記事)▼同社では8年位前から仕事と生活を両立させるワークライフバランスや自律的に自分の仕事と生活を管理するワークライフマネジメントを提唱し、教育制度の充実や子育て・介護両立支援などに取り組み、1人当たりの年間労働時間を削減、有給休暇の取得率も上昇した▼しかし、これらを達成しても、働き方改革の第1の山≠越えただけで、これから第2の山を登る必要があるのだという▼社員に満足度のアンケートを実施したところ、仕事を効率化してもやりがい≠ノは結びついていないという問題が浮上し、「人財活性化プロジェクト」を立ち上げて取り組んでいる▼働きやすい環境を整えることと物事に取り組む心の張り合いはイコールではなさそう。この業界が今後も提供していく数々のソリューションが働く人のモチベーションにまで影響を与えられるか。やりがいは充分ある。
(3月11日号)
グッドデザイン賞を受賞したエプソンのライティングモデルのプロジェクターや先日富士フイルムがこの市場に初参入すると発表した新製品は、まず形がユニーク。これらの斬新なデザインを見ていて、プロジェクターが新しい時代を迎えたような印象を受けた▼「これまでのプロジェクターはいかにも機械といったかんじで、邪魔な存在だった。でも、これはオシャレでカッコいい」。新しいものが出たら過去の商品が古臭く見える、そんな感想を先日聞いた▼エプソンのは、同社の複合機の展示をあるフェアで見たとき、印刷時の紙の搬送の様子が本体の表面に投影されていて、映像に見入っていたため投影機の存在すら意識しなかったが、いったいどこから投射されていたのか▼富士フイルムの発表会では「プロジェクターの需要はここ数年伸びておらず、その理由は、新たな設置・用途が広がっていないため」と説明していた。様々な方向へ自在に投写できる機能が求められている、と▼両社の製品とも商業施設などのサイネージ用途を主なターゲットとし、「空間演出」という新しい市場を開拓しようとしている▼1月に紹介したマルゼンは内装工事を展開していくなかでオフィスよりも店舗のほうが高収益につながると報告していたが、経費としてよりも投資と捉えるユーザーのほうが導入に積極的だと考えられる。
(3月4日号)
昨年5月に著作権の大きな法改正がいくつかあったと日本複製権センターのセミナーで聞いた。一つは、デジタル・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定。インターネットで文章や画像を簡単に手に入れて加工や発信もできるようになった社会で、ビジネスにどう対応していくかという観点▼もう一つは、教育の現場。全国の小学校や中学校から補償金を徴収する制度が構築され、徴収する機関もこのほど設立された▼例えば学校の授業で教師が新聞記事や現代小説の一部をコピーして副教材に使った場合、著作権を利用したということで支払が必要になる。これまで日本の教育機関は世界各国とは違って支払を伴わない権利制限があり特殊な地位を保っていたが、その例外がいよいよ解消されることになった▼教育の現場でこうしたルール≠ェ認識されるようになると、学校だけでなく社会全体に広がっていくと期待できる▼コピーやスキャンする装置は私たちの業界が扱う情報機器。これまで理科の授業で複写機の仕組みを子供たちが興味津々の眼差しで説明に聞き入る光景を何度か取材したが、これからは社会や国語の授業で機器の正しい℃gい方を学ぶ機会が増えるかもしれない▼新聞記事をコピーして人に平気で配る大人が多いが、これからはマナー≠身につけた子供たちが社会に出ることになる。
(2月25号)
オンデマンド印刷で付加価値を高め、さらに大量注文にも迅速に応じ、しかもその事業は素人でも参入できるという。前号で記事掲載したイメージ・マジックとブラザー販売の提携によるTシャツプリントの作業現場は、印刷革命と物流革命が同時に起こっていた▼イメージ・マジックは、アパレルグッズのカスタマイズECサイトや縫製アイテムに対応したオンデマンドサイトなどwebを活用したモノづくりサポートを展開している▼同社の山川社長は「在庫を限りなく減らし、無駄なものを作らないようにするには、『ネットを使った受注システム』『クラウドの生産管理システム』『それに適したプリンター』の三つを揃えることが必要不可欠だ」と語った▼ブラザーのガーメントプリンターが加わることで新たなプリントソリューションを構築した。顧客から注文を受けて、印刷〜折り畳み〜袋詰め〜出荷と一貫した作業が素早く、かつ誰がやってもミスなく作業できる▼さらにプリント会社同士をネットワークでつないで、大量受注が発生したとき円滑に生産を行なう体制も準備。10年前のワールド・ベースボール・クラシックでイチロー選手が決勝打を放って優勝したとき、記念Tシャツは約5万枚が間に合わず販売機会を逸したという▼機械と情報システムとのコラボレーションが功を奏する時代が幕開いた。
(2月11日号)
以前富士ゼロックスの広告を見てギョッとしたことがある。複合機が人の手のひらにおさまっているのである。その小ささはまるでカードか電卓かスマホのよう▼電卓は登場したころ重量が20〜30kgもある大型の商品だったが、その後は技術革新でコンパクト化が進み、超小型・薄型のカードサイズに、さらには携帯電話の中に組み込まれるなど、事務機ディーラーの飯の種ではなくなってしまった▼「まさか複合機もそういう運命をたどるのか?紙に印刷する機械がそうなるはずはない」と広告は冗談だと思っていたが、平成最後の年明け、複合機はとうとうスマホになってしまった▼リコーが年初に発表した新世代複合機は、様々なソフトやアプリと連携し、機能が自動的に更新され拡張し続けるサブスクリプション方式のビジネスモデルを展開するという、まるでスマホのような商品▼手のひらサイズに小型化したわけではないが、操作パネルが全てタッチパネルになったのを見ると「スマホ化」したといえそう▼過当競争によって随分前から複写機ビジネスの収益はダウンサイジング≠オ続け、「消え入ってしまうのでは」と悲観する人は少なくないが、このような新世代商品の登場は起死回生の一手となるか?▼ビジネスモデルはガラッと変わるのか?顧客接点力が大切なのはこれからも変わらないと思う。
(2月4日号)
新年に開かれたいくつかの集まりでのスピーチを聞いて、価格競争による疲弊が限界にきていることを痛く感じた。本紙ディーラーアンケート(1月7日号)でも、業績が低迷した理由の第一に「過当競争のため」があがっていた▼前よりも優れた製品を作って販売しようとしても、前と同じか或いはもっと安い価格をユーザーが要求してくるので、作る人も売る人も遣り甲斐を持てない状況が続く▼関西リコー会の土田博幸会長は「我々の仕事は、オフィスの生産性を高め、働き方改革をサポートし、お客様企業、社会、地域に貢献する、誇りをもてる業界である。それなのに、正当な評価を得ていない」/大阪文紙事務器卸協同組合の松本理事長は「業界の商売はコンピュータ屋にやられっぱなしで元気がない」/大阪グラフィックサービス協同組合の岡理事長は「製造コストをおさえても、安く売っていては社員の努力に報いていないことになる。大阪人はものの値打ちを高く見せる京都人を見習うべき」/近畿ドキュメントサービス協同組合の河村理事長は「お客様に提供するものは『モノ』ではなく『サービス』であることを真剣に考える時が来た」と訴えた(1月28日号)▼昨年は「進化する」というメッセージが多かったと記憶している。努力が報われるビジネスモデルが今年中に進展することを願う。
(1月28日号)
今年のOAディーラーアンケート(1月7日号)では「2018年の業績はいかがでしたか?」という問いに対して、増収と答えた企業は前回の四分の一に減り、減収は倍増だった▼先月、業績悪化から立ち直った会社経営者の話しを聞いた。船井総合研究所が開催したセミナーでマルゼンの比嘉社長は「2014〜15年、二期連続赤字で経営危機に直面し、毎日忙しいのに儲からない状況に陥った」と苦しかった頃を振り返った▼「利益がとれず薄利多売の商売をし続け、時間的にも精神的にも余裕がなくなり、思考が停止した。負のサイクルから抜け出せなかった」▼地元の経営者勉強会で「あなたは足元の千円ばかり必死で拾っている。少し先に百万円があるのに何故そこに目を向けないんだ?」と言われ、従来の事務用品を捨て、オフィス空間創りに集中することを決断した▼内装工事業に業態を変えたことで、営業マン1人当りの年間粗利が3年で1・8倍に増加し、さらに生産性も向上、18時には全員が帰社できる体質になった▼船井総研の支援でホームページを活用し年間120件の新規物件問合せが入ってくる仕組みを作り、物件を無競合で受注できるノウハウも獲得した▼業績が落ち込むと、つい下を向いてしまいがち。顔を上げるとマルゼンのように視界が広がって新しいことにチャレンジできる。
(1月21日号)
今年も業界の各団体や企業のトップの方々からの「年頭所感」を頂戴した。時代の流れを捉え、課題を認識し、今後の抱負が記されている▼JBMIAの山下会長は、「働き方改革や外国人労働力の増加、環境配慮など企業が対応すべき課題はたくさんある」と指摘し、「これらに関連する新しいビジネスの拡大を図っている努力を一層払わなければならない」と発信▼日本文書情報マネジメント協会の高橋理事長は、「本年はデジタル化の利用が官民ともに飛躍的に伸びようとしており、当協会はその加速を図るとともに、派生するビジネスチャンスの発掘に向け取り組む」と明言▼日本ドキュメントサービス協同組合連合会の森下会長は、「従来と異なる業界づくりを目指す者にとって、大きな変化がもたらされる年となりそう」と予測。複写も印刷も、業務領域の境界が消えつつあるのは、「AIやIoTなどインフラがデジタル化していく大きな流れに飲み込まれるから」であると▼業界や業種の存在感が薄れるなか、「新しい時代のニーズは、業界が決めるのではない。顧客の要求にいかに的確に応えるかが今後のビジネスの本質」▼そのニーズを「取り出す」のに大切なものは「営業力」と「経営姿勢」であると▼今年も多くの方々とお会いする機会があると思う。とくにこの二つを意識して取材にのぞみたい。
(1月7日号)
今年は元号が変わるということで世の中も大きな節目になるのではと予想される▼昨年、東芝テックのビジネスパートナー会で鈴木会長(鈴弥洋行会長)は平成の30年間を振り返り、「グローバル社会、ネット社会と、日本の数多くの仕組みが壊れ、常に変革しないと、衰退し淘汰される、激動の時代だった」と語った。「IoTやAI、RPAで変化のスピードが加速している」と▼小紙「日本事務機新聞」は今秋、創刊50年を迎える。ほぼ同い年≠フ事務機販売会社や業界紙も多く、OA(オフィス・オートメーション)という語が普及したのも約半世紀前▼当時は電卓や複写機、ワープロなどのOA機器がビジネスの現場の生産性を向上させるという価値を提供したが、今のデジタル化は当時の将来予想を超える技術革新が日々進んでいるように思う▼OA化がもたらした効果をさらに超えて、これからの企業活動は顧客やパートナーにどんな価値を提供していくのだろうか?▼映画「男はつらいよ」が誕生して50年を迎え、今年はシリーズ50作目が新たな技術で製作されるという。製作現場を指揮する山田洋次監督は「自由に生きることがどんなに素晴らしいかを今回のテーマにする」と話す▼「今の世の中、一見由そうみえて、そうではない」と。働き方改革に挑むこの業界もテーマは同じかもしれない。
(12月24日号)
「早いもので今年もあと僅かですね」「ほんとに。時の経つのが早くて」。このような会話はどこででも交わされていそうだが、時間の流れを普段より遅く感じる人もいる▼今年も自然災害をはじめ不慮の事故などで家族や友人を急に亡くした人は少なくない。先日、「ひと月が三倍くらいに感じる」という知人の心情を聞いた▼時間は物理的には誰に対しても平等のはずだが、感じ方は人によって異なる。仕事のうえでは無駄な時間を省きたい▼今年は労働時間短縮についての議論が続いたが、先日の「働き方改革EXPO」のコクヨのブースでは、オフィスで書類を探す時間が一人あたり一日平均で約20分かかっているとの調査結果を伝えていた。1年間に換算すると約80時間。無造作に書類を積み上げたりする悪習慣を検索ツールを使ってワークスタイルを変える手法を訴求していた▼最近話題になっている代用貨幣トークンでは、個人の時間の価値を評価しあうビジネスが展開し始めている▼コニカミノルタジャパンが提供する「いいじかん設計支援サービス」では、時間というものを、@「作業じかん」、A「創造じかん」、B「自分じかん」の三つととらえ、@を減らすだけでなく、AとBを増やすためのサポートを行なっている▼時間の過ごし方は、企業よりも個人のためにと考える意識が今後高まりそう。
(12月10日号)
025年の万国博覧会が大阪で開かれることが決まった。開催テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。サブテーマとして「持続可能な社会・経済システム」、「個々人がポテンシャルを発揮できる生き方と、それを支える社会のあり方を議論する」などの言葉が掲げられている▼大阪府の松井知事は「昭和45年の大阪万博は国威発揚型の展示会だったが、2025年は参加体験型に、そして、それぞれの地域の課題を解決するイベントにしたい」と抱負を語り、先端技術に携わる識者は「未来社会の実験場」「会場をロボットだらけにしたい」と意気込んでいる▼7年後、どんな未来社会が描かれるのか?周囲の人たちに意見を聞くと、「今の働き方改革がどのように収束するのか?」「SDGsは実現しているのか?」「事務機ビジネスは残っているのか?」など、年配の人たちに尋ねたからか、不安めいた声が多かった▼「昭和39年の東京オリンピックと45年の大阪万博を経て、日本人のライフスタイルはガラッと変わった。2025年以降はさらに今とは全く違う世の中になる」という意見には、期待と不安が入り混じっているように思った▼筆者としては、業界のフェアなど展示の仕方が万博の影響を受けて変わるような気がするが、それ以前に、7年後の自分自身がどうなっているのか、それが一番心配。
(12月3日号)
外国人労働者受け入れ拡大の法案をめぐって国会での審議が紛糾し、外国人を労働力としてだけではなく「生活者」として捉えることの重要性が指摘されている▼先月のリコージャパンのイベントでは、仕事と生活の両立・充実≠ェテーマの中心に据えられ、「ワークライフバランス」が強調されていた▼先日、中国帰国者を支援する団体から発足30周年の記念誌をもらった。そこには、30年前に帰国して苦労を重ねた残留孤児2世の方のこれまでの振り返りが記されていた。「仕事を探すためハローワークに行ったが、日本語が話せないという理由で障がい者窓口に案内され」「相談する人がいなくて、一人で悩み」
「これから私はどうなるのだろう?」…▼そのあとNHKで3世の若者が苦悩を吐露するドキュメンタリーを見た。「子どもの頃、親には授業参観には絶対来てほしくなかった。日本語を話せない親がいることがバレるから」「日本にいれば中国人だと言われ、中国では日本人と言われ、私には居場所がない」…▼1世・2世の人たちを苦しめたのは、戦時中の日本の軍事政権やソビエトの満州侵攻、日中の国交回復が遅くなった国際情勢などだが、3世を苦しめているのは現代の日本社会ということになる▼ワークとライフのバランス∴ネ前に居場所≠持てるダイバーシティの取り組みが急がれる。
(11月26日号)
設計・製造の展示会「ものづくりワールド」では、見える化≠ナ生産効率を上げる技術が多彩に実演されていた。「工場関係のイベントって、こんなに華やかだったっけ?」と戸惑う来場者の声を聞いて、ある企業が「もう黒子ではない」とPRしているテレビCMを思い出した▼とくに目をひいたのが、VRとAR。どっちがどういう意味だったか、ネットを見て確認したら、VRは仮想現実(バーチャルリアリティ)、ARは拡張現実(オーグメンテッドリアリティ)▼VRはヘッドマウントディスプレイを装着して、現実に似せて創り出された仮想の作業空間に、あたかもそこにいるかのような感覚で体験できる技術。ARはスマホやタブレットの画面に現実の作業現場を映し出してCGなどで作った映像を重ねて拡張する技術▼違うところは、VRが仮想世界に入り込むのが目的なのに対して、ARは現実世界が主体ということになるらしいが、いずれもこうした技術が様々な現場で本格的に導入されるようになってきた▼さらにMR(複合現実=ミックスドリアリティ)という技術もある。立体3Dなどで作られた仮想世界や物体を現実世界に投影してカメラやセンサーなどを用い、投影された物体に近づいたり触れたりする操作ができる▼こうした進化で、ものづくりの現場で誰もが主役になれる時代がきた。
(11月5日号)
大ニュースとして報じられたトヨタとソフトバンクの提携。AIを駆使した自動運転によるライドシェア(相乗り)や、商品を届ける無人コンビニ、介護や医療のサポート、オフィス空間の提供など、あらゆる次世代サービスが想定され、モビリティー(移動)がこれほど新たな可能性を秘めたビジネスなのかと驚嘆する▼提携の発表会見で豊田社長は「百年に一度の大改革」「量から多機能へ」などのキーワードを述べた▼一方、自動車とともに日本の誇る産業とされる複合機はどんな未来があるのか。ジアゾ複写機の時代から数えると、こちらも百年近い歴史があり、これまで様々な進化、多機能化を遂げてきた▼文書の作成、管理、デジタルプリントなど、情報を表現し伝達する手段としてのドキュメントサービスにも明るい将来像が描けるはず▼「ビヨンドMFP」、「プレミアムMFP」など、今後を期待する声はこの業界でも叫ばれている。孫会長が会見で語った「ついにこの日が来たか」という言葉が事務機業界で聞かれるのはいつの日か▼以前、ある小企業に複合機が納品される場面にいたことがある。車好きの社長がこんなことを口にした。「軽乗用車と同じくらいの値段やなあ。このコピー機は走らへんのか?」▼冗談で言ったらしいが、ユーザーの突拍子もない要望が業界変革のヒントになるかもしれない。
(10月8日号)
日本経営協会(NOMA)による「ファイリング・デザイナー検定」「電子ファイリング検定」「公文書管理検定」の今年の下期試験が11月21日から実施される(前号に記事)▼内部統制やコンプライアンス、アカウンタビリティ、個人情報の管理を適正に行なう文書管理において、これらの検定はそのエキスパートを育成・認定する▼企業経営にとって極めて重要な課題解決の手段だが、平成13年をピークに受験者数が減少している。その一番の要因はドキュメントソリューションの業界人による受験が一巡したためらしい▼業界のその先にいる「一般企業のユーザーにも受験してもらいたい」とNOMA検定事務局は認知度アップを目指している▼近年は検定や資格試験への関心が薄れているという。就活は売り手市場であるし、働き方変革やAIの時代になって過去の知識は役に立たないのではと軽視する風潮さえ感じられる昨今。異分野と接触してこれまでになかったアイディアを考え出すことが優先され、基礎から積み上げて学ぶ努力が置き去りにされてはいないか▼「ファイリング」の本来の目的・目標は、業務に役立つように分類・整理し、会社を良くすること。書類が紙から電子に変わっても本質は変わらない▼この価値をドキュメント業界だけにとどめず、訪問先の顧客にも伝えていただきたい。
(10月1日号)
カシオ計算機・樫尾和雄会長の「お別れの会」の会場でTBSテレビの取材を受け、かつての電卓戦争≠ノついて話した▼1960年代の後半から70年代、参入企業が50社を超え、熾烈な開発競争・価格競争が繰り広げられた。小紙の創刊者・藤本忠男は樫尾和雄氏と頻繁に情報交換していた。同じ昭和4年生まれということもあって親しい間柄だったと聞く▼1972年、樫尾氏は「カシオミニ」を世に出し、大ヒット。商品企画・価格決定・流通構築・プロモーションを主導し、事務機だった電卓のパーソナル化・コンシューマ化に成功した▼この頃、「マーケティング」という言葉はなかったが、いま振り返ると名マーケッター≠セったといえる▼「1行で伝わる商品は売れる」との信念をもち、考案。テレビCMで流れた答一発≠ヘ五十歳以上の日本人なら誰もが耳に残る、忘れえぬフレーズ▼社名に今も「計算機」の言葉があるのは業界の内外に与えた衝撃があまりにも大きかったことによるのではないかと思われる▼後を継いだ樫尾和宏社長は「ゼロから1を生み出すのは発明だが、それを10に、100へと広げて定着させるのはマーケティングの力」だと参列者への御礼の言葉のなかで述べた▼マーケティングが市場創造にこれほど威力を発揮する活動なのだと思えば、やりがいはさらに高まる。
(9月24日号)
著作物の複製についての権利を管理しているJRRC(公益社団法人日本複製権センター)が先日、「電磁的複製許諾に関する事前説明会」を開催した。「電磁的複製」とは、複合機やスキャナ、カメラを使って新聞記事など出版物をPDFやJPGファイル(電子ファイル)に生成・複製する行為▼これまでの許諾範囲は、紙から紙への複製(コピー機での複写)とファクシミリ送信だけだったが、この秋からは著作物をスキャンした電子データの複製にまで範囲が広がる▼説明会にはアナログ(紙)の利用許諾契約を以前から結んでいる企業の担当者が大勢来場した。「この(新たなデジタルの)契約は必ずしなければならないの?」という質問があったかと思えば、「世の中はすでに電子化が進んでいるので皆、契約すべきだ」などの発言もあり、活発な意見交換が繰り広げられた▼そんななか、「海外の使用料金はいくらくらいなの?」という質問に対してJRRCが答えた各国の状況を聞いて、そのケタ違いの大きさに驚いた。英国は日本の18倍、フランス14倍、ニュージーランド16倍、ドイツ35倍、韓国5・5倍…▼日本の著作権に対する認識の低さを改めて痛感するとと同時に、新聞を発行する立場としては早く海外並みになってほしいと思った▼記事をスキャンしてメールで送らず、ぜひご購読をお願いします。
(9月10日号)
今年の「京都流議定書」イベントのテーマは「Teal(ティール)組織」だった。フレデリック・ラルーという著者が書いた同名のビジネス書はベストセラーだそうだ▼この日のパネルディスカッションでは、訳者(嘉村賢州氏)が「6百ページもの書物を翻訳していて何度も折れそうになった」と言うし、他のパネラーは「今日は約2百人が来場しているが、たぶん5人くらいにしか理解できないだろう」と脅かすので、記事が書けるか心配しながら聴講した▼Tealとは色のことだそうで、ブラックでもホワイトでもなく、青っぽいような緑っぽいような、生命がうまれる海の色ともいわれる▼ディスカッションを聞いて、分かったような分からなかったような気分になったが、パネラーの一人、武井浩三氏が代表を務めるダイアモンドメディア社の状況が紹介され、イメージがわいてきた▼「うちの会社は決め事も、営業目標も立てない」「社長役員は投票で決める」「上司部下の階層がなく、命令しない」「肩書は自分で決める」▼こんなやり方で企業は本当にうまくやっていけるのだろうか?▼自由すぎる社風にみえるが、「意識の低い社員は自然と辞めていく」という▼「自然(じねん)経営」「マネジメントの常識を覆す次世代型組織」と言われるラルー氏著・嘉村氏訳の書物を手に取ってみたくなった。
(9月3日号)
先日の「OKIソリューションフェアin関西」では、昨秋の東京、2月の名古屋でのフェアに続いて新技術によるソリューションが多数紹介されていた。「OKIのイノベーション創出の取り組み」と題した講演会も開かれた▼同社は今年の4月から社会や顧客の課題を解決し、夢を拓く$Vたなイノベーション創出活動「YumePro」(ゆめぷろ)を開始した。社内にイノベーション推進部を設け、顧客から相談を受けてワークショップを行なうなど短期間で事業化を進める体制を整えた。ホームページにサイトも開設している▼「仮説を立てて、現場へ行く」ことが新たなビジネスモデルを生み出す要諦だという。他者の意見を聞き、膨大な仮説やアイデアを出す▼これらがヒットする確率は0・5%以下だそうで、そうなると「200以上出さなければ課題解決できない」と▼早稲田大学ビジネススクールの入山章栄氏によると、イノベーションは、「近い知」と「遠い知」との組み合わせで起こるのだという。「遠い知」とは、普段の自分から遠いところにある、偶発的な情報との出会い▼慌ただしく忙しい毎日。知りたい情報はついネットで検索してしまいがちだが、これでは「近い知」しか得られない。外部の人との交流で「偶発的な知の探索」を習慣化することがイノベーション創出の秘訣なのかもしれない。
(8月27日号)
ライブオフィス体験ツアーに行くとよく見かけるのが、フリーアドレス。職場で社員一人ひとりに固定した席を割り当てず、社員は自分の仕事の状況に応じて空いている席を自由に選ぶ。「これを採用すれば企業は柔軟で効率的に業務ができる」というのが定説になっている▼プラスがリニューアルオープンした虎ノ門オフィスの見学会に行って、同社がこれを採用していないことを知った。「一人ひとりに決まったアドレスがあったほうがいい」という考え方▼以前は採用したようだが、うまくいかず、再び固定席にした。「けれども、元に戻ったわけではない」。▼「朝、出社したとき自分の席を探さないといけないので、緊張感をともなう。外出して帰社したら、また同じ思いに苛まれる。フリー≠ニは言うけれど、けっこうストレスがたまって、自由な気分にはなれなかった」▼さらに、「自分の仕事に集中できない」「ペーパーレスとはいえ100%紙が無いわけではないので、書類の扱いに手間がかかる」「社員はフリーアドレスだが、経営幹部は自席がある」…▼これらをふまえて新オフィスでは、居心地よく働けるための様々な工夫をこらした▼「働き方の変革」は、試行錯誤によって獲得していくものだといえそう。どういう働き方がユーザーにとって最適なのか、顧客企業の幹部だけに提案していては実現は遠い。
豪雨や猛暑による甚大な被害。自然災害から身を守る難しさを痛感する。一方、労働災害は組織や個人が意識的に備えれば、かなりの程度防げることを知った▼京セラドキュメントソリューションズが業界で初となる「安全衛生優良企業」に厚生労働省から認定され、大阪労働局から「健康確保対策部門」優良賞を受賞した(前号に記事)▼同社は3年前、「健康経営」という言葉がまだ世の中に定着していなかった頃に10年計画を策定した。2025年は団塊の世代が後期高齢者になる大介護時代をむかえる▼「安全衛生優良企業」の条件としてとくに難しいとされるのは、休業1日以上の労働災害の発生率が同業種の平均を3年間下回っていること。これまで取得した企業の多くは中小企業で、従業員数の多い大企業での取得は難しい▼社員2千名を超える同社では、「健康に関する一口メモ」を毎日発信し、過去に発生した事故を分析して「不安全行動防止」教育を積極的にすすめた▼「一口メモ」の一部を見ると、健康に良い食べ物、ドライアイの予防、早歩きのメリット、質の良い睡眠、職場のメンタルヘルス対策などキメ細かく注意喚起を継続している▼現実の社会では、健康診断の有所見率が増加し続け、業務に起因した心の病も増加しているのが実情。人の健康が企業にとって大きな資本だと改めて思う。
(7月23日号)
今年の「New Education
Expo」は未来の学びがここにある≠ニいうテーマで先月開催され、学校教職員や教育関係者が大勢つめかけた(7月2日号に記事)▼展示のなかでとくに目を引いたのは「プログラミング教育」。新学習指導要領では、ICTを活用する「情報活用能力」を重視しているという。コンピュータを操作できる人材の需要がますます高まる世の中への対応か。展示会場にはデジタル教材が所狭しと展示されていた▼先日、高校で国語の教師をしている友人に久しぶりに会った。四十年前、中学で同じクラスだったとき彼が「書くことは、覚えること」と言っていたのを思い出した。肉筆で言葉を記す行為は自分の血肉になる、そうした信念を持ち続け、生徒たちにすすめているが、最近は保護者や周囲から疎まれるらしい▼記者がこの仕事を始めた頃、先輩記者が書いた文章を手書きで書き写せと命じられたことがある。今は原稿用紙すら無いが、記事やコラムを書く基礎だったように思う▼文科省が言う「情報活用能力」とは、プログラマーを育成することが目的ではなく、論理的に考え、表現力や伝達力、問題解決力を養うことが狙いだという▼インターネットを用いるなど情報を引き出すところまではデジタル志向に賛成するが、気力を高め、感性を磨くには手書きが大切なのでは。
(7月9日号)
「大は小を兼ねる≠チて言うけど、小さいほうがいい。大きかったら邪魔だろ!プリンター選びも同じ」。お笑い芸人で企業経営者でもある厚切りジェイソン℃≠ェブラザー販売のアンバサダーに任命され、日本社会の矛盾に切り込む芸風を披露している▼事務機器の業界では大は小を兼ねる≠ニいう価値観が長らく根強かった。近年は薄れつつあり、コンパクト設計の商品がSOHOユーザーなどに受け入れられている▼筐体を小さくすることで新たなユーザーを獲得する事例がプリンターや複合機以外でもある。スキャナ機器を業務用として頻繁に大量に使用するユーザーは従来からいるが、そうでないユーザーが手軽に電子化するのに便利な機種が最近売れているという▼先日、紙折り機のメーカーがこれまでのラインアップを絞って小型の機種を中心に勝負に出ようとしている話しを聞いた▼大型の紙折り機はDM作業などを大量に頻繁に使用するユーザーには知れ渡っているが、そうでないユーザーは紙折り機という存在自体を「知らなかった」という人が少なくないという▼「これまで手で折っていたので、かなりの時間がかかり疲労も。もっと早く知りたかった」▼既存の顧客のニーズを深掘りするだけでは新規客には巡りあえない▼シンプルなアナログ機だが、働き方の変革にも貢献している。
(7月2日号)
6月18日に大阪で発生した地震で弊社オフィスは書棚が倒れ、紙書類などが散乱し、元の状態に戻すのに半日かかった。日頃ドキュメントソリューションに関わる記事を書いておきながら、デスク周りの整理や文書管理、電子化が遅れていることを痛感した▼片づけながら、もう見たり使ったりすることがなさそうな、不要なものがけっこうあることに気づいて、「断捨離」することに▼世間でいう「働き方改革」は労働時間の短縮について議論されることが多いが、要らないものを捨てて空間を生み出すことも改革の効果が期待できる▼春に大阪のコニカミノルタジャパンやリコージャパンがオフィスをリニューアルしてライブオフィスを開始した様子を報じたが、両社とも不要な書類を一気に捨てて改革に取り組んだという▼新しいオフィスは、「自分のものは小さなロッカー一つに収まり、自分専用のデスクもなくなり、身が軽くなった」と▼「断捨離」は働く場や働き方を変え、さらに、人の生き方まで変えるらしい。『人生をかえる断捨離』の著者、やましたひでこ氏は「断捨離とは、片づけを通して自分を知り、心の混沌を整理して人生を快適にする行動技術」だという。「不要なものを捨てれば、大切なものが手に入る」と▼働いていないときの自分自身が変わってこそ、本当の「働き方改革」だと思った。
(6月25号)
「我々がこれまで扱ってきた主力商品が世の中から無くなってしまう」。先月開かれた東芝テック・中核BP(ビジネスパートナー)会でリテールソリューション中核BP会の恒成隆会長は、そんな危機感が現実的なところまできていると切実さを語った▼顧客である小売店は人手不足で人件費が上がり、店頭での価格競争に加えて時間給も競わねばならず、粗利低下・販管費上昇と過酷な状況。それを打破してくれるものを求めて展示会に出向き、そこで見つけた新たなシステムの導入を真剣に検討する。恒成会長はその姿に気迫を感じたという▼かつて気迫をもって顧客に接していたのは販売店の方ではなかったかと思う。新製品が市場に出るやいなやその性能を説明し、説得、顧客は納得、と、売り込む姿勢には旺盛さがみなぎっていた。昨今は精彩を欠いているのか?▼「販売店」や「ディーラー」という呼び方が「ビジネスパートナー」となって久しい。メーカー同士が協働しあうコラボレーションは花盛りだが、販売店との関係も今後はさらに踏み込んだ展開が期待される▼恒成会長は「この変革の時代のシナリオに私達をしっかりキャスティングしてほしい」と訴えた▼これからのビジネスにはストーリーが必要だといわれる。魅力のある脚本と個性的な配役でユーザーを惹きつけるドラマづくりが期待される。
(6月11日号)
創業八十年を迎えたウエダ本社(岡村充泰社長)が先月、NHKの経済ドキュメンタリー番組「ルソンの壺」で取り上げられた。テーマは「オフィス改革にチャンスあり!」▼働く環境の総合商社≠ニしてオフィスのデザインをプロデュース≠オ、年間百社以上のオフィス改築を手掛ける。懇切丁寧なコンサルティングを行ない、コンペでの成約率は8割を超える▼顧客企業の職場空間は様変わりし、働く人は活き活きと。それを実現させるためのワークショップが紹介された▼課題を洗い出して自社の現状を把握し、理想の職場を描く。そして形にする。大切なのは社員一人ひとりが自ら考え、それを採り入れるか皆で話し合うこと。パートで働く人の意見にも耳を傾ける▼「やる気」がみなぎる社風をまず作ることが肝要。世にいう「働き方改革」は経営者の側に立った働かせ方改革≠セと。社員自らが働きたい改革≠すすめる▼「形」ができてもそれはゴールではなく、効果が出たかを見極め、さらなる改善を図るためウエダ本社のコンサルは続く▼岡村社長は「お客様が目指す価値に向かって我々は伴走する」と、改革の手順だけでなく、信条を語った▼個々の商品を提供するだけならメーカーに負けてしまう。販売店が生き残る道がここにある。従来のストックビジネスの種は、今後は「伴走」に変わる。
(6月4日号)
営業で顧客を訪問する際に手渡すコミュニケーションツールが近年、少し変わりつつあるという。以前は、売りたい商品を前面に押し出したチラシやパンフレットが主流だった▼近年の傾向は、とくに飛び込み営業≠キるときなど、ビジネスとは直接関係のない話題を提供したほうが門前払い≠ウれずにすむという発想。営業担当者のプロフィールが書かれたチラシを見たことがあるが、すぐに本題にふれず、顧客との「とっかかり」や「顔を覚えてもらうための」コミュニケーションづくりが重視されるようになった▼生命保険の外交員向けにオンデマンドでチラシ作成するデザイナーと会う機会があり、サンプルを見せてもらった。対象が一般の個人なので、話題は旅行やテレビドラマ、料理のレシピなどのネタを盛り込んでいる▼事務機業界でのツールでは時事ネタやワークスタイルについてのネタを載せる傾向がみられる。先日、メーカーが販売店向けに作ったパンフレットを見ると、働き方改革の仕方を説明する記事があった▼これをデザイナー氏に見せると、「ちょっと真面目すぎるかも。セールスの方々自身が楽しく営業できるツールでないと毎日がキツくてストレスを溜め込んでしまうのでは?」という感想▼「検討しておききます」で一蹴されず、商品を売る前に人柄が売れるツールがのぞまれる。
(5月28日号)
六甲商会の和田顧問が亡くなった。何事も全力で取り組む姿勢と優しい笑顔が印象に残る方だったが、強面(こわもて)経営者としても知られた▼「自分に厳しく、人にも厳しかった。それは、常に相手のことを想い、本気で向き合った表れだった」と葬儀委員長は告別式で語った(前号に記事)▼社員は「何度も叱られた。頑張ってご恩返しをしたいとしみじみ思う」と。1月に他界した日興商会・藤縄会長のお別れ会でも同様の言葉を聞いた▼社員だけでなく取引先からも。通夜も告別式も参列したメーカーの販売店担当者は「怖かった。でも、それは奮起を促す怒りだった」と。結果よりも過程での真意を問われ、尊敬の念を深めた▼このようなリーダーは最近少なくなったのではないかと思う。パワハラやストレス、メンタルヘルスなどコミュニケーションに気配りや快適さばかり求められる風潮。だからこそ今の時代、𠮟咤激励してほしいと思っている人は案外多いかもしれない▼この春、就職を控えた学生に「叱られ方研修会」を実施した大学があったという。入社してもすぐに会社を辞めてしまう若者が増える現状を考慮した離職防止策の一環だそうだが、仮想の訓練でそうした資質が身につくのだろうか▼怒られて、感謝し、報いたいという気持ちは、現場で「本気で向き合」わないと体得できない境地だと思う。
(5月14日号)
先日、大手メーカーの営業担当者と話していてこんな言葉が気になった。「電気量販店で売られている低価格の複合機は乗り物に例えたら自転車のようなもの。我々が作っているのは高級の乗用車。同じように考えてもらっては困る」▼『技術の街道をゆく』(畑村洋太郎著)で著者は、「今の日本の製造業が苦境なのは、製品には絶対的な品質≠ニいうものがあると技術者が思い込んでいるから。品質とはあくまで相対的なものだ」と警告を発している▼「良い物を作れば売れるハズ」という考え方は高度成長期では間違ってなかったが、いつの間にか「良い物さえ作っていればいい」という考えにすり替わり、ユーザーが求めもしない過剰機能≠ノ陥ると▼技術の現場を数多訪ね歩いた著者は「日本の技術者は真面目で地道に努力している人が多いが、そうしているうちに自分たちが考える良い物≠ノ囚われてしまうのではないか」と危惧の念を抱く▼自転車と自動車、どちらが便利なのかはユーザーの個々の状況によるし、価値は絶えず変わっていく▼事務機の業界では何年も前からユーザーの現場を重視したマーケティング活動が精力的に行なわれてきたハズ▼著者は、マーケティングリサーチよりも現地に移り住んで体験すれば提供者と使用者のズレが無くせる、と新しい価値を考え出す技法を伝えている。
(5月7日号)
先月、ブラザー工業が創業110周年を迎えた。発表されたリリースでは「1908年にミシンの修理業から始まり、時代や環境の変化に対応…(略)…世界40以上の国と地域に事業を展開するグローバル企業へ…(略)」と伝えている▼1908(明治41年)頃の日本はどんな状況だったのか調べてみた。日露戦争での米国や英国からの債務が膨らんで経済は大不況。国民の生活は貧富の差が激化し、資本家と労働者の対立が社会に表面化したと▼当時の日本は貧しかった。ブラジルへの移民が始まったのもこの年▼先日、サンパウロに住む友人からメールをもらった。100周年のときほどではないにしても今年は日本ブームが起こりそうだと言っていた▼地理的には遠いが、海外で最も大きな日本人コミュニティがあるのはこの国で、47都道府県の県人会があるのはブラジルだけ。日本に親しみをもつ日系人が多い▼ただ、インターネットで情報がすぐにやりとりできる現代なのに、今も戦前の日本の習慣が残っていたりする▼先日は日本の伝統や文化を紹介する催しが開催され、そのなかの「もの作り」のコーナーでは工芸品だけでなく先端技術による精密機器も日本の誇る文化だとして紹介されたらしい▼110年の歴史をもつブラザーの製品群。ミシンだけでなく複合機やプリンターも展示されたのだろうか。
(4月23日号)
先月、東京の港区役所で『浜松町・芝・大門マーチング委員会』が活動の様子をパネル展示した。増上寺や東京タワー、竹芝桟橋、愛宕神社、泉岳寺などの風景やまちなみを描いたイラスト画を掲示し、これらの素材を葉書やクリアファイルに印刷してグッズを作製する取り組みを紹介した▼5年前に発足した「マーチング委員会」は、まちおこし活動を行なう全国ネットワーク組織で、現在61の団体がある。目指すのは「地域を愛し、日本を愛し、市民が共感しあえる、新しい情報コミュニケーション事業体」。行動理念は、江戸中期の倫理学者、石田梅岩が唱えた『先義後利』という思想▼梅岩は現在の京都府亀岡市の出身。亀岡市の生涯学習施設には梅岩塾の模型が展示されている▼先月、その施設で、在住外国人の日本語学習支援を行なう府内の日本語教室が集まって活動の内容を市民に紹介する催しが開かれた。参加した教室は二十三。いずれも普段、言葉の勉強会だけでなく、異文化交流のイベントなどを行なっている▼昨今、地方都市でも外国人の定住者や永住者が急増し、各自治体では「まちづくりの大きな担い手になってもらいたい」と期待を寄せる▼異文化交流会では、日本人には気づきにくい日本の魅力が外国人から指摘されることが多々ある▼これからの地域活性化は異文化の視点が不可欠かもしれない。
(4月9日号)
「うちの会社はしょっちゅう会議をやっている」「うちの会議は話し合う時間が長すぎて…」。最近訪れた数社でこういう悩みを聞いた。「話し合いをするのは課題を解決する答えを出すため。今の時代、難問が多いから会議が増え、時間も長くなるのだ」と▼森友学園の文書改ざん問題を巡っての話し合いはかなり長い時間がかかっているが、なかなか収束がつかず本質にたどり着かないのは何故なのか考えていたら、ある人の声が耳にひっかかった▼動物の知恵の進化を研究する古生物学者、大野照文氏は「人間はコミュニケーションが苦手なのだ」「ヒトが対話する能力を身につけたのは人類の歴史からすればごく最近のこと」「話せばわかる、などと言うが、実際は難しい」という趣旨の発言をしている▼人間は知的な生き物だが、それでもけっこう間違いを犯すのは、「天敵から身を守るために、余計に推し量ったり思い込んだりする本能があるから」だそうで、そうした思考回路を正すには話し合うことが一番だという▼会議の「参加者がそれぞれ論拠をぶつけあって、補いながら、正しい答えにたどり着く。まさに三人寄れば文殊の知恵」だと▼刻々と変化するビジネス環境、ITを活用したコミュニケーションツールが業界各社から続々と提案されている。参加者どうしが互いに共感しあい、実りのある話し合いを。
(4月2日号)
先週、今年の「OA年鑑」が刷り上がった。「OA」という言葉が事務機の業界で用いられなくなって久しい。「この年鑑誌のタイトルを変えなくては」と思いつつ、しかし、業界外の一般の人々やエンドユーザーは今も「OA機器」と呼ぶので、なかなか変えられない▼「OA(オフィスオートメーション)」は、情報機器を用いて事務作業など業務を自動化、省力化、効率化するための装置やシステムのことを表した概念として1970年代に登場した▼JBMIA(ビジネス機械・情報システム産業協会)が十年ほど前、OAに変わってUCという概念を打ち出したが、普及することなく消えた▼最近、「オートメーション(自動化)」という語が復活≠オている。AIやIoTなどの技術が進展し、この語への関心が浮上してきた。IT業界の人たちは「自動化」を新鮮な感覚でとらえ、今のキーワードだという。そういえば、RPAの「A」もオートメーションの略▼仕事を速く能率的に行ないたいと考えるのは太古の昔から続く永遠の課題。デジタルでない機械や道具でも驚くべき効率化をユーザーにもたらして満足度を上げている事例が少なくない▼OA業界を長年支え続けているのは、OAディーラー。ユーザーが効果を最大限にあげるために、最適な使い方を提案する。これがOA業界の伝統なのだと思う。
(3月26日号)
キヤノンMJ(マーケティングジャパン)が先月、創立50周年を迎えた。同社の広報部からいつも送っていただいている「C‐magazine」によると、「1968年2月、国内の事務機販売部門と複数の特約店の営業部門を統合し、『キヤノン事務機販売梶x、同年9月には『キヤノン事務機サービス梶xを設立。これにより、事務機の販売とサービスの両輪が新たな体制でスタートした」と創立の経緯が記されている▼71年にはこの2社と『キヤノンカメラ販売梶xが統合し、『キヤノン販売梶xが誕生した。70年代以降、OA化の波が押し寄せ、「複写機、ファクシミリ、ワープロを三種の神器≠ニ位置付けて攻勢に出る」▼80年代以降、「キヤノン販売」という社名は一般にも広く知れ渡り、メーカー名や商品名に劣らない高いブランド力を放っていたと記憶する▼2005年に出版された『「作る」キヤノンを支える「売る」キヤノン』(宝島社新書)ではこの会社の各事業の強さと魅力を分析、紹介している。とくにビジネスソリューションカンパニーは我々事務機業界紙にとっては06年にMJに社名変更してからも身近な存在として定着した▼そして今年、そのカンパニー制から、新たな体制が敷かれ、第二の創業♀をスタートしたという▼行動指針「顧客主語」による新たな取り組みが注目される。
(3月12日号)
国会で審議が紛糾し迷走する働き方改革関連法案。長時間労働を是正したい気持ちは誰もがもつが、生産性を飛躍的に向上するのは難しい。この業界でも展示会などへ行くと「この機器やシステムを使ったら働き方が変わりますよ」とPRする声をよく聞くが、その担当者自身が家で残業しているというケースも少なくないもよう▼そんななか大塚商会が「実践ソリューションフェア2018」のテーマステージで紹介していた同社の成果に驚嘆した▼20年前の1998年、大塚商会の社員数は6千6百21名で売上高は3千百17億円だった。そして、2017年は7千80名で6千2百46億円▼働く人の数はそれほど増えていないのに、業績は倍増した。さらに驚くのは、年間の休日日数が127日と見事に「時短」も実現している▼弊社も含めて「ITを導入するゆとりはない」と嘆く中小零細企業は少なくないと思う。ITを導入することを、投資ではなく費用だと思い込み…数年後の自社の姿が想像できず…▼実践ソリューションフェアでは、ITを採り入れれば小さな会社も改革を成し遂げられると来場者に希望を与えた▼「働き方改革」はいまやどこでも謳われるキーワードとして一大ブームになっているが、大塚商会もその顧客も、この言葉がない時代から改革し続けていたから今の姿があるのだと思う。
(3月5日号)
先月のNIKKOフェアで日興商会の三代目社長、藤縄修平氏が朝礼で語った言葉が印象に残った。「当社はフェースtoフェースで人を介するビジネスモデルを追求してきた」。その日の夜、テレビ番組「カンブリア宮殿」で、人を介するサービスとして究極ともいえそうなビジネスが紹介されていた▼それはライザップ(瀬戸健社長)がマンツーマンで行なうトレーニング指導。顧客がスリムで健康な身体に変身できるよう体重や体質に合わせた食事の摂り方やジムでのトレーニングを三日坊主≠ノならないように、つきっきりで面倒をみる、そんな様子が紹介されていた▼筋トレの話しなので、この業界には関係ないと思いながら見ていたが、ライザップではゴルフや英会話、料理の上達支援も手掛けていることを知った▼それぞれ違う分野ではあるけれど、瀬戸社長にしてみれば、どれも同じ「三日坊主市場」だという。筋トレも語学もなかなか続かず諦めてしまった経験が筆者にもある▼過去に健康食品の事業で失敗した瀬戸社長は顧客に密着する手段を選ぶことで過当競争のレッドオーシャンを独自のブルーオーシャン市場に変えた▼事務機店は、機器に不具合などがあれば直ちに駆けつけ、「ユーザーの面倒をみる」のが昔から得意な体質をもつ。フェースtoフェースで顧客企業を変身≠ウせることに期待。
(2月26日号)
電卓の小型化や液晶技術の礎を築いた佐々木正氏が亡くなった▼「LSI電卓の生みの親」「電子工学の父」「ロケット・ササキ」など多くの異名をもち、日本の高度成長を牽引した▼1980年代、スティーブ・ジョブス氏から相談を持ちかけられ、ネットワーク携帯機器の時代が将来おとずれると助言したことがiPodの開発につながったという。ソフトバンクの孫正義氏は「すべては佐々木先生との出会いから始まりました」と百寿を祝う席で挨拶した▼一般紙等の訃報では、こうしたエレクトロニクス産業に偉大な足跡を残した功績やエピソードが多数記されているが、事務機器を販売する業界でも大きな存在だったことはほとんどふれられていない▼関西の事務機ディーラー団体だった近畿情報産業協会(略称KOMA)の第3代会長を務め、地域の業界団体の上部組織設立を訴えて、日本事務機器流通団体連合会(NOMDA)設立にも尽力、その初代会長として米国NOMDAとの連携も図った▼評伝『ロケット・ササキ』には、「持っているものは与えるべきだ。人間、一人でできることなどたかが知れている。みんなで共に創ることが肝心だ」という言葉が紹介されている▼今から半世紀も前に「共創」の精神を唱えていた。技術を磨くことや仕事の腕をあげるには、人脈を築くことが大切だと教えられる。
(2月12日号)
「IT化」と「デジタル化」は違うものらしい。ドキュサイン・ジャパンの小枝社長は「当社が考えるデジタル化とは、ユーザーが自分のペースで、やりたいときにやりたいことができる、そういうライフスタイルを実現するもの」だと語った(2月5日号に記事)▼IT化とは、企業がこれまで社内で構築してきたシステムのことで、企業はこれを作って≠ォたが、これからは使う℃梠繧セともいう▼先月各団体で催された新年会では、モノとしての商品をPRするのではなく、ユーザーが「こんなことができたらいいな」と望むサービスが出現している事例や動向を主催者も来賓もスピーチのなかで取り上げていた。そして、「これらを実現するのはデジタル化だ」と▼ドキュサインのペーパーレス化プラットフォームを導入している人材派遣業のパソナは「働く人々に関わる問題が山積みとなっている今、解決するためには『企業依存社会』から『個人自立社会』へ転換することが急務だ」という理念をもつ▼いまや誰もが取り組む働き方改革が最終的に目指すのは「個人の幸福」ということになる。人工知能やロボットが進化すればするほど、ヒトにとって豊かさや喜びとは何なのかを考える気運が高まるのでは▼これからは、「アナログ」よりも「デジタル」のほうが温かみのある言葉になるかもしれない。
(2月5日号)
今年は明治元年から150年を迎え、アーカイブの業界では国や地域の歴史的資料をデジタル化して記録するビジネスチャンスが期待されている▼政府は「明治以降の歩みを次世代に遺すことや明治の精神に学び、日本の強みを再認識することは大変重要なことで、これに向けた関連施策を推進することとなりました」と「明治150年」ポータルサイトを開設し、様々なイベントを企画している▼明治時代は富国強兵や文明開化で急激に近代国家になり、政治体制だけでなく経済、科学、文化などあらゆる面で今の日本の土台が築かれたという。どんな時代だったのか、アーカイブ作業で発掘される「お宝」を見てみたい▼ところで、「明治時代」とか「大正時代」と言うが、「昭和時代」とはあまり言わない。年月が経過しないと「時代」とは言わないのだろうか?我々は「アナログ時代」とか「デジタル時代」などと無意識で表記するが▼「江戸」や「鎌倉」は政治の中心地で区分し、「明治」や「大正」は天皇の在位期間でそれぞれの時代が表わされているのだと思う。となると、明治の初めに京都から東京へ遷都したと歴史の授業で習ったが、今年は「東京時代150周年」とは言えないだろうか?▼時代の呼び方はさておき、過去の事実を確認するだけでなく、なぜ起こったのかを考えることで未来が見えてくるのだと思う。
(1月29日号)
本紙の「全国ディーラーアンケート」(集計結果は1月8日号に記事)では、OA業界の将来性について尋ねる問いを何年も前から続けている。今回の回答には、「事業は細々と続くが将来性は厳しい。人材が入社してこない」「今のままではダメ、業界の再編をした方がよい」という意見があった▼「成熟市場から衰退市場へ向かうのでは」「メーカー直販体制が強く、小ディーラーの生き残りは難しい」と懸念する声が多かったが、前向きな記述もあった▼「OA業界が市場(お客様)に必要とされているか考えた方がよい。お客様はモノを求めていない」「弱小ディーラーの今後は厳しいが、顧客の囲い込み戦略で、顧客視点でサービスを強化すれば利益の確保はできると思う」▼「これからはまだ何年か(10〜20年位)は伸びると思う」と可能性を信じるディーラーはOAの領域を幅広く捉え、「AIなどの分野での将来性に期待」する。「OAはITにとってかわられるものでは絶対にない。OAとITが融合し、OAそのものもますます発展していく」と▼昨年業績を伸ばした企業は少なくない。「どの業界もそうだが、市場縮小していくので現在の顧客をしっかり守り、新たなサービスメニューを考えた」▼「メーカーとディーラーが一体となって考えないといけない」。この言葉に業界の将来がかかっているように思う。
(1月22日号)
今年の年頭所感を拝読して、「進化」という言葉が印象に残った。昨年までは「変化」が多く、「働き方改革」や「ワークスタイル変革」の文言は今も飛び交う▼コニカミノルタは中期計画の標語を「トランスフォーム(変える)」から、「SHINKA(進化)」にして再スタートした。コニカミノルタジャパンの原口社長は「『トランスフォーム』には、捨てて何かに乗りかえるというニュアンスがある」と語っている▼同社はMFPの事業を棄てて別のものに乗り移るのではなく、MFPそのものを進化させていこうとしている。そういえば原口社長は数年前から「ビヨンドMFP」や「MFPプレミアム」など次世代を意識した言葉を会見等で放っていた▼リコージャパンの松石社長も「これまで取り組んできた様々な変化を、進化といえるレベルに高めたい」と年頭所感に記している▼オバマ元大統領が「チェンジ」というスローガンを掲げたのは10年前だが、「変わる」だけでは良くならないという気がしてきた。昨年はロシア革命100周年だったが、「あんなに過激に変えなくても進歩する方法はあったはずだ」とか、北朝鮮がミサイルを発射し続けるのは「革命に取り組んでいる最中だから」という声を聞く▼「変わる」だけだと、経済停滞を招いたり、個人の自由がなくなったりする恐れがあるかもしれない。
(1月8日号)
平成も30年。来年はこの元号が代わるというから今年は次の時代に備える気運が高まるのではないかと思われる▼デジタル技術がますます発達し、次は何をもたらしてくれるのだろうか。これからはいろんな現象を予見したり予知して事故や故障を防ぐ技術が期待されている▼沖電気工業は先日のイベントで、製造ラインの温度変化や橋梁のゆがみなどの異常を瞬時に検出する光ファイバーセンサーや、河川の洪水を見守る超音波水位計、建造物の健全度を遠隔監視するなど数々の予知技術を紹介していた▼つい先日も新幹線車両の台車に亀裂がはしる重大インシデントがあったが、予防の重要性が強く意識される今日この頃▼ドキュメント各社が以前から取り組み、今年はぜひ本格的に稼働してほしいのが、インシデントに対応した故障予測サービス▼機器に異変が起こったとき如何に素早く的確にメンテナンスサービスをユーザーに提供できるかがこの業界が最も重視する「顧客満足」思想だが、故障した時点でお客は不満♀エを抱くだろうから、やはり予防に勝る治療なし=・定期検診や、いつでも迅速に対応する365日サポート体制など、これらはコストかかる。こうした販売店やサービス店の苦労や負担を軽減する価値が故障予測技術に期待される▼事務機店が元気になり、業界全体が活性化する一年に。
2017年↓
先日奈良の古民家で、チャップリンの想い出を語る講演会が開かれた。語り手のKさんは1977年11月、日本の映画会社が募集した懸賞論文で最優秀賞に選ばれ、スイスにあるチャップリンの邸宅を訪れた。このとき記者も応募したが落選した▼邸宅では風邪をひいて寝込んでいた本人には会えず、手製の和紙本や版画を家族にたくした。帰国して約一か月後の12月25日、奈良のKさんの自宅にチャップリン夫妻からお礼のクリスマスカードが届き、感動さめやらぬその数時間後、テレビやラジオから訃報が流れた▼クレディセゾンの今月の会員情報誌にチャップリン没後40年の特集が組まれている。日本の作家や詩人、演出家、芸能人らが20世紀の歴史を刻んだ数々の名作映画について論考を寄せている▼公開当時ドイツや日本で上映禁止となった『独裁者』は米国政府も制作中止を迫った。2017年の今、不寛容な国際情勢と重なってみえる▼1936年の『モダン・タイムス』はサイレント形式のため「時代おくれ」だと酷評された。しかし劇中では、テレビもなかった頃なのに企業経営者が監視カメラや大型モニターを操作し、時代の先を読んでいた▼機械文明を批判したのはマハトマ・ガンジーとの対話から得た着想だが、チャップリンは「機械は使いようで人を幸福にすると思います」とガンジーに反対意見を述べたという。
(12月11日号)
このところ「人手不足」の文字をよく見かけるが、先日、「いまこの国の労働人口は一日に千九百人ずつ減っている」と聞いてその深刻さに驚愕した▼先日のリコージャパンの展示会ではステージにまかせんしゃい井上≠ニいう実演販売士が登場し、このような訴求六のあるプレゼンテーションを繰り広げた▼働き方を変えるにはどうすればいいのか、映像でダイレクトにメッセージを伝えたり、最新の情報をリアルタイムに共有できるサービスなど、以前からあるのは知っていたが、目の前で話しかけられると、頭でなく胃の腑に落ちる▼展示会のテーマは「エンパワーリング・デジタル・ワークプレイス」。デジタル技術を利用することが課題解決につながり、競争で優位に立つ鍵となる▼これによって「従業員やサービス担当者は場所や時間を問わず情報に基づいた行動をとることができるようになり」、「顧客満足度を上げ、人手不足を解消、収益を向上できるようになる」▼そのためには、「モバイルやソーシャル、分析、クラウドをビジネスプロセスのあらゆる側面に密接に統合させること、さらに、IoTを活用すれば」…と、ネットを検索するとこんな文言が出てくるが、やっぱり十分に納得がいって胃の腑に落ち着かせるには、まかせんしゃい井上℃≠フようなアナログのアプローチが断然優ると思う。
(12月4日号)
いまやどの展示会に行っても見かけるのが、ロボット。IT革命の次のイノベーションとしてロボット革命が期待されている。日本は昔からその技術が優れているらしい▼弊社のすぐ近くにある大阪市立科学館には、東洋で初めて開発されたロボットが展示されていると作家・若一光司氏の著書で知った。名前は「學天則」。昭和3年、昭和天皇の即位大礼を祝って大礼記念京都博覧会に大阪毎日新聞が出品したという▼高さは3・5メートルと巨大で、右手にペンを持ち、机に向かって文書を書いているような姿▼動力源は圧縮空気によるもので、動き出すと、目を閉じて思索しているような、また、何か閃いて書きとめたり、微笑んだりと、表情が変化する▼「ロボット」という語はその8年前にチェコの劇作家、カレル・チャペックが戯曲で用いて、たちまち世界に広がった。チェコ語の「ROBOTA」は強制労働の意▼「學天則」を開発したのは、北海道でマリモなど生物学を研究していた西村真琴という人。「ロボットを人間らしく認めさせるには表情がなくてはならない」という考え方で、「全てを天則(自然の摂理)に学ぶべし」との思いから命名した▼學天則の顔は世界の各人種の特徴を混合したという。人種差別を否定した西村氏は当時すでに多文化共生やダイバーシティを志向していたと思われる。
(11月27日号)
弊紙創刊者、藤本忠男が他界した翌日、業界でお世話になった方々に訃報をファクス一斉送信したところ、文書が届いていないところが数多くあったことが後日分かった。事務機の新聞社が機器の操作を誤るとは何とも様にならないお恥ずかしい事態▼だが、操作方法は予めメーカーに確認して行なっていた。CEの方に来てもらったが、さらに困ったのは、「送った履歴が見れない」という事態だった▼ある方からこんな感想をいただいた。「藤本さんご自身がFAXを止めたのでしょう」。その数日後、藤本の部屋の鍵が勝手にかかってしまうなど、そのほかにも奇怪な現象(?)が次々発生した▼「まだ死なない。」そういう執念が非科学的な現象を呼んだのか。とはいえ、部屋のドアノブが壊れたのは単純なに物理的破損だった▼販売店のCEが技能を競い合うコンテストが今年も活発に行なわれている。昨今は機械をアナログ的に修理しさえすればよかった昔とは様変わりし、デジタルデータを扱う知識が必要となり、さらに顧客の「困り事」を聞き出すコミュニケーション力まで審査する▼送信した履歴が見れない弊社の困り事は未だ解決されていない。それに加えて、こういう文書が送れなくて困っている、とコールセンターに説明したのに、来られたCEには伝わっていなかったことが何よりも残念でならない。
(11月13日号)
「とざい(東西)、とーざーい〜(東西)」。歌舞伎や人形浄瑠璃の口上での開始の合図。起源は不明だが、江戸時代中期に各種の興行で用いられていたらしい▼当時の大坂(大阪)、道頓堀の芝居小屋に由来するという説がある。主な劇場は南向きに建てられ、「東西」は客席の端から端まで、客に対する呼びかけで、口上につきものの「隅から隅まで」とほぼ同義▼大阪では南北の道路が「筋」、東西が「通り」と呼ばれているが、『大阪アースダイバー』(著者=中沢新一)によると、南北に走る大阪の縦軸(メインストリート)に対して東西の横軸が交差することで大阪の文化が発展していったとされる▼先日、繊維の業界で新事業を手掛ける知人から百貨店の催事を案内された。織物の機械は、経糸(たていと)に緯糸(よこいと)を交互に組み合わせる工程で行なわれる。「縦」は主軸で、昔から変えることができないらしいが、「横軸」に和紙という新たな素材を仕掛けたことで、紙製の衣服を作り、新たな流通を開拓した。同社にとって百貨店はこれまでになかった取り引き先▼世の中、「変革」や「改革」が叫ばれるが、伝統ある縦軸≠変えるのは難しそう。緯糸≠ノ何をもってくるかで新たな展開が可能となるのでは▼OAの業界は繊維に比べたら歴史は浅いが、それでも過去の伝統に縛られているかもしれない。
(11月6日号)
9月に開かれた国際福祉機器展は出展社が5百を超え、来場者も10万人超という大規模なイベントだった。会場は華やかで明るい雰囲気につつまれていた▼ある出展社の担当者は「福祉や介護は、昔は日陰≠フ存在だったが、いまは主役≠ニいえる」と話していた▼長寿社会がすすみ、介護は誰にでも起こり得るすべての人の課題となり、この仕事に携わる人の数は190万人とコンビニで働く人よりも多いという。それでも、人手不足。職業としていなくても親の介護に携わる人も増え、そのために離職することが社会問題になっている▼各展示を見ていてふと思ったが、たしかに会場全体は華やいでいるが、車椅子や歩行器などの製品を見ると、デザインが地味に感じた。色も黒っぽいものが多い。ハード面では依然と日陰者∴モ識が根強いのか?欧州の展示会を訪れたことのある人の話しでは、カラフルな製品が目立っていたという▼「機器」展とはいえ、高齢者向けの料理講座や音楽健康指導、介護施設の職員の労力を軽減するサービスなど現場の困りごとを解決する、ここでもソリューション提案が多彩に展開していた▼来年の干支であるワンちゃんもブースにお目見え。盲導犬と介助犬の違いを初めて知った。盲導犬は全国で960頭、介助犬は70頭と、こちらも全く手が足りていない状況だという。
(10月23日号)
今月3日、JR大阪環状線の電車103系が最後の運行を終えた。オレンジ色の通勤形車両は大阪環状線のシンボルとして半世紀近くにわたって親しまれた。この電車が走り始めたのは昭和44年。103系は首都圏でも活躍した▼「日本が誇る産業は、鉄道と自動車と複写機だ」と断言する人はこの業界に少なくない。複写機をはじめとする事務機の業界紙を昭和44年に起こし、取材で大阪や東京を走りまわった弊紙創刊者の藤本忠男が10月3日、88年の生涯を閉じた▼この日の翌日は中秋の名月だった。若いころ小唄や詩歌を詠じた藤本なら風情ある観月も楽しみだったかもしれないが、月といえば、昭和44年7月20日に起こった大事件、アポロ11号による人類初の月面着陸に胸わき心おどった。「OA年鑑」の表紙絵には宇宙の写真を好んで使った▼事務機器はまだ輸入品が多かったが、高度成長とともに日本の技術の日進月歩に夢見、発展する業界を応援し続けた▼小野十三郎氏が発起した大阪の文学学校に通ったり、毎日新聞社時代は山崎豊子氏の後輩でもあったなど、文筆家の影響を受けてか、ブンヤ≠ニいう記者の異名に誇りをもっていた。「自分はこの仕事しかできない」▼弊社オフィスには創刊時に記された「記者五訓」が壁にかかっている。「たえず問題意識をもて」「記事は足で書け」「情報に敏感であれ」「正確な判断力を養え」「マスコミ人の誇りを失うな」。
(10月9日号)
福井キヤノン事務機が船井財団主催の『グレートカンパニーアワード2017』で9千社を超える応募の中から最高位に選ばれ、「大賞」を獲得した(9月25日号に記事)▼顧客満足度(CS)と職場環境(社員満足=ES)を向上させ、その相乗効果で地域の企業ユーザーから信頼を得ていることが高く評価された▼「グレートカンパニー」の定義は、「社会的価値の高い理念のもと、その企業らしさを感じさせる独特のビジネスモデルを磨き上げ、持続的成長を続け、社員と顧客が素晴らしい会社≠ニ誇りをもつ独特のカルチャーが形成されている企業」▼同社のホームページに掲載されている動画を見ると、営業担当者が顧客にどのような提案を行ない、また社内でコミュニケーションをどのように活発に行なっているかがうかがえる▼複合機の買い替えを促すのではなく、「オフィス環境を改善しませんか?」という広い視点での提案。顧客は「見えるコストと見えないコストがあることが分かった」と印象を語る▼社内では、「10年後に自分がどう変わっていくか」目標を話し合い、いま「自分たちが自分たちのやっていることに気づく」▼会議で発表する内容は「面白ければ何でもあり」。「くだけた発想」「型にはまらない思考」が大事だと岩瀬社長は強調する▼いま何をするべきかが対話と共有から生まれる。
(10月2日号)
先月の近畿ニューオフィス賞の表彰式では最高位の近畿経済産業局長賞に近畿大学のアカデミック・シアターが輝いた。壇上で受賞の喜びを語った近畿大学の理事長の出だしのコメントが気になった。「大学としては、オフィス≠ニいう語に馴染みにくい感覚をもつが…」▼たしかに、多くの学生が行き来する施設や教室をオフィス≠ニはいわない。このシアターも学生のための自習室や図書館が主要な部分を構成しているので、この賞の対象にならないのでは?と疑問に思い、主催者のニューオフィス推進協議会(NOPA)に聞いてみた▼返ってきた答えは、「ワークプレース」。この施設の一部に職員が働く場が連携していた。だが、捉え方は微妙だったという。もしここが100%学生のための場だったら、オフィス≠ナはないと▼「OA(オフィス・オートメーション)」の業界では、昔から教育の分野も一つの市場として捉えてきた。ユーザーである生徒はワーカーではないが、教師や職員はここで働く人。いずれにしてもこのマーケットの規模は大きい▼働く場(ワークプレース)は戸外にもあるし、いまはモバイル機器やネットワーク環境が発達してどこででも働くことができる▼「オフィス」も「OA」も「事務機」も、古臭い業界用語≠ゥもしれない。新たな時代を象徴するキーワードが求められる。
(9月25日号)
NIKKOフェアの朝礼でしばしば語られる『真実の瞬間』は、スカンジナビア航空のヤン・カールソン氏が提唱した言葉で、顧客満足度を左右するのは最初の15秒で決まるというサービス理念。フェアの出展者はこれを聞いてその日の接客に挑む▼では、この瞬く間に、具体的に何をすればいいのか? インターネットマーケティング・ホームページ制作会社の松本賢一代表は著書『御社の売り≠小学5年生に15秒で説明できますか?』で、「お客が黙って売り手の話しを聞ける許容時間」だと、この15秒の重要性を指摘している▼現代社会では得る情報量が昔に比べて膨大。「だから、お客は冗長なメッセージを聞いている余裕などない」。さらに、テレビCMの例をあげる▼「なぜCMは15秒単位なのか。興味を引かなければリモコンでチャンネルを切り替えられてしまうから」▼1枚のチラシや短時間の営業トークをどのようにして印象深いメッセージにするかについて、「脳科学では、10歳前後に前頭葉がほぼ完成するので、伝える内容は難解なものであってはならない」と、小学5年生が聴いても分かるものが良いという▼ただ、いくら分かりやすくても他人の物真似では駄目で、自分の本心を表現することが大事だと▼冒頭の朝礼には毎年大勢の出展者が集まるが、一人ひとりに向けた言葉だと改めて思う。
(9月4日号)
「ダイバーシティ」という外来語を具体的に分かりやすく表現するにはどう伝えたらいいか考えていたら、さらに一歩進んだ「インクルージョン」という語があることを知った▼今年の「京都流議定書」イベント(前号に記事」では、カルビーの松本晃会長兼CEOが「経営戦略としてのダイバーシティ&インクルージョン」と題して講演▼スナック菓子業界のトップ企業でありながら利益率が低くかった同社を変革していった経緯を紹介し、ビジョンやプランの立て方、成果を出すことの重要性を説明した▼同社が実行した「オフィス革命」は、役員個室なし・会議室なし・個人席なしなど、あらゆる垣根を取り払った。そして、社員全員がダイバーシティに取り組む仕組みをつくって、成果をあげた▼同社では「ダイバーシティはコストではなく、投資。成長のエンジンだ」という信念をもつようになった。さらに、モットーは、掘り出そう、多様性。互いの価値観を認めあい、最大限に活かしあう。多様性こそカルビー成長のチカラ。「ライフ」も「ワーク」も、「やめられない、とまらない」=・この講演を聴いて、なかなか定着しにくい外来語の和訳が浮かんできた。ダイバーシティは「多様性の可能性」、インクルージョンは「多様性の実行」というところか▼情報機器を導入することによってこれらの「成果」達成を促進するものと期待する。
(8月14日号)
「ワークスタイル変革EXPO」が4年目を迎え、働き方変革を促す提案の幅が広くなったように思う。今年はプラスやコクヨなどオフィスファニチャーメーカーのブースが目をひいた▼働く場を変えることが変革につながり、ワーカー一人ひとりの趣向や価値観を尊重してこそ変革できるのだという訴えが伝わってきた▼プラスは「社員が自分らしくワクワク働けるオフィス環境」とは何なのかを考えて新たなアイデアや製品を展示。仕事の内容や気分に合わせて社員が働く場所を自在に選ぶことができる様々な職場空間を作りだした▼コクヨはワーカーがどんな価値観をもつか独自の調査によって九つのタイプに分類。来場者はいくつかの設問に答えて自分のタイプを診断してもらい、自分に合ったオフィスを紹介された▼タイプは、「楽天家」「家庭重視」「マイライフ探求家」「野心家」「大黒柱」「ハイパフォーマー」「イノベーター」「アシスタント」「リアリスト」▼記者も診断してもらった。「大黒柱」タイプだと。薦められたオフィスは、打ち合わせはしやすいが互いの目線が合わない位置に机が並んだレイアウト▼自らを振り返ると、十年以上も同じ方向を向いたままのデスクとイスで仕事を続けていることに気づいた。いつも同じ環境だと気分は落ち着くが、肝心なのは新しい物事を生み出せているかどうか。
(8月7日号)
「国際 文具・紙製品展ISOT」の会場は今年も華やいでいた。あまりにも多種多様の商品がひしめくので、今回のトレンドが分からず、主催事務局に行って聞いてみた▼それは、「SNS」。来場者、とくに女性客は、気に入った商品をスマホで撮影してネットに投稿する。その写真や動画がSNSの画面に映える≠ゥどうかがポイントらしい▼撮った画像は「可愛い」「ファンタジック」「奇抜」など、心を引くフォトジェニックな魅力を商品からすくい上げる▼文房具や事務用品はいつ頃からファンシーでオシャレな存在になったのか。昔は機能性だけで充分だったような気がする▼一方、事務機器は今も機能性だけしか訴求していないようにみえる。デザイン性などは求められず、効率重視▼大阪文具事務用品協同組合が展示会名を「オフィスフェア」よりも「ぶんぐ博」に愛着を込める理由が分かった▼文具や紙製品は、それ自体は昔ながらのアナログ製品だが、SNSで見知らぬ多くの人々と情報を共有しあう。これは広い意味でのIoTかもしれない。モノがインターネットでつながっていくのだから▼事務機も、オフィスワークに楽しさを与えるものになればイメージは変わるのでは▼会場で撮影しまくっている人たちにもプレスの腕章を着用してほしいと思った。共に報道者の意識を共有し、感性を磨きたい。
(7月24号)
囲碁や将棋の世界でトップ棋士がAI(人工知能)に敗れるという事態が起きている。話題の藤井聡太四段の快進撃を見ていて、もし、AIに人格が認められて公式戦で何連勝もしたら?などと想像した▼「人工」とはいえ、「知能」と言われると何となくヒトのようなかんじもするが、AI棋士が快進撃を続けたら、世のなか味気なくなるのでは▼機械やコンピューターはこれまで、人間が行なう単純作業を補ってくれたが、もはや知的で創造性のある仕事まで肩代わりし、さらにそれ以上の働きをするようになってきた▼一人の人間ではとても経験できない膨大な量の情報を処理・分析し、確実性の高い予兆判断を実行する▼勘と経験≠ナ厳しい時代を乗り越えてきた事務機店主も「先が見えにくい」と苦悩する昨今、AIほど頼もしい存在はないかも▼企業が策定する中長期経営計画。その通りの結果を出すのは難しい。これをAIに任せたら、希望や展望など余計な思惑≠ェ入り込む隙間はなく、様々なデータを細かく厳密に精査し、確かな方向を導き出してくれるのでは▼AIにはストレスもないし、不正も起こさない▼「OA」は人手不足を解消するが、AIは戦略策定まで期待できる▼ほんとに期待していいの?▼やっぱり味気ない。インタビューに行っても、「意思」を語ってもらえそうにないから。
(7月10日号)
東芝テックが発売した『新ループス』は、用紙を消色して再利用できる、新たなジャンルのハイブリッド複合機=B「消す印刷≠ニ「残す印刷」を1台に搭載し、国内では5月に発表会が開かれた(5月29日号に記事)▼発表会で実機を操作している様子を見ていて、紙は大切に扱わねばという思いに駆られた。「環境負荷の低減」や「エコロジー」など先行する文言よりも、こういう実演を直に経験することが環境意識を高めるのでは▼一方、デュプロ精工が開発した小型製紙装置『新型レコティオ』は、大阪のデュプロの社内にあるショールームで見学できるようになった(前号に記事)▼こちらも実際に稼働している状況を、展示会場のような広い空間で見るのではなく身近に感じることで、普段手にする紙文書の有難さを再認識した。この装置が導入された日から大阪デュプロの社員は使用済みの紙を積極的に集めるようになったという。そういう行動が「紙の購入量が10分の1に削減」にもつながっていく▼昨今「ペーパーレス」とはいえ、市場ではコピーもプリントも出力量はさほど減っていない。売価を下げるから「ペーパー(の価値が)レス」になってしまう▼「紙ほど仕事をするのに便利なものはない」。そういう意識を取り戻し、粗末に扱わず、その手触りに温かみを感じることで価値は蘇るのでは。
(7月3日号)
近隣の会社。時々挨拶する程度だったが、先週、互いの仕事の話しになって、いろいろ教えてもらった▼カタカナの社名なので分からなかったが、ウェブ制作や電子書籍、データ入力、セキュリティ関連のコンサルティングなど業務は幅広く、ワンストップサービスを提供している▼こういうIT系≠ヘ、さぞペーパーレスを実践しているのかと思いきや、紙の出力枚数は膨大な量らしい。「社員数は20名ほどだが、コピー機は三台では足らないくらいで、常にフル稼働。コピー機が置いてある部屋は、冬は暖房がいらず、夏は地獄」▼ヘビーユーザーなのは、顧客から預かる情報が紙ベースであることや、DTP業務を請け負う部署があるためで、過去は印刷出版業を営んでいた▼自社で印刷機を持たない印刷屋だが、看板を「〇〇印刷」としてくれていたらもっと早くに取り引きしていたかも、と思いながら、原稿作成から編集、レイアウト、製版と、従来のアナログのやり方で行なうのとデジタル作業ではコストに大きな差があることを改めて痛感した▼先月のJIIMAセミナー(前号に記事)でも「働き方を改革し生産性を上げるのにデジタルドキュメントは大前提」だと強調していた▼進んだ∴刷屋は遅れた′レ客にデジタル技術の習得を支援する。一見、売上が減るが、メリットは少ないないという。
(6月26日号)
リコーとミネベアミツミが介護市場へ向けたベッドセンサーシステム事業に乗り出した(前号に記事)。高齢者の呼吸や脈拍に異常がないか検知し、疾病等の予知などサポートする▼現役を引退した世代は年々増加しているので、たしかに大きな市場だが、いま現役で活動するビジネスパーソンの「生体情報」も気になる▼医学博士・梶本修身氏は著書『すべての疲労は脳が原因』のなかで、「過労になるのは人間だけ。動物は獲物を追い駆けても疲れたらすぐにやめてしまう」「集中力を高めるのは危険な行為」「終業後にスポーツクラブに行ったり、休日にゴルフしても疲れはリセットされない」など、働き方や休みのとり方に注意を呼びかける▼私たちが日常的に口にする「体が疲れている」とは、実は「脳の疲労」であることが医学の進歩で解明されつつあるという▼そうした「疲れ」を放置すると、「疾病」になる。自律神経が破たんし、心筋梗塞や脳出血を起こす▼脳波や心拍数、呼吸、体温、血流、血圧は常に変化していて、それに応じた快適な環境で過ごすと脳の負担が減るという。オフィスも、長時間作業に適した空間だと仕事の効率を向上させる▼このところドキュメントメーカー各社は「オフィス」の領域から離れていく傾向にあるようだが、もう一度戻って、オフィスワーカーに寄り添ってもらいたい。
(6月12日号)
働き方改革に取り組んで労働時間の短縮を目指す企業が増えている。時間がかかりすぎる≠ニよく指摘されるのが「会議」。話しあいや打ち合わせを「もっと手短に済ませたい」というニーズに応える『ハドルミーティング』という手法が注目されるようになった▼「ハドル(huddle)」とは、アメリカンフットボールで、次のプレーを決めるフィールド内での作戦会議のこと。短時間でサっと集まり、サっと解散し、成果を上げる。こんなことがビジネスの現場でも実行できたら▼ハドル会議に適したツールとして電子黒板やテレビ会議システムが進化している。モバイル機器や複合機とも繋がり、滑らかな書き込みなど快適に操作できるタッチディスプレイが少人数のミーティングスタイルを変える▼先日、ある会社で社員一人ひとりの働き方を変えた事例を聞いた。社内コミュニケーションが高まり、会議時間が短縮しただけでなく、組織全体が活性化した▼その会社の中間管理職Aさんは、以前はいろんな雑用をして遅くまで残業していたが、この春からそれをやめて部下達に任せ、管理することに専念。その結果、部下が育ち、自分も労働時間を減らすことができた▼Aさんは「自分がやっていた仕事を部下に任せる≠アとが、これからの時代の責任者の一番大事な仕事≠セ」と強調していた。
(6月5日号)
同じ一つの言葉や行為でも文化や歴史の背景が違うと意味や見方が全く異なることがある。先月開かれた東芝テックの中核ビジネスパートナー会での講演は元プロ野球選手でスポーツライターの青島健太氏による「野球を通じて考えるグローバルへの挑戦」だった▼スポーツライターになる前、日本語教師をしていたという。同じ「ストライク」でも、日本語と米語では意味合いがかなり異なるのだと▼同じ単語なのにアンパイア(球審)が叫ぶ意図が違うらしい。日本ではストライクゾーンにボールが通過したことを指す名詞としてジャッジする。太平洋戦争中は「良し」という言葉に置き換えられた。日本では野球を守備の視点でみる▼米国では「打て!」という命令形の動詞。観客もテレビ放送のアナウンサーも野球を攻撃中心のスポーツとして見るから、日本の高校野球のような「打力はないが守りぬいた」というような解説に感動は伴わないという▼1試合にかかる時間が日本では平均3時間半なのにメジャーリーグでは2時間半であることやイチロー選手が四球を選ばないなどの理由はこういった日米の野球に対する見方の違いからだとか▼ビジネスも守りと攻めがある。日本の企業は働き方を変革してもっと時短を目指すべきだろうし、チームワークも大事にして、日々悔いのないプレーを心掛けたい。
(5月29日号)
先日、複合機のセールスが3社、立て続けに来訪した。いずれもコピーやプリント料金のコスト削減を訴え、リース体系はそれぞれ異なるが1枚あたりの印刷価格がとうとう1円を切ったキャンペーンを提示され、昨今の競争激化を目の当たりにした▼小社は新聞紙こそ輪転機で多枚数を刷るが、ビジネス文書は一般企業に及ばない小枚数ユーザー。そんな使用者に対してもプロフェッショナルユーザー並みの低単価が設定されるようになった▼業務にかかる経費はコピー・プリント代の他にも色々あり、各セールスはICT化を促すソリューションメニューを豊富に揃えている▼こうしたコスト削減提案のプロたちに市場動向を聞くと、固定観念に縛られ従来のしがらみから抜けられない経営者は安くて便利だと分かっていてもなかなか変われないという▼いまやどの企業も変革を迫られ、売上アップとコスト削減を同時に実行しないと存続が危ぶまれる厳しい時代。新たな事業にトライしても売上増を果たすのには時間がかかり、失敗に終わるケースもある。一方、従来のコストを見直して支出を抑える行動は短期間で効果をあげやすい。経営難にあえぐ企業がまず手をつけるべきは経費カット▼そうした提案を他人事のように思っているユーザーを根本から救済できるのは、対面によるコミュニケーションしかない。
(5月15日号)
日本経営協会が発表した「組織のストレスマネジメント実態調査」では、メンタルヘルスの不調によって長期間休職する人や退職する人が減っていない実態が指摘された▼昨年から義務化されたストレスチェック制度について、『効果があった』と答えた企業は3割程度だった▼「不調者」が生まれる「要因」として1位にあがったのは「職場の人間関係」、2位「本人の性格」、3位「上司との相性」。これらはコミュニケーションの問題▼昨年、京都のウエダ本社が働き方変革をテーマにした催しで、社員どうしで称賛や感謝の言葉を伝えあう仕組みを社内で実践していたのを思い出す▼「実態調査」で合点がいかないのは、「不調者を生まないために行なっている取り組み」の1位が「残業時間の削減」だったこと。これは「要因」の上位でなく6位▼日本の長時間労働は先進国のなかで今も最悪の水準。日本語の「お疲れさま」に相当する外国語は無いらしい。英米では「Good job」という表現がある。これを日本語に直訳すると「良くやったね」になるが、仲間の労苦をねぎらうのはこの国特有の文化習慣といえそう。こうした美徳が土壌にあるから残業がなかなか減らないのかもしれない▼「お疲れさま」でも「Good job」でも、気軽に声を掛け合えられる環境が一番のストレス解消になるのでは。
(5月1日号)
事務機業界の展示会でもドローン(自律型無人航空機)を見かける機会が増えた。数年前まではラジコンの一種かと思っていたが、いまやビジネスで活躍する存在に浮上≠オている▼OA機器のレンタルやメンテナンスを行なう広友イノテックスは3月に幕張で開かれた「ジャパン・ドローン2017」に出展し、ドローンのレンタルサービスをPRした▼貸し出すだけではユーザーは安全に上手く空撮できないので専門のオペレーター派遣、使用する際の法的な申請手続きや機器のメンテナンス、さらに損害保険までサポートしている▼同社が長年関わっている建築・土木の業界では、現場でICTを活用する「アイ・コンストラクション」施策が国土交通省により進められ、生産性の向上を目指している▼昨年の「ジャパン・ドローン2016」では、リコーが飛躍的な技術を披露していたことを最近知った。複写機・複合機で培った、センサーやレンズ、画像処理などの技術を駆使して、この飛行物体に両眼≠移植≠オたという▼開発した「超広角ステレオカメラ」は人間で言えば三半規管の役割を果たすもので、周囲の環境を立体的に把握する▼ドローンによる空撮サービスは建設業界のほか、イベント開催、観光プロモーション、地方PR、農業、スポーツ、エンターテインメントなど利用の拡大が期待される。
(4月24日号)
日本環境協会主催のエコマークアワード2016で「プロダクト・オブ・ザ・イヤー」を受賞した理想科学工業の高速カラープリンタ「オルフィスFW」はVOC(揮発性有機化合物)放散の基準値をクリアするなどの取り組みが高く評価された▼生活や仕事の場面で、もともと自然界にないモノを多用するようになったのは20世紀の後半からと言われる。人類の歴史からみれば、つい最近のこと▼日本環境学会の磯部作委員によると「石油化学製品であるプラスチックの世界生産量の伸びは1950年はゼロで、60年もわずかだったが今は3億トンを超える」という▼そのうちゴミとなるのは1億3千万トン。毎年1千万トン増え、10年先は2億5千万トンになると環境保護団体は推計している。これは海にいる魚の総重量の3倍だとか▼磯部委員はさらなる問題を指摘する。「プラスチックは陽に当たると劣化してボロボロになるが、分解はしない。5o以下のマイクロプラスチックが海に漂えば、回収は不可能。プランクトンにも混ざってしまう」▼事務機も素材の殆どはプラスチック。その成分は微量だが揮発する。鼻から吸って臭いを感じたら身体に悪い影響も。しかし我々は慣れてしまっているのでは▼回収、処理、発生源抑制等、課題は深刻化している。来月は業界各社の環境対策を取り上げたい。
(4月10日号)
「人のものを盗んではいけない」。当たり前ともいえる、ルールというかマナーを私達はいつ頃から身につけるのだろうか。おそらく幼少期に親に叱られたりして学ぶのだろうが、そういう記憶がないくらい「所有権」という概念は分かりやすい。一方、分かりづらいのが著作権▼JRRC(公益社団法人日本複製権センター)が出版社や新聞社から複写等に係る権利を直接受託する「個別受託制度」を開始して一年が経過した。受託者は増え、複写利用の許諾契約を結ぶ企業も大手を中心に増加しているという▼とはいえ中小企業ユーザーの意識はまだまだかも。つい先日、購読者から「当社の取り組みが地方の新聞に載った」と記事紙面をスキャンした画像がメールで送られてきた▼自分の会社が主語として書かれている記事を見ると「自分のもの」だと思い込みがち。購読していても、これは所有権ではなく、著作権の問題。勝手に複写して他者に渡すのはルール違反▼いま現在JRRCが許諾している範囲は、紙から紙へ複写する行為で、スキャナで読み取ったデータの扱いはまだ。いまデジタル情報の許諾に向けて検討している▼紙のコピーも電子文書も自在に操作できる複合機に関わる我々はユーザーに対して、知的財産権法のなかでも難法≠ニされる著作権法について啓蒙できる素養を早く身につけないと。
(4月3日号)
世田谷の樫尾俊雄発明記念館で今、『学びと遊びの電卓・電子辞書展』が開催されている。カシオ計算機の創立六〇周年記念企画として、また「電卓の日」(3月20日)に因んで▼電卓の日は昭和49年に日本の電卓生産台数が年間1千万台に達して世界一になったことを記念して日本事務機械工業会(現JBMIA)が制定した▼工業会の出荷統計によると、昭和52年に複写機が出荷高のトップに躍り出るまでは電卓が事務機の花形だった▼電子辞書も今の入学シーズンに需要が高まる商品。高校では必携のツールで、合格発表の日に推薦商品≠ニして新入生たちに提示される。記者が高校生だった頃は国語辞典や漢和、古語、英和など、重い鞄で通学したものだ▼展示会では馴染みの薄い♀ヨ数電卓も紹介されている。馴染みが薄いのは文科系の記者だけでなく、日本は関数電卓のユーザーがごく僅か。海外では百か国以上で愛用されているという▼報道向けの見学会では「数学の目的は物事を解明することで、手計算は副次的な作業。テクノロジーを用いることで、レベルの高い学習へと進むことができる」との指摘があった。日本人は数学が苦手なのだろうか?▼高度成長期に来日した革命家ゲバラは「日本人は数学的な正確さで働く」と感動したという。日本の数学教育の現状は知らなかったと思うが。
(3月27日号)
プロジェクターの用途が広がっている。これまではオフィス内での会議用ツールとして使われるのが主で、今も市場の大半を占めるが、性能の向上と相俟ってプレゼン用途としての活用が多彩になった▼デジタルサイネージが注目され、かつてプロジェクターの事業を休止していたメーカーが再参入▼今月開かれたリテールテック展でシャープは店舗の演出力を高める数々の映像機器を展示したが、そのなかで50pの投影距離から100インチの大画面を映し出す超短焦点プロジェクターを参考出品した。7年ぶりにこの機器に取り組むという▼エプソンは「ビジュアルイノベーション」と銘打って、サイネージやライティングなど新たな市場を創り出す高光束プロジェクターに参入▼「新しいニーズが育っている」と語るのはキヤノンMJ。「デザインや医療、プロジェクションマッピングのようなアミューズメント用途、パイロットやレーシングドライバーを養成するシミュレータなど領域が広がる」▼OKIはプロジェクションマッピングを自社の工場内での組み立て作業に活用。映像で作業の手順をナビゲートすることで、作業ミスを無くすだけでなく、未習熟者も効率よく働ける職場改革を実践▼小紙がプロジェクター特集を発行していたのは10年以上前になるが、久しぶりにいろんな現場を取材したくなった。
(3月13日号)
最近の印刷の展示会を見ると、機械よりもプリントされた成果物のほうが目立つ。なかには機器を出展せず、カタログを置くだけだったり壁に写真を貼ってあるだけというブースもあった▼成果物はますます多彩になっている。その素材も。あらゆるものへプリントできるプリントtoエブリシング≠ニいう語がキーワードになりつつある▼いまや紙以外にも印刷が行なえる時代。とはいえ、その前に我々は紙のことをどれだけ知っているのだろうか?▼特殊紙も含めて紙の種類は千を超えるという。どの機器がどのような紙を出力できるのか。コピアメーカーが手掛けるデジタル印刷機は年々進化し、用紙対応力が増している▼以前は専門的な機械に見えたが、だんだん身近な存在になってきた。企業で内製化もすすむ。販促物を創り出すのは、もう印刷屋のプロだけでなく、一般の企業ユーザーでも行なえるように。誰でもプロ並みに印刷できるプリントbyエブリワン=i?)の時代に▼メーカーは、ユーザーが印刷の作業工程を体験できるCEC(カスタマーエクスペリエンスセンター)を続々と開設。ユーザーは自分のデータや紙を持ち込んで実際の印刷のワークフローを体得する▼機械の使い方よりも、何を創り、何を表現したいかが重要。いろんな種類の紙をもって行ったほうが表現力は豊かになる。
(3月6日号)
「一歩先のシステムをお届け」。今年も盛大に開かれた大塚商会の実践ソリューションフェアでは、約3百種類ものシステムが展示され、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、VR(バーチャルリアリティ)をはじめ様々のIT技術が会場を埋め尽くした▼ITを採り入れることは、経費も削減でき、ビジネスに攻勢をかけることができることをこのフェアは提示した▼小社もそうだが、中小零細企業が旧来のままのシステムで今後もずっと仕事をし続けたらどうなるのか▼東京オリンピックが開かれる三年後、日本のインフラは変貌すると言われている。1964年の五輪の時は高度経済成長の波に乗れない組織や人は時代の変化についていけなかったらしい▼2020年に向かって企業のビジネス環境は日々進化していく。ハードウェア機器も、ネットワーク構築も、セキュリティ対策も。情報伝達はさらにスピーディーに▼フェア会場のテーマステージでは、「IT技術の一つひとつは単なる技術にすぎない」と前置きし、「それらを、自分の仕事の目的に合わせて組み合わせる」ことが重要で素晴らしいと訴えていた▼景気の上向き感をもてない中小零細ユーザーにとって、働き方も働く中身も一気に変えるのは難しい。OAディーラーはそうしたユーザーには「半歩先」でも提案してほしい。
(2月27日号)
「現場で起こっていることが全て。あらゆる課題解決の糸口は全て現場にある」。この業界ではこうした考え方が鉄則とされる▼では現場へ行って何をすればいいのか。人と会って話すことは勿論大事だが、普段その地域の風景に馴染んでいることが誰かのために役に立つ▼デュプロが数年前から手掛ける、QRコードを活用した自動認識システムによる提案は毎年目を見張るものがある。今年の展示会では新聞販売店が日々の配達業務のなかで蓄積した情報を地域のスーパーマーケットに提供するコラボレーション企画が紹介されていた▼地域住民の状況を把握したスーパーは次々と新たな販売施策を打ち出し、売上を伸ばす。新聞販売店も情報提供により収益を得るので、本業以外に稼ぐ術をもつことになる▼インターネットが普及すればするほど現場の価値は高まる。今の時代、同じ現場を行き来する仕事は新聞配達だけかもしれない▼毎日出向かないと風景の変化に気づかないし、気づくことが価値に繋がる発想もこれまでなかった▼こうした行動は最近、セルフネグレクト(自己放棄)を防止する手段として注目されるようになった。新聞配達員が孤独死を防いだというケースもあるという▼地域社会による見守りなどの取り組み。地域全体を活性化するコラボレーション企画への期待がますます高まる。
(2月13日号)
複合機メーカーの決算発表を拝見していると、主力事業の苦境が伝わってくる。「マーケットが成熟化し、ハード製品は需要があるものの、今後の成長は難しい」と▼そんななか、「成熟市場と言われるが、本当の競争はこれからだ」と心強い言葉が鳴り響いた。声の主はヤチヨコアシステムの前田正夫社長。コピー機を、ほぼハード売りだけで八棟目のビルを建てた(1月23日号に記事)▼「真の競争とは競合他社を気にするのではなく、『顧客に選ばれること』、この一点に尽きる」「成熟市場の競争では、1強他弱≠フ状況になるかもしれないが、当社はその1強になりたい」▼「複合機ビジネスほど確実で底堅い事業はない」という信念。多くの事務機販売店が複合機のほかに第二、第三の商材に手を伸ばすのが理解できないという▼同社の社員は複合機が大好き≠ナ、常にこの製品を徹底的に研究している。「それぞれの製品は、機能差は大差なくとも、性能差がある」。その違いを把握し、様々な顧客のニーズに対応することで、顧客に高い価値を提供できるのだそうだ▼「この機械を活用すれば多くのメリットが得られる」と得心した顧客ユーザーは、複合機をコスト≠ナはなく投資≠ニ捉えるようになる▼なんというプレミアムな商品。造る側のメーカーのほうがこの価値に気づいていないのでは?
(2月6日号)
「日本の社長さんをカッコよくしたい」。関西リコー会の新春講演会で話し方教室「キース」の副社長、会田幸恵講師は教室を発足した動機をこう語った▼かつてこの講座を受けたリコージャパンの畠中元社長が見事なスピーチプレゼンターに変貌していく映像が映し出され、聴講者(販売店経営者)は惹き込まれていった▼聞き手に強い印象を与える話し方とは…音階の「ソ」のトーンで、口を縦横に開け、無駄な語(「えー」とか「あのー」)を飲み込み、よい姿勢とジェスチャー、一人の聞き手に話しかけるように…など、堂々としたパフォーマンスを行なうためのコツが次々と提示された▼日本人はプレゼンが下手だとよく言われる。欧米では子供の頃からディベートやディスカッションなどアウトプットする教育を重視し、一方、日本では読み書きを重んじるインプット型の授業が行なわれているのが原因だという。「日本のビジネスマンは話し方よりも、内容(資料)にこだわるから」だと▼『伝える極意』の著者で東京五輪の招致スピーチを通訳した長井鞠子氏は「日本人が欧米人に比べてコミュニケーション能力が低いというイメージを一気にひっくり返した」と高評価している▼カッコよくなってほしいのは社長さんだけでなく、営業やサービスの方々も。現場での活動をさらに充実させていただきたい。
(1月30日号)
年初の互礼会や催しでのスピーチを拝聴していて、今年ほど話題が一つに集中し、それでいて見解が分かれる状況はこれまで無かったのでないかという印象を受けた▼スピーチで皆が取り上げたのは米大統領トランプ氏。「想定していたことと逆のことが起こった」と話題にあげずにはいられない▼新大統領の発言に、「時代がへんな方向に行くのでは」「彼は商売人なので経済成長を期待する」と▼一方で、「前大統領とは政策が180度異なるが、どちらも間違っていない。今の時代、正解はない」という声も▼今後の行く末を案じるときは原点に立ちかえることが大切。リコーの賀詞交歓会では、創業者・市村清氏の言葉「不平・不満(お客様の困りごと)の発見が事業のカンどころ」が引用された。ユーザーニーズを捉えることはイノベーションの種だと▼一方で、終戦直後の苦しい時代を体験された先達は「今は豊かな時代。豊かであればあるほど不平不満が多くなっているのでは?『足るを知る(者は富む)』という諺があるのに」と▼昨年は「多様性」という概念が肯定的に迎えられた。ただし、これは言葉の上だけのことだったのかもしれない。現実に価値観の多様化がすすむと混乱が起こる▼人間は自分と違うものを拒絶する本姓をもつ。この一年、どんなキーワードが現れて落ち着かせてくれるのか。
(1月23日)
財界の要人らが出席した新年会では「今年は円安や株高、米大統領の言動による追い風を受けて改革に取り組むチャンス」ととらえ、賃上げや投資など積極姿勢を表明していた。本紙恒例の全国ディーラーアンケート(集計結果は1月2日号に掲載)でも、景況予想は昨年に比べると若干楽天的な回答が増えた▼こうした、比較的好ましい環境のなかで「日本経済の実力≠底上げするための構造改革を進めるべき」との気運が今年は盛り上がっているような雰囲気▼とはいえ、景気や相場に左右されるようでは、本当の実力≠ニはいえないのではと思える会見が昨秋あった▼上半期決算発表会で連結業績が減少に転じた立花エレテック・渡邊社長は「本体が危機意識をもって努力した成果がみられ、当社の営業力は決して減じていない。今期は下方修正せず増配し、心意気を示したい」と語った(11月28日号に記事)▼実力とは環境や競合他社との比べ合いよりも、携わるヒトの気概や気迫から湧き出るもの。この業界でいえば、地域に根ざしたディーラーとしての気質や誇りを失わないことだろう▼ディーラーアンケートでは売上増を果たした要因に「人を増やしたから」と回答した企業が少なくなかった。一方、「業績が上がらないから人を増やせない」と苦悶する会社は小紙だけではないと思われるが。
(1月2日号)
暦が改まって2017年のカレンダーにかわった。カレンダーをつくる業界では2018年のカレンダーはもう出来上がっていて、その翌年の2019年の商品づくりに取りかかっているという▼デジタル化が急進する昨今、次々と新たな技術が開発され、情報通信の業界は、「昔なら百年、十年毎に起こっていた情報革命が、今はひと月、いや週単位と言っても過言ではない」という猛スピード▼新しいビジネスモデルもすぐに古くなりかねない。カレンダー業界の人たちは2019年の世の中をどんなふうに想いながら作っているのだろうか▼昨秋開かれた沖電気工業のプレミアムフェアでは、様々な機器を製造する各部門が、それらを使う現場の数年先を想定して参考出品していた▼複合機の部門からはオフィスの環境情報(温度・湿度・電力など)や機器情報を収集し、データ分析レポートを印刷。また、ATMの部門は、数年先の金融機関の店舗の風景が様変わりした予想図を見せてくれた。タブレット型勘定端末を用いて、店舗の事務をセルフオペレーション化し、行員は外回りに専念する▼「数年先」とは、2〜3年先だという。東京オリンピック出場を目指すアスリートは3年後を見据えて日々練習に励むが、我々もそうでありたい。今年は、読者に明確な目標が持てるような情報を次々と報じていきたい。
2017年↑
2016年↓
(12月26号)
工場で生産される製品だけでなく、工場内での作業工程そのものにも価値がある▼社内実践による価値提供を展開しているリコーが平和島に新たに開設した「CECーTOKYO」は、それらの真骨頂のようにみえた▼印刷の受注から編集、印刷、後加工、梱包、配送といったワークフローのなかで、効率の良い導線や在庫品のデータ管理、ポカミス≠フ防止など、これまで培ってきたノウハウを披露している。「CEC」のEは「エクスペリエンス(経験)」▼もし、「うちはそういう経験を積み重ねていないので、価値を提供できない」と嘆く会社があるとすれば、どうすればいいか▼ここ数年で売上が半減した印刷会社がV字回復させた事例を先日テレビで見た▼主な顧客はクリーニング店。クリーニング用タグを専門に印刷してきたが、昨今はこの業界自体が低迷しているために当然自社の業績に響いていた▼解決策は「お客様を儲けさせる」こと▼この考え方はソリューション時代の経営者なら誰でも思いつくが、この印刷会社の社長がとった行動は、「自分もクリーニング店をやってみる」ことだった▼プロだからこそ気づきにくい盲点に気づいて、新企画を打ち出していく▼ソリューション提案するには「お客を知る」のが大事だと言われてきたが、これからは「お客になりきる」ことが重要になるのでは。
(12月12日号)
メーカー販社が自社のCEや販売パートナー個人の技能を審査・表彰するコンテストが公開されている▼競技の様子を窺っていると、製品の保守・メンテナンスの技術力だけでなく、接客力を問う傾向が高まった感がある▼壊れた機械を黙々と修理する、そういう精魂の込め方よりも、明るく笑顔で振舞うのが好ましい時代になった▼「モノからコトへ」と価値観が変わり、事務機を売る≠フではなく、とくに昨今は働き方を売る£案が必要になった。顧客の課題をどれだけ認識できるかが決め手▼「セールス部門」の審査風景。メーカー販社の営業担当者二人が顧客を演じる。セールスマンが部屋のドアをノックする場面から審査は始まっているという。柔和なイメージだと加点されるのか▼商談の場面では公平を期すために顧客側から質問する内容は同一。しかし、実際のビジネスの現場では多様だと思う▼価格を話題にするようでは評価は最低だと。しかし、値切られた要求を覆したら、それが最高に優れているのでは?▼そもそも、地域で長年の関係を築く販売店と顧客とのやり取りを客観的に評価できる基準など存在するのか?など、いくつか疑問を抱いた▼価値提供に繋がるトークとは。顧客から質問される前に、郷里で呉服店を営む両親の話しを切り出したセールスマンが印象に残った。
(12月5号)
「マルチメディア」という語を小紙が盛んに書きたてたのは90年代の中頃だった。文字や映像、動画、音声など、それまで別々に扱われてきたメディアがデジタル化され、データの処理や加工、発信の仕方が進展、やりとりする情報量は増大した▼その頃からこの語を自社ブランド名に採り入れているセキセイが先月、手のひらサイズで超軽量の多機能ツールを発売した(11月7日号に記事)▼高音質を発するワイヤレススピーカーになったり、また自撮りリモートシャッター、さらにハンズフリー通話など、スマートフォンと連動した機能を多彩に盛り込んでいる▼いまやあらゆるものがスマホにつながり、ビジネスもライフスタイルも変化しつつある。関連商材が広がるスマホは現代のマルチメディアツールといえる▼先日、一般紙でこのような投書を見た。「スマホは人と人を繋ぐようにみえて、実際は切り離すものだ」(25歳会社員)、「いろんな機能がついているが、友達づくりには必要ない」(中学2年生)▼また、「スマホを持たないほうが人とのコミュニケーションが活発になる」と言う55歳の会社員は、「何か調べたいときは、周囲にスマホをもっている人が必ずいるから、その人に聞く」と▼「これ一台で何でも出来」てしまえば、人間は孤立化する一方。マルチメディアの新たな課題かもしれない。
(11月28号)
「複写業と訣別!」。近畿の奥座敷ともいわれる有馬温泉で、このような胸迫る宣言が響きわたった。日本複写産業協同組合連合会(複写連)が日本ドキュメントサービス協同組合連合会(DS連)と名称を変えた(前号に有馬全国大会の記事)▼過去の『青写真』業界から、『複写』、そして『ドキュメント』へと、新たな第3ステージが幕開いた▼『ドキュメント』という言葉は小紙ではこれまで使い慣れた語ではあったが、あらためてその由来をこの大会で知った。楠本副会長の説明によると語源はラテン語の「Docare(ドケーレ)」で、意味は「教えること」だという▼「コミュニケーションの道具であるドキュメントの情報によって人が動き、価値を生じる。それが端緒となって社会の発展に寄与してきた」「過去、私たちの業界から発した青写真を描く≠ニいう言葉は価値創造への夢を絶妙に表現していた」▼いまや「ドキュメント」は映像や音声、さらに香りや触感まで含まれるメディアだという意見もある。DS連では「まずは紙に中心をおいて、そこからスタートしたい」としている▼デジタルデータの入出力を軸にドキュメントの企画・制作から流通・保管までトータルにサポートし、新たな顧客を開拓していく▼「原点は、一枚のコピー。けっして複写の魂≠棄てたわけではありません」。
(11月14号)
半年ほど前に紹介したビジネス小説『ザ・マネジメント』には「大村事務機」という地域の事務機販売会社が登場する。社員どうしでビジョンを共有し、情報を活用して、営業のやり方を立て直し、業績を向上していく物語だった▼この大村事務機は架空の会社だと思っていたが、実際のモデルがあることを知った。長崎県大村市の九州教具(船橋修一社長)▼同社は、文具から事務機、オフィスICTソリューションと事業領域の幅を拡げてきた。さらにホテル事業も展開し、『九州で最も宿泊したいホテル』ナンバー1にランキングされている▼先日のウォーターネット事業説明会で船橋社長は、CSV(共通価値の創造)経営によって企業活動と地域活性化に取り組んできた実践の様子を紹介した▼「人口の少ないこの地を日本一のICT田舎≠ノする」「当社の役員は立候補制で決める」など取り組みはユニーク▼そして、「1990年前半のバブル崩壊とともに、拡大路線で突き進んできた『経済の時代』は終わった。その後は多様な価値観の『文化の時代』へとパラダイムシフトが起きた」と説明した▼20年以上も経つのに、『時代』が変わってことに気づかないから多くの企業は苦しみが続くのか▼船橋社長は「『文化の時代』では、他社を真似しても通用しない」と忠告の言葉を付け加えている。
(11月7号)
ノーベル賞を受賞したオートファジー理論のニュースを見ていて、理解できないながらも、高校に入学したとき生物の参考書に「一様性と多様性の両方を考えることが研究を進めるうえで大切」という序文があったのを思い出した▼それとは何の関係もないが、先月二つの展示会を取材して、それぞれの主催者が考えるコンセプトに一様性と多様性を感じた▼ムラテック販売が全国十か所で開催したフェアは、「情報セキュリティ、ワークスタイル変革」の統一テーマを掲げ、同社の方向性を示した。昨年までのフェアでは拠点ごとにやり方が異なったが、複合機に次ぐ第二の柱を育てるには各拠点とも共通の認識・意志が必要だと判断▼その逆のやり方が目をひいたのは、大塚商会が今月まで全国十六か所で開催している「ビジネスソリューションフェア」。従来は会場設営の形が全国統一だったが、今回は各拠点の営業責任者の要望に応じてレイアウト変更するなど、それぞれの会場が個性を放った▼ひとつにまとまったほうがいいか、それともバラバラのほうがいいか、戦略の立て方は企業それぞれだであるし、試行錯誤しながら進展していくのだと思う▼オートファジーに取り組む大隅教授も観察や実験を繰り返し、「この研究はまだまだ発展途上」だと。ただ、ビジネスでは何十年も年月をかけていられないが。
(10月24号)
「環境負荷低減への取り組みや社会貢献、そういうことができるのは大企業だけだ。うちには関係ない」。小規模店主の読者と話していて、そんな言葉が当たり前かのように飛び出した。社会的規範や企業倫理について多少は意識していても、人手も予算も充分にかけられない企業はこの読者の他にも多いと思われる▼業界では、大手のメーカーや販社がこれらを支援するサービス提供に乗り出している。これまで自社内で実践し蓄積してきたノウハウを事例としてまとめ、取引先や顧客に提供する▼これによって小さな会社は低コストで習得、活動することができるようになる。環境対応やコンプライアンス経営に反する行為はいまや社会問題となるので、小企業にとっても業績を左右しかねない重要な要件▼このところ粉飾決算や業法違反は近年増えているという統計があるが、実際のところ企業の倫理感は昔に比べて低下しているのだろうか?それとも、法令が厳しくなってきたからか▼かつては全国各地で結成されていた業界団体の活動が希薄になってきている。昔は会員どうし横の関係が密で、互いに社是や社訓、社風を認めあうことでモラルが保たれていたように思う▼いま共有しているのは販売成功事例だけかもしれない。文章情報を扱う業界なら、経営ノウハウを整理して活用する能力が備わっているはず。
(10月10号)
ITが進展し、データを事務処理するシステムの便利さは目をみはるばかりだが、データの元となる情報が紙に手書きしたものだと、それをデジタル化する必要がある▼「手打ち入力は人間の手作業。ホワイトカラーの非効率な業務は今も厳然として残っている」とAIインサイドマーケティングの永田純一郎社長は指摘する(前々号に記事)▼「製造業では、産業革命の初期の頃は人が機械を動かしていたが、今はロボットが工程の中間を担う。人間の労働は一段と軽減され、生産性はますます高まっている」▼申請書や申込書、伝票、業務日報、アンケート調査の回答など、手書きの定型書類は数多く、これらを手打ちで入力すると時間や人件費がかかる。AIインサイドが提供するOCR活用サービスは独自の人工知能技術で99・89%という高い精度で手書き文字を認識でき、導入したある企業では繁忙時の残業時間が50時間減少し、入力スタッフも10名から5名に減るなど事務効率が上がったという▼…この乱筆の文字は数字の『1』なのか?それともカタカナの『イ』なのか?…人工知能は前後の文脈などから判断する▼最近、若い人たちのペンの握り方が気になった。記者が小学校の時に習った持ち方と違って書きにくそう。やはり字も読みづらい。人も読めない字を人工知能は読み解いてくれる。
(10月3号)
今年の日経ニューオフィス賞の受賞社は製造業が目立った。ニューオフィス推進協議会の三栖会長は「新しい技術や製品を造り出していくための環境づくりに精力的に取り組まれる姿勢に目をみはる思いがした」と述べた(前号に記事)▼近畿ブロックの表彰式に行って、以前事務機ディーラー団体の事務局を長年務められた青山さんにお会いした。ご高齢になられたが、お元気で今の業界の情報にも通じておられる▼歓談していて、シャープの創業者、早川徳次氏との思い出話を聞いた。何かの打ち合わせで昼食を共にしたとき、割り箸の袋を捨てず、紙片も大切にする方だった、と▼早川氏や松下幸之助氏ら明治生まれの先駆者と直接言葉を交わしたエピソードが聴ける業界人は希少になった感がある▼先月、シャープの新社長に就いた戴正呉氏から社員へおくられたメッセージ文を読んだ。「早川創業者の経営理念や信条など、創業の精神は引き続き根幹となるべきもの」と記し、銅像へ献花したという▼オフィス向けの事業では「ワーカーの生産性を向上し、経営者がより的確に判断できるように、人にフォーカスし、快適で創造的な新しいオフィスの形を作っていく」とニューオフィス賞の方針と重なる▼今後は「ブランドを私たち自身で磨き上げ、グローバルで輝かせたい」▼製造業が再び輝く姿を切に望む。
(9月26号)
新商品の開発や新たな営業戦略の考案など、これらアイディアを生み出せるかどうかは社内コミュニケーションにかかっている、との考え方が昨今広がっている。そのための職場環境づくりが重視されるようになった▼オフィス内に喫茶コーナーを設けたり、机の配置を斜めにして社員どうしが接触する機会を増やし、何気ない会話から斬新な発想が生まれることを期待する▼部署や世代を越えて気軽に話し合えば、場の雰囲気は明るくなる。だが、単に雑談するだけで本当に革新的なアイディアが生まれるのだろうか?▼作家の森博嗣氏は著書『孤独の価値』のなかで「最近、コミュニケートすることばかりが強調されているように思えてならない。現代人はあまりにも他者とつながりたがっている」と述べている▼そして、「物事を発想し、創作するという作業は個人的な活動であって、それには孤独≠ェ絶対に必要だ」と訴えている▼たしかに、芸術作品を手掛ける創作者だけでなく、組織で計画を進めるときも最初に起案するのは一人であることが常だと思われる▼小紙の読者や取材先の担当者は組織の長や責任者である方が多い。以前、インタビュー中に「自分は孤独だ」と漏らす経営者がいた▼勿論、独りよがりでは折角の名案も頓挫しかねない。雑談の前後に黙考できる環境作りも必要かもしれない。
(9月12日号)
電通パブリックリレーションズが先ごろ「企業広報力調査」を実施した。様々な業種533社が回答したデータを「8つの広報力」という視点で分析している▼「8つ」とは、「情報収集力」「情報分析力」「戦略構築力」「情報創造力」「情報発信力」「関係構築力」「危機管理力」「広報組織力」▼業種別でトップだったのは「電力・ガス」、2位「運輸・倉庫」、3位「食料品」「金融・証券・保険」、そのほか「情報・通信」「繊維・化学・医療」「機械」「電気機器」」「サービス」「卸・小売」「建設」「不動産」などが続いた▼上位企業が高いポイントを獲得したのは、「情報発信力」と「情報収集力」。この二つは近年レベルアップしているという▼「今後強化したい」のは「戦略構築力」「情報創造力」「危機管理力」。それらに紐づく回答として「中・長期的な広報戦略・計画を作成している」「競合企業の戦略を分析し、対策をとっている」「ステークホルダー別に、獲得したい評価や、戦略を設定している」があがった▼これら回答していたのは大企業ばかり。先日、小企業を対象に攻めの広報≠訴求するPRエージェントに会った。社会性と成長力を兼ね備えた未上場会社を発掘するのが理念だという▼事務機販売の現場も昨今は顧客の事業成長を支援することが重要になってきている。小企業ならでは広報戦術を会得したい。
(9月5日号)
製品を「見て、触って、使って、」。先月開かれた文紙メッセで主催者が発信していたコンセプト。数々の体験コーナーが設けられ、来場者が会場に滞留していた時間は例年よりも長かったらしい▼当方、新製品の情報をメーカーから送られてくるプレスリリースで日ごろ目にはしているが、実際に実物に触れてみると、機能が進化しデザインも斬新であることが実感でき、どの商品も欲しくなった▼企画イベントのトークセッションでは商品開発コンサルタントが自動車業界や化粧品業界の例をあげて文具業界にさらなる奮起を促したという。「車も化粧品も、一人のお客に対して、年齢に応じて品揃えしている」▼そういえば、「子どもの頃に文具に馴染んでもらい、大人になっても親しんでほしい」という納品店主の信条を思い出した▼オフィス向けの事務機販売店には気の長そうな話しに聞こえるかもしれないが、地域の顧客と関係を築きあげるには、年月がかかり、法人ユーザーの成長を見つめてきたと思う▼好業績をあげている販売店は顧客のニーズを聞き込み、様々な機器やシステム、サプライ品にいたるまで重ね売り≠実行しているという▼同一顧客へ重ね売りすることを「クロスセル」と言うらしい。従来のストック型ビジネスに加えてクロスセルを展開することで、企業体質の強化が期待される。
(8月29日号)
今年の京都流議定書イベント(前号に記事)の鼎談では、「バリアバリュー」という理念を掲げるミライロ代表・垣内俊哉氏の発言が印象に残った。「(一般的に日本人は)社会的弱者に対して、『無関心』か『過剰』か、どちらか両極端の態度をとる」▼なぜ二極化するのだろうか?考えていたら、その三日後に相模原の障がい者施設で凄惨な事件が起こった。犯人は「弱者」を支援する立場にいた▼骨形成不全症の垣内氏は子どもの頃「歩けるようになりたい」と願い続けたが、叶わず、高校生のとき三度自殺を図った。その後「歩けないままでいい」と考え方を切りかえて会社を設立した▼相模原の事件の犯人は「弱者」を介護する現場を経験するなかで、どのようにして寄り添う≠アとをやめ、この世から抹殺≠キる思想に切りかわったのか▼「非効率なものは排除する」という優生思想? もし、私たちも「意思疎通が困難だと、社会で不利益を被る」という価値観だけで普段仕事をしているとしたら、この事件は我々にとって無関係な問題ではなくなると思う▼業界としては、防犯カメラを増設したのに未然に防げなかったことよりも、地域のなかにダイバーシティ(多様性)が根づかないのは何故なのか考えるほうが先なのでは▼意識の二極化を防げば、多文化が共生できる社会が実現するのではないかと思う。
(8月15日号)
先月亡くなった作詞家の永六輔さんは終戦後、ラジオに興味を持ち、焼け跡の金属を換金して秋葉原で部品を買って鉱石ラジオを組み立てるグループを作った。その後ラジオやテレビ放送の語り手として長年活躍した▼民俗学者・宮本常一氏からの助言を実行したという。「ラジオは電波だ。電波はどこにでも飛んでいく。だからきみもどこへでも飛んで行って、スタジオでなく、電波が届いた先がどうなっているのかを見聞きしなさい」▼現場≠大切にする人だったことがうかがえる。事務機販売の要諦も同様。各販社が注力する業種展開も、その狙いはユーザーの現場を知ることにある▼従来のターゲットは「オフィス」だったが、オフィスでの事務作業は関節業務。その企業の売上や利益の拡大に直接関わる「現場」でユーザーの仕事に貢献するサービスを提供することが重視されるようになった▼「オフィス」の領域よりも、オフィスの外の現場のほうが、投資意欲も高まり、マーケットは広がる、と▼現場主義に徹した永さんは日本の各地で生活する人々の心情を細やかに伝え、昭和の伝道師と呼ばれた▼事務機販社で営業やサービスを担う人たちも業界の語り部として、現場で儲けられる<\リューションの伝達が期待される▼コミュニケーションの手段は、電波よりもフェースtoフェースがいい。
(7月25日号)
沖縄のある新聞配達店から電話がかかってきた。「デジタル商業印刷機についてお聞きしたい。導入した企業はどんな使い方をしているのか?また、おすすめの製品はありますか?」▼同店は地元の「沖縄タイムス」や「琉球新報」の専売店ではなく、全国紙など本土≠フ新聞社が発行したものを扱っているという。それらは東京や大阪から輸送され、購読者に配達している▼小紙も以前は国際エクスプレスサービスを通じて注文を頂いていた。距離の遠さからか海外諸国へ送るのと同じ感覚でいたかもしれない▼輸送のために費用や時間がかかる。デジタル印刷システムを導入すれば、コンテンツデータを各新聞社から受信して、自社で出力して新聞を容易に入手することができる▼また、「これまではチラシの無い新聞を配達していたが、今後はチラシも折り込みたいので、広告丁合機や中入れ機 紙揃え作業機などについても教えてほしい」。▼さらに、新聞配達以外の新たなビジネスも考えているらしい。沖縄の観光ホテルに、パンフレットや宿泊客向けのミニコミ紙などを提供する事業を計画しているという▼その夢のある構想にしばし聴き入った。「まだ仮称だが、『沖縄デジタル印刷センター』が完成したら、取材に来てください!」▼オンデマンド印刷は様々な可能性を拡げる。業種・業態も一気に変革しそう。
(7月11日号)
小・中・高・大の学校教職員が来場する「NEWエデュケーションEXPO」は今年も盛況で、「教育の情報化」や「学校の環境づくり」、「校務支援システム」など多彩に提示された▼この業界で最近ホットなキーワードとして注目されているのが、アクティブ・ラーニング。「能動的学習」と訳され、最初は大学で実施されたが、文部科学省は小・中・高でも推進する方向性を打ち出した▼教師の話しを一方的に聴くだけの受け身な学習の仕方では、「主体的に考え、学ぶ力を持った人材が育たない」という判断▼展示会場内に設営された「フューチャークラスルーム(未来の教室)」では、一人一台のタブレット端末や巨大な電子黒板を使って双方向のコミュニケーションが活発に行なわれた。遠くから見ていると、ワークスタイル変革を促すビジネス向けのプレゼンテーションのようにも見えた▼展示会の数日後、佐賀県立高校の生徒の成績情報が流出する事件が起こった。同校は全国の公立校のなかでも電子黒板の設置率やパソコンの整備率が格段に高いICT化の先進校なだけに、導入していた校務支援システムのネットワーク管理が杜撰だったと文部科学省はショックを受けている▼犯人≠ヘ17歳の生徒。何に対して「能動的」に行動すべきなのか、OA販社は機器提供の他にも支援・提案することがあるのでは。
(7月4日号)
日本には約570万の小売店舗があるらしい。これは海外諸国に比べて多いほうだとか。そのうち、販売時に取引を記録する機械、レジスターを使用している店舗はいくつあるのだろうか▼現在、国内でレジスターを使っている店舗と、今後レジスターを導入する可能性のある店舗を合わせると約300万あると聞いた▼リクルートライフスタイル社がビックカメラ店のOA機器売り場に「Airレジ」のサービスカウンターを開設した(6月13日号に記事)▼これはレジ業務がスマートフォンやタブレットで行なえるクラウドのアプリで、商品登録や会計入力、売上集計、レシート印刷、キャッシャー連携などの機能がネットワーク環境で利用できるモバイルPOSレジシステム▼お金を入れるキャッシュドロアに電卓とレシート印刷機能が付いたガチャレジ≠ヘ従来の「機械」のイメージがあるが、これとは異なるため、店舗経営者は興味を示す人もいれば、全く関心のない人など反応は様々▼中小規模の店舗や個人事業者にこの目新しいアプリをどう説明するか。ビジネスユーザーに初めて向き合うリクルートL社は「対面しかない」と判断しサービスカウンターを設けた。ビックカメラは「これまでOA機器を買いに来てくれていたお客様が誰なのか把握できていなかった」と▼ともに顧客関係強化に乗り出す。
(6月27日号)
J・D・パワー社がコールセンターの満足度調査結果を発表した。調査を実施した対象は金融や保険、通信事業、自動車メーカーなどで、事務機は見あたらないが、「オペレーター対応や運用改善に取り組む企業が業界を問わず増加した」と評している▼高評価を得た上位企業にはいくつかの共通点があり、その一つが「オペレーターへの電話の繋がりやすさ」。自動音声で案内したあとオペレーターが応答するまでの待ち時間が全体平均では4・4分だったのが、上位5社の平均は2・1分▼電話をかけて一回で繋がった割合も全体平均が74%であるのに対して上位企業は88%と高かった▼業界別の評価で昨年より大幅に上昇したのは自動車メーカー。過去2回の調査ではリコール問題で満足度が低かったが、「少しでも顧客のストレスを軽減するために受付の方法や対応の内容についての改善が行なわれた」としている▼企業に問い合せを行うとき、ウェブや対面などいくつかチャネルはあるが「なぜコールセンターを選んだのか」という問いには、「迅速に解決できるから」と四割が回答した。「すぐにオペレーターと話せる」はユーザーの率直な期待▼事務機のメンテナンス対応も速いに越したことはないだろうが、「普段顔をあわすサービスマンなら待ち時間は気にならない」という声を聞いたことがある。
(6月13日号)
OAに対してPAという語がかつて存在した。パーソナル・オートメーション。シャープが社内で用いていたという▼先月、パーソナライズ機能≠備えた複合機の新製品が続々と発表された▼キヤノンの新しい「イメージランナー・アドバンス」は、操作を始めるときの初期画面や表示言語、アドレス帳などの設定を一人ひとりのユーザーに合わせて最適化。さらに、その個々人の設定を同一ネットワーク内の他の複合機に同期させることもできる▼東芝テックの「e-STUDIO」も、スマートフォンやタブレットを操作するような感覚で使用できる画面を採用。その人がよく使う機能を先頭のページに配置したりアイコンを大きくするなどユーザーの利用環境に合わせて好みの操作画面にカスタマイズできる▼昨今モバイル機器が急速に普及したことで、OAから再び新たなPA時代を迎えたのか、オフィスで皆が共に使う複合機にもパーソナライズ化の波が押し寄せた感がある▼ユーザーが普段パソコンやモバイルを使う頻度や時間は相当なものだと思うが、複合機はどのくらいだろうか▼「イメージランナー・アドバンス」は百十五の新しい機能を搭載し、そのうち七十五はユーザーの声を反映させたという。多くのユーザーが頻繁に使えるよう促せば、地味な&。合機の存在感は高まるにちがいない。
(6月6日号)
顧客の潜在的なニーズを掘りおこし、きめ細かに対応する。そうした高度な接客術を企業のアルバイト員が実践している話を聴いた▼東芝テック中核ビジネスパートナー会総会で講演した齊藤泉さんは新幹線の車内で手押し車に飲食物や土産品をのせて客席間を売り歩くワゴンサービスの販売員。20年以上時間給で働いている▼他の販売員の売上げが1回の乗車で平均7〜8万円のところ、斎藤さんはその三倍を売り上げるという。この講演を聴く前は、誰がやっても同じではないのかと疑問に思ったが、聴き終えて、三倍の実績を上げるのは当然だと納得した▼仕事に取り組む五つの心掛けがあるという。@今日出遭うお客はどんなニーズがあるか予測を立てるAその準備をするB予測が当たったか確認するC修正するD一日を振りかえる▼@で予測を立てるとき、朝起きたら天気予報やニュースを見る前に自分の五感を意識すると「昨日とは違った一日が始まる」「同じ日は存在しない」と新鮮な気分になり、いろんなアイディアが湧いてくるという▼Bではお客をよく見ることで自分が何をすべきか手掛かりをつかみ、チャンスを広げる▼Cでお客に響くアプローチの仕方が磨かれ、Dでその日を反省し、考える力をつける▼今度新幹線に乗って車内の通路を歩くとき乗客をそれとなしに観察してみようと思う。
(5月30日号)
先月紹介した、元リコージャパン・販売力強化センター長の杉山大二郎氏による新刊ビジネス小説『ザ・マネジメント』は、大手メーカー販社の営業部長を務める主人公が業績低迷する小規模の事務機販売店に出向し営業を立て直す物語▼読んでいて、今年の1月に取材した業界の賀詞交歓会を思い出した。「組織を活性化させるのは幹部の役目だ」という発言が印象に残っていた。この集会に出席していたのは各組織で指揮をとる人たち▼『ザ・マネジメント』はフィクションとはいえ、販売店の窮状が生々しく描写されていて、どれも実際にあった話ではないかと想像してしまう▼「業績が悪化するのは商品の売上構成比に問題がある」「部署が違うと温度差も時間の流れ方も異なる」「創業者が院政を敷くため次の世代が育たない」「担当がかわっても顧客と関係が継続できる仕組みを作っているか」「大手販社が採算度外視の安売り攻勢をかけてきた」…▼主人公は、ビジョンを共有し、情報を活用することで社員一人ひとりの意識を変えていく▼先日他紙が「昇進を嫌がる若者が増えている」と報じていた。「部下の世話でストレスをためたくない」などの理由らしい▼著者は「リーダーは楽しくてやりがいのある仕事」だと訴える。過酷な現場が描かれる小説だが、人の生き方に共感することの喜びが伝わってくる。
(5月16日号)
外出先や自宅で仕事をする多様な働き方≠ェ増えるようになると、社員どうしが打ち合わせをしたり話し合いをするミーティングや会議の仕方も変わってくる▼それぞれの社員が同じ時間に一ヶ所に集まることが難しくなり、会議室に集合しなくてもコミュニケーションがとれる仕組みとして注目されているのが、テレビ会議や遠隔会議システム▼互いに情報を伝え合うのは電話やメールでもできるが、それでもテレビ会議が調法されるのは、やはりコミュニケーションはお互いに顔を見て行なうのが一番だと多くのワーカーが自覚しているからだろう▼テレビ会議は参加者それぞれの熱意や細かいニュアンスが伝わってきてコミュニケーションが円滑になる。移動時間の無駄がなくなって交通費や宿泊費も削減できる。移動による時間や疲れ、ストレスも減って、別の業務に集中できるのもメリット。さらに最近は低価格のWeb会議も品質が向上している▼ただ、「この便利なシステムを営業の現場で用いるときは注意を要する」との意見を聞いた。「テレビ会議はたしかにコスト削減を実現してくれる。けれども、顧客に対してコストを削ったら逆効果を招く。なぜなら、手間暇をかければかけるほど深まるのがコミュニケーションだから」と▼今後は、臨場感に加えて、共感力を高める機能が付加価値になるかも。
(5月2日号)
紙を沢山使う業界の一つに不動産業界がある。住宅物件の売買価格や相場が記載された不動産取引情報はインターネットで引き出せるが、これを基に作る物件情報は紙で作成されるのが主流でこれをベースに消費者向けにチラシとして大量に印刷される▼この物件情報には「帯(おび)」と呼ばれる、不動産店舗名や営業担当者名などが記されている箇所がある。仲介業者は「帯」の内容を自店舗の情報に張り替えて顧客に提示するが、手作業で行なうため時間を費やし負担となっている▼OKIデータが発売した「どんな帯でも自動認識張替えソリューション」は複合機のタッチパネル操作で張り替えることができ、30分かかっていたのを5分に短縮▼同社社員が賃貸マンションを探している時に思いつき、不動産屋を何軒もまわって足で開発した<Aプリケーション▼日本国内には約28万店の不動産店舗があり、海外でもこの業界は小規模事業者が多いという▼先日、近所の不動産屋さんと話す機会があった。チラシは自分で手作業で作って、地域の住宅や団地に半日で千枚以上を配布、それが仕事の基本だという▼世間ではやや強引で出来高制など荒っぽく見られがちな業界だが、今後はホテルのコンシエルジュのように上品な顧客対応を目指していく風潮があるという。事務機屋もそんなふうに変わってきているのかも。
(4月25日号)
監視カメラの市場が拡がり、二年後には世界市場規模が4千3百万台を超えると予測されている▼日本国内をみても、銀行やコンビニにとどまらず会社の受付、公共機関、学校、店舗、マンションなど様々な所で見かけるようになった▼今後ますます需要が見込める情報機器といえる。これらが設置される目的は「犯行の未然防止」「証拠映像の記録」▼行動経済学者によると、たいていの人間はちょっとしたズルやゴマかしをする習性があるという。例えば、自動車が走っていない道路を赤信号で渡ったり、硬貨を入れなくても作動する清涼飲料水の自動販売機でお金を払わなかったり。周囲に誰もいなければ▼そのような現場で、人の目の写真を貼り出したら、ルール違反を犯す人が三割減ったという実験結果があるらしい▼誰かに見られているという意識があると、マナーやモラルの低下が防げるということか。小さなズルやゴマかしがエスカレートして、大きな不正につながることがある。昨今次々と発覚する不祥事は他人事ではない▼前号と今号では各社の入社式での訓示を伝えている。倫理観を強調した言葉が印象に残った▼「まず何をおいても人として正しい倫理観を持つことが大切。倫理観を持たない企業は社会で活動することは許されない。皆さんにはこのことの大切さをあらためて認識し、日々の仕事にあたってもらいたい」。
(4月11日号)
一昨年頃からのキーワード「ワークスタイルの変革」が近頃は様々な業界で叫ばれるようになった。働き方をどう変えるかは色んな観点や手法があるが、OA業界が重視するのはペーパーレス化▼昨年社内保管文書ゼロ化≠フプロジェクトを立ち上げたコニカミノルタはこの夏に達成する見込み。スキャナメーカーのPFUは現在8%まで保管文書を削減している▼PFUは一昨年の秋に川崎市から横浜市へ移転した際に社員1千5百名がそれまで一人あたり17個の紙ファイルを所持していたのを、引越しを切っ掛けに整理・処分し、たった1個分に減らした▼その量を長さで表すと東京スカイツリー3本分に相当する紙ファイルの数が、横浜マリンタワー1本に納まったという▼スリム化を果たした新しいオフィスでは業務のスピード化や社員間のコミュニケーションが高まって働き方は大きく変わったそうだ▼同社によると、削減するのは保管する℃文書であって、業務中にやり取りする文書はやはり紙のほうが便利で正確なことがまだまだ多いという。たしかに小紙の場合でも記事原稿の校正作業は電子画面上ではミスが多くなる▼「紙」の文化が根強い日本のビジネス現場。「紙は使うが、残さない」ようにするためには、「電子化」した後、それらを扱いやすくする情報化≠フ提案が欠かせない。
(4月4日号)
4月1日からJRRC(公益社団法人日本複製権センター)が、出版者や新聞社から複写等に係る権利を直接受託する「個別受託制度」を開始した。これは小紙のような業界新聞の記事も著作権を保護するという新たな動き▼例えば小社には時々、購読者から「このあいだおたくの新聞に載った記事をコピーしてうちの社員に配ってもいい?」という電話がかかってくる。今後JRRCと管理受託契約を結べば、「もういちいち電話しなくてもいいですよ」ということになる▼出版物などの記事を著作権者の許可を得ないでコピーやスキャンをして誰かに渡したりすると、それは違法となるが、そういうことに無頓着な人がわりと多い。許諾を得ようと電話してくる人はそういう意識をもっているが、何も知らずに平気で複製している人は少なくなさそう▼仕事で法務や知的財産権に関わる人でないと著作権法について考えたこともないというのが現状だとか。業界新聞も自分が権利者だと自覚していなかったという記者がいた▼全国あらゆる業界のなかでも事務機の業界は複写機やスキャナ機器という違法行為を助長する(?)道具≠日々扱っている集団ともいえる▼小紙など事務機器関連の業界紙と機器提供者は共に、利用者(ユーザー)に向けて著作権のルールと道具の正しい℃gい方を率先して伝える義務がある。
(3月28日号)
コニカミノルタや京セラドキュメントソリューションズなど複合機業界の社員が地域の小学校や中学校に出向いて「コピー機の仕組み」を児童・生徒に伝える『出前授業』が活発に行なわれている▼目的の一つは「理科離れ」をなくすこと。科学が身の回りの製品にどのように応用されているかを知ることで学習意欲を向上させる。さらに、キャリア教育の観点からも出前授業は注目されている▼学校の先生から教わるのではなく、職業として携わる企業人と接することで、学習することと社会で生きていくことの関係を肌で感じる。フリーターやニートが増える昨今、働くことに対する意識や行動に影響を与えることへの期待ともいえる▼白い紙にコピーやプリントで文字や画像を鮮やかに浮かび上がらせるのは今や当たり前の光景。操作が上手くいかなければ電話ひとつで技術者がすぐに解決してくれる、そんな時代だけに、大人でさえ機械の中身に関心をもつことが少なくなっている▼数年前「出前授業」を取材に行ったとき、電気エネルギーが「光」や「熱」、「運動」へと新たなエネルギーに生まれ変わる様子を童心にかえって見つめた▼活き活きと目が輝く子どもたちの表情をカメラに収めたが、肖像権とやらで掲載できなかった。今度はシャッターを切るより、生の感想の声を一人でも多く拾おうと思う。
(3月14日号)
大塚商会のオフィスサプライ通販「たのめーる」のwebサイト画面がリニューアルされ、『検索』の箇所が以前よりも大きな表示に変わったらしい。昨今のユーザーは欲しい商品を探すとき、目次から調べるよりもキーワードを打ち込むようになったため▼サイトに掲載されている商品点数は15万。紙のカタログ冊子は2万5千点。だからといってカタログ誌の発行部数は減っていないという。ペラペラめくりながら探すのもユーザーの楽しみ▼『検索』という言葉はいつ頃から広まったのか。平成10年までの広辞苑ではこの語の意味を「(本の中に記されている事柄を)調べ探すこと」、使用例として「索引で語を検索する」と説明していて、一般には馴染みのない言葉だった▼インターネットが普及し、この語の知名度が上がる。平成20年の広辞苑での説明は「データの中から必要な事項をさがし出すこと」に変わった▼業界各社は次々とwebサイトを立ち上げ、「これまで接点のなかった顧客から注文を受けるようになった」と効果を語る。「何か調べごとがあるときは、まず『検索』してみる。そういう時代になった」と▼先日、88歳の伯母から「『検索』ってどういう意味?」と聞かれた。新聞やテレビでこの語を頻繁に目にするようだ。BtoCに目を向けるなら、まだまだ大きな市場が埋もれているのでは。
(3月7日号)
先月は中華圏の旧正月にあたる春節の連休があった。それに合わせて観光客が押し寄せ、国内の小売や観光業界では爆買い≠ェ昨年以上に沸騰する、と期待が高まった▼だが、「思ったほどの勢いはなかった」とか「去年よりも落ち着いたかんじで、肩すかし」という声が聞かれたという。訪日外国人によるインバウンド需要に陰りが見えはじめたのだろうか?▼先日、海外から戻ってきた知人が「完成品を造る諸外国の技術が日本に追いついてきた。部品産業もアドバンテージが取りにくくなりつつある」と危惧していた▼それでも、日本が自信をもって誇れるものがあるという。それは、おもてなしのサービス精神。「海外では高級ホテルでも接客態度にがっかりさせられることが少なくない」と▼電通が実施した「ジャパンブランド調査」によると、「日本の好きなところ」の上位には「伝統文化」「食」「自然」「技術力」のほかに「日本人の気質」として「勤勉さ」や「親切さ」などホスピタリティーがあがっている▼この国でずっと暮らしていると気づきにくいが、これこそ高付加価値の日本の「ブランド」かもしれない▼日本の企業はそれぞれの顧客あわせて提案できる対応力を磨きあげてきた。とくに「モノからコト」へと体験を通して価値提供する所作を身につけたこの業界は得意とするところにちがいない。
(2月8日号)
先月開かれた情報ビジネスリコー会での講演は、POD(プリントオンデマンド)をテーマとした研修ではなく、電子看板ビジネスへの誘いだった。演題は「ビジュアルコミュニケーションによる新たな顧客ニーズへの対応〜急成長するデジタルサイネージ市場への商機」▼3月にジアゾ感光紙の販売が終了し、複写業者の次代の糧としてPODが注目されているが、電子看板は「紙」とは全く別次元のシロモノ。とはいえ、看板は従来、紙や板に手書きで表現されてきた媒体なので、時代による変革の着眼点が活かされる分野▼講演では冒頭の枕≠ゥら惹きつけられた。スクリーンに映し出された動画を指して講師が「この、回転するネコのイラストを見てください」と紹介。このネコは右向きに回り続けているのか?それとも左か?▼聴講していた70人の会員は、約三分の一が「右回り」、約三分の二が「左」、5人が「左右交互に行き来している」と回答した▼正解は「交互」だった。当方も、講師が言った「回転する」を鵜呑みにして錯覚していた。物事を自分の目で素直に見つめることの難しさを痛感▼講演後、「正しく見るにはどんな訓練をしたらいいんですか?」と尋ねたら、「歳がいくほど難しい」と▼先入観をいかに取り払うか。青焼きの全盛期を体験した人ほど発想の切り換えが難しいかもしれない。
(2月1日号)
ビッグデータやIoT、人工知能ロボットなど昨今は第4次産業革命と言われているが、最初の革命の頃、日本では明治時代に様々な分野で変革が起こった▼それまで人力車や馬車で移動していたのが蒸気機関で運べるようになったり、力織機が導入されて手織作業を圧倒するなど、この頃の世の中の変わりようは今よりはるかに激動だったのではないかと思う▼今、弊社オフィスのすぐ近く(大阪・肥後橋)にある大同生命大阪本社で、当時の実業家・広岡浅子が活躍した資料の展示イベントが開催されている▼現在放送中のNHKテレビの連続ドラマ「あさが来た」のヒロインのモデル▼広岡浅子は大同生命の前身である大阪の豪商加島屋に嫁いだ後、炭鉱事業や銀行、保険業を手がけ、女子教育にも心血を注いで日本女子大学校の創立にも関わったという人物。いま注目されている「女性が輝く社会」に貢献した先駆者ともいえる▼七転び八起きを超える「九転十起(きゅうてんじっき)」が座右の銘だったという▼ドラマで主人公は幼い娘にこう話しかける。「お母ちゃんな、商いが好きなんどす。みんなで力あわせて、山があったら乗り越えて、ようよう考えて、ええほうにええほうに向こうていくのが、好きで好きたまらへんのだす」▼この台詞に深く共感された本紙読者は多いのではないかと思う。
(1月25日号)
本紙恒例の全国ディーラーアンケートが30回目を数えた(集計結果は1月4日号に掲載)。この調査を開始した昭和の終わり頃はOAブームに沸いていた時代だったので、さぞ満足度の高い回答が多かったのではと当時の紙面を開いてみたら、案外そうでもなかった▼「販売競争の激化による値引きで利益率が低下、機器単価も低下する二重苦で厳しい局面に立たされ…」という記述があり、七割近くの販売業者が「厳しい」現状を訴えていた▼当時の調査ではその年の業績についての問いを設けていなかったためか、回答に応じてくれる企業が多かった▼近年は毎回のように業績を聞いている。今回の集計で際立った項目は、その業績だった。「増収」が25%、「減収」44%、「変わらない」が18%となった。昨年も増収企業が減って減収企業が増える傾向にあったが、絶対数で増収企業が減収企業を上回っていた。だが、今回は減収企業が増収企業を上回るという事態となった▼さらに懸念されるのは、例年回答を送ってくれていた企業が減収減益のためか回答を拒否されるケースがみられ、減収企業のウェートは相当数にのぼるかもしれない▼長年競う合うことで互いに励みとなり、この業界は鍛え上げられてきたのだと思う。ただ、30年前の記事の見出しにも競争の上に「過当」の文字が乗っていた。
(1月18日号)
じかに聞くと、改めて考え込んでしまった。「ここ10年、複合機の業界はイノベーションが起こっていない」。先月、京セラドキュメントソリューションズが実施した「アイデアソン」の開会挨拶で語られた言葉▼グループに分かれ長時間にわたってアイデアを出し合い、それらを皆の前で発表する、このようなイベントを開催した趣旨▼実際のところ、各メーカーから発売される複合機は、その性能や機能はいつも進化している。とはいえ、進化しても価格が上がらない。上げられない。ユーザーから当然のように値下げを要求される▼販売の現場でこのような事態が10年も続くと、新製品の開発・設計・製造に携わっている人たちの無念さはいかばかりか。MFPという洗練された呼び方をするようになったのに、その価値がユーザーに伝わっていない▼「業界各社は新たな変革を待ち望んでいる」と挨拶は続いた。「アイデアソン」では業界外からの参加者も募り、各自が自由に発想したことをホワイトボードに描き出したり付箋を貼り付けたりと活発な話し合いが繰り広げられた▼司会進行役はITシステムのコンサルタント。話しかけると、「例えばクラウドでプリントする作法を考え出したのは紙を出力する業界ではない」とコメントをくれた▼現状から脱する手立ては。異業種との共創で革新を期待。
(1月4日号)
「クラウドソーシング」「コンシューマライゼーション」「スマートデバイス」「ビッグデータ」「IoT」…。この業界は昔から外来語が多いが、昨今は溢れ気味のように思える。ユーザーはこれらIT関連用語をどれくらい認識しているのだろか▼ノークリサーチ社が年商5百億円未満の中堅・中小企業に聞いた調査によると、売上改善や経費削減を果たした企業ほど、これらの用語の意味を理解していて、一方、「知らない。聞いたことはあるが、意味が分からない」と回答した企業ほど目標を達成できていないという結果が出た▼日頃からIT関連の情報収集を行なっていない企業は仕事の効率も業績も上がらない傾向がある▼以前、キヤノンMJの村瀬会長が社長だったころ、社内外で外来語をあまり使わないようすすめていたことがある。やはり日本人にしっかり伝わるのは日本語、大和言葉なのか▼冒頭に列記した最近のカタカナ語は和訳するのが非常に困難。もはやこれら自体が日本語化していて、理解できないユーザーは置き去りにされかねない▼明治時代、「経済」や「科学」「時間」など和製語に翻訳した先人の創造力はその後の日本の経済発展の支えになったと言われる▼これまで中小企業のOA化を逞しく推し進めてきた事務機販売業者なら、難語を解きほぐして根気よく伝える底力があると思う。
2016年 ↑
2015年 ↓
(12月28日号)
2015年は、二人の巨星の訃報を伝えた。近畿複写産業協同組合発展の礎を築いた六藤正治氏と富士ゼロックス発展の礎を築いた小林陽太郎氏。お二人とも教育に熱心な経営者だった▼六藤氏は組合員の育成や組織の強化、事業の拡大を図り、理事長に昭和58年から平成16年まで22期にわたって就いた。また、全国組織である日本複写産業協同組合連合会(複写連)の設立にも尽力した▼樺島弘文氏が著した伝記『小林陽太郎‐「性善説」の経営者』では、「人は育つ、育てられるーそれが会社にとって、ひいては社会にとって、大きな成長の原動力になる。小林は富士ゼロックス入社当時の経験を通して、こう確信した」と記されている▼おそらく、お二人とも現役を引退してからも後輩同士のコミュニケーションや新しい発想での活動、技術開発などを見守っていたのだと思う▼いま業界は大きな節目を迎えている。来年3月は感光紙の供給が完全にストップし、「青写真焼付複写サービス」が終了する。複写連ではポストジアゾ時代のサービスを学び、語り合っている最中。一方、富士ゼロックスも既に複写機卒業≠掲げ、ソリューションサービスを加速している▼こうした、事業の構造や組織の体質を変革していこうとする現役の気力や体力は、やはり先人が築いてくれたた土台があってこそだと思う。
(12月14日号)
毎年、京都・清水寺で縦1・5b、横1・3bの和紙に墨で力強く書き上げられる「今年の漢字」。この新聞がお手もとに届く頃には発表されていると思うが、記者は「偽」が今年一年の世相を表わす1字ではないかと予想した▼2015年、企業や団体が不祥事を起こした報道は多かったように思う。旭化成建材の傾きマンション、東京五輪エンブレム、フォルクスワーゲンの排ガス不正、東芝の会計問題、日本年金機構の情報流出、東洋ゴム工業の免震ゴム偽装、タカタのエアバッグ異常破裂、化血研の製造記録偽造、…▼文書情報を大切に扱うこの業界としては残念なニュースが多発したが、「偽」は2007年も選ばれていて、物事を隠蔽する体質はなかなか抜けそうにない▼先々月、京セラドキュメントソリューションズがガートナーシンポジウムで提示した経営哲学「京セラフィロソフィー」は、「約束を守る」「嘘をつかない」「騙さない」「人間として正しい生き方を示す」ために、「全員参加」「ガラス張り」「ベクトルを合わせる」、これらを日々行なっていると説明した▼そして、「京セラは当たり前のことを実行する企業である」と訴えた▼当たり前のことをするのは案外難しいことなのかもしれないと思うのと同時に、当たり前のことを真面目に頑張ってやり続ける人が報われる世の中であってほしいと願う。
(12月7日号)
今から120年前、動く写真(映画)が開発され、劇場で上映されたとき、画面の向こうから駅に近づいてくる列車を見た観客は座席を立って逃げ出したという。モノクロで音声も無く、ドラマ仕立てでもない映像に当時の人々はその臨場感に慌てふためいた▼先月開かれたキヤノンEXPOでは次世代の画像や映像が繰り広げる超臨場感≠堪能した▼参考出品されたインクジェットプリンタや8Kカメラ、ディスプレイなど最新の技術が連携し、例えば高層ビルの屋上から下を見おろしているような、また、実際に美術館や公園に行ったような気分になった▼リードエグジビションジャパンが先月開催したライブ&イベント産業展でも、五感を刺激することが今後のキーワードだと提示していた▼西洋史学者の故・木村尚三郎氏は30年ほど前、こんな指摘をしていた。「高度成長の時代は人間の身体を刺激する新製品が溢れていた。例えば冷蔵庫や電子レンジは清涼感や味覚を刺激したし、自動車を運転して全身で楽しめた。が、今のコンピュータは目から上しか刺激しない」と▼しかし、イメージング技術がここまで進化してくるとデジタルが五感に訴えるツールに成りえる可能性が出てきた▼人の感性を刺激し、それにストーリー性を加味すれば、日々の営業活動にも大きな効果をもたらすのではないだろうか。
(11月23日号)
メンタルヘルス対策のためのストレスチェック実施を義務付ける法案が来月から施行される。従業員は厚生労働省が定める「職業性ストレス調査票」に記された数十の項目に回答しなければならない▼例えば「あなたの仕事について伺います。最もあてはまるものを選択してください」…「時間内に処理しきれない」「自分で仕事の順番・やり方を決めることができる」「職場の方針に自分の意見を反映できる」…▼これらの質問に対して「そうだ/まあそうだ/ややちがう/ちがう」のどれかを選ぶ▼これらを自動で分析してくれるのが昨今業界各社から提供されている労務環境改善システム▼ただ、この分析結果だけで健康に影響が生じるかどうかは個人によって異なるので専門医との面談が必要▼先日、「会社が合併を繰り返して社員数が増え、社内の情報ネットワーク共有は進んだものの、社員どうしの顔が見えにくくなった」と不安がる声を聞いた▼働き方や価値観の多様化によるコミュニケーション不足がなによりも心に異常をきたす原因ではないのか▼先月、京セラドキュメントソリューションズの大運動会を取材した。単なる社員どうしの交流やレクリエーションのレベルではなく、勝利に向かって一致団結する姿は新鮮で感動的。大声で声をかけあい真剣に取り組むのが一番のストレス解消法といえそう。
(11月9日号)
スマホなど携帯電話を利用する情報通信費の家計負担が増え、総務省が値下げを検討するよう業者に指示を出した。仕事でモバイル機器を用いるのは様々な有用性があるが、余暇でそれほど必要なものなのか?と以前から疑問を感じている記者などはやっぱりアナログ人間か▼ハガキなどに付着している紙粉やパウダーを取り除く装置を発売するなど、各種事務機を集めてこの夏フェアを開催した紙製品の総合メーカー、平和堂が英国のシステム手帳「ファイロファックス」を発売した▼システム手帳は仕事のスケジュール管理をシステマチックに運用できると日本では30年ほど前から売れ始めた。その代名詞でもあるファイロファックスはビジネス手帳の元祖で、ルーズリーフ式の用紙を革製のバインダーで綴じた商品は1921年に生まれたという▼欧米では「オーガナイザー」と呼ばれるが、日本では「システム手帳」の名で人気を博した▼かつての輸入事務機はドイツ製や米国製が多かったが、英国からは文化が運び込まれるのか。「電子の手帳よりも、紙の手帳のほうが好き」と愛着をもつユーザーは少なくない▼先日、ある業界団体の理事と話していると「20年間ファイロファックスを愛用していたが、二年前にスマホに換えた」と。複数の団体役員を兼任するようになってワークスタイルが変わったらしい。
(11月2日号)
先月は日本人二人のノーベル賞受賞が相次ぎ、日本中が沸いた。医学・生理学賞と物理学賞。日本人の手による科学研究の成果が明るい未来を照らし出す▼ニュートリノを検出するための観測装置スーパーカミオカンデの模型が展示されている東京・お台場の日本科学未来館ではノーベル賞が発表される直前まで受賞者を予想する活動を行ない、発表後は受賞した研究や科学のトレンドを紹介している▼リコーが8月に全天球カメラ「シータ」のアプリケーション開発コンテストの表彰式を開催した場所はこの日本科学未来館だった。360度の映像が撮影できるシータを使うとどんな新しい世界が見えるのか、メーカーもユーザーも知恵を絞ってこれまでにない映像表現の創造を目指す▼日本科学未来館の館長は初の日本人宇宙飛行士、毛利衛さん。「21世紀の科学技術は技術者と一般市民がアイディアを出し合って一緒に創り上げていくものだと思う。これはシータのコンセプトと同じ。ともに共創していきたい」と挨拶した▼メーカーと販売店も共創して新たな市場を創り出していく時代を迎えているのではないかと思う▼ある販売店の社長はこう呟く。「日ごろ研究開発に勤しむメーカーさんには、私たちが暗闇でも安心して前に進めるよう、一歩先の近未来のビジョンを示して足元を明るく照らしてほしい」。
(10月26日号)
「サイン、コサイン、タンジェントを女の子に教えて何になる?」と鹿児島県知事が発言したことで三角関数が話題になったとか。高校の終わり頃から無縁で過ごしてきた記者は数学と社会生活との関係性を問われたら辛いけれど、実際はとても有用なものらしい▼理想科学工業の広報誌『理想の詩』(秋号)の巻頭インタビューで数学者の新井紀子教授は「私にとって数学を語ることはコミュニケーションについて語ること」と述べている▼小中学生の頃はクラス全員が賛成しても自分一人だけ反対する協調性のない子どもだったという。自分の考えていることを皆にうまく伝えられず、もどかしい思いをした。大学で数学に出あい、「みんなが納得できる方法」を知る▼さらに「自分の見ている物事が他の人にも見えているとは限らない」ことに気づき、「たとえ論理が正しくても、話しの前提を相手が知らないと伝わらない」ことを痛感。「コミュニケーションも、論理を組み立てるお作法と、常に相手を思いやる気持ちが大切」▼新井氏は『ロボットは東大に入れるか』プロジェクトのリーダーを務める。人工知能が進化し続けたとき社会への影響を考察する▼今後オフィスの事務作業がコンピュータにどんどん代替されていくのは必至。人とコンピュータがどうやって共存できるか、皆が利益を享受できる成果に期待。
(10月12日号)
今年の日経ニューオフィス賞に応募した企業の数は昨年より二割も増えたらしい。従来は製造業が多かったが、近年はIT関連、金融機関、官公庁など様々な業種に拡がっている▼審査講評によると、新築やリフォームなどの投資は活発で、「オフィスづくりが企業のブランド価値を高める手段として認識されるようになった」と今年の傾向を説明している▼また、受賞企業の声を聞くと、「オフィスが変われば働き方も変わって、目標に邁進できる」というコメントがあった▼「働き方が変わる」…事務機の業界で今大きなテーマとなっている「ワークスタイル変革」がこの分野でも強く意識されるようになってきたのか▼「ワークスタイル変革」は「どこでも仕事ができる」というコンセプトで、社外でも自宅でも、つまり職場にいなくても働ける時代になったという話しだから、オフィス構築とは無縁とも思えるが、実際にどのようなニューオフィスが生まれているのか▼受賞社をいくつか見ると、フリーアドレスを採用したり、モバイルツールを使いやすくしたり、社員同士のコミュニケーションを活発にする仕掛けが工夫され、これらは「変革」を促進する空間といえる▼ひとつ懸念されるのは、応募企業の大半が大都市に所在する本社であること。来年はそれぞれの地域の特性を活かしたクリエイティブな職場が見たい。
(10月5日号)
今年の5月に御年百歳を迎えられた元シャープ副社長の佐々木正さんは電卓や太陽電池の開発など電子立国の父≠ニ呼ばれ、事務機ディーラー団体の会長も務められたこともあり、この業界とは縁の深い方▼この春まではNPO法人・新共創産業技術支援機構(略称ITAC)の理事長として活躍。ここでの講演会では、産官学が連携する共創の心≠唱えてきた▼ITACのミッションは「企業が事業を展開し成長していくにあたって妨げとなる課題を解決するために仲人となること」▼近年、「共に働く」「協力する」を意味する『コラボ(レーション)』という語を頻繁に見聞きするが、実際、技術者どうしが従来の人間関係の枠を越えて新たな繋がりを求め開発や事業を進めるのは難しいのが実情だという▼6月に新理事長に就いた松本紘氏は「異なった価値観や個性をぶっつけ合う共創の場≠ェ必要」だと改めて訴えている▼また、「今の日本のモノゴトづくり≠大変心配している」という松本新理事長は、「現在の不況の一つの原因は、技術が迷って共創道を見失っているから」だと指摘。「異なった価値観を持つ者同士が確かな信頼関係の上で共鳴しあわない限り、新しい物・事を生み出すことは出来ない」と▼佐々木博士のように一人だけの才能で大きな成果を出せた時代は遠い過去かもしれない。
(9月28日号)
今年もコンシューマー向けのインクジェットプリンタ商戦が始まった。キヤノン、エプソン、ブラザーが鎬をけずりあう季節▼今年の各社の新製品発表会をみていると、年賀状作成のPRがやや薄れた感がある。「プリンタは、年末だけでなく年中使ってほしい」▼標語は写真をキレイに印刷=Bインクの品質や印刷機能が向上し、プロのラボ業者の手を借りなくても自前で高画質の写真を出力できる時代になった▼けれども、撮った写真を日ごろ紙に出力しているユーザーはどれくらいいるのか。スマホやタブレットが普及したことで撮影する機会は格段に増えたが、鑑賞するのは液晶の画面でだけ、という人が多いのが現状▼エプソンの発表会でプレゼンを行なった鉄道写真家の中井精也氏は「写真がスマホやタブレットに閉じ込められている。紙に印刷することで解放してあげよう」とプリントすることの楽しさを訴えた▼「光沢紙だけが写真じゃない。マット紙を用いれば紙の風合いや手ざわり感を味わえ、作品の素が見えてくる」「家では真四角や横長のサイズにして家具や備品を飾っている」…「紙の種類やサイズを選べるのは、プリンタ所有者の特権だ」と▼「アマチュアでも想像力と工夫ア次第でプリントはいくらでも楽しめる」。この助言はプロダクション機を使った社内印刷業務にも通じるのでは。
(9月14日号)
文部科学省が小中学生を対象に実施した「全国学力調査」では理科の成績が以前よりも上がったようで、科学に興味をもつ子供たちが増えたのは喜ばしい▼先月リコーが海老名市にオープンした商業施設の名は「フューチャー・ハウス」。フューチャー(未来)の担い手である地元の子どもたちが大勢訪れ、科学技術を体験できるフロアが賑わっていた▼そのオープン記念式典には神奈川県さがみロボット産業特区推進センターから認定された『未来のハカセ』たちが招待された。彼らは「こんなロボットをつくりたい」とアイディアを考案した小中学生▼リコーの近藤会長は「いまや商品づくりはもう川上ではなく川下にきている。お客様のそばでイノベーションを創り出す時代」▼先月は学校が夏休みということもあって文具メーカーの団体が主催した「文紙メッセ」の会場にも多くの子どもたちが押し寄せ、各ブースで工作や描画などに取り組んでいた▼本来は卸や小売業者が商談を繰り広げる場。一般市民に開放していていいのかと、来場していた納品業の方に聞くと「子どものときに体験した思い出を大人になっても持ち続けてもらうことを願って当社も地元で毎年フェアを開催している」と将来を見据えた考え方をうかがうことができた▼短期間での成績ばかりが評価されがちな昨今、長期的な視野が大切。
(9月7日号)
日本経営協会がビジネス現場でのコミュニケーションの実態を調査し、その結果を白書としてまとめた。企業や団体が内外でどのように情報や意見を交換しあい、どんなツールを使っているのかを詳細に尋ねていて興味深い▼通信技術が発達したことで情報を伝達するツールやメディアは多種多様になった。5年前の調査に比べるとICT技術のスキルが一段と高まったことで伝達スピードが速まり、社員同士での情報共有も簡便になり、業務は効率化している▼その一方で、直接会話することが減ってきている。「日常の会話」や「相手を理解しようとする意識」など、話し方や聞き方の「スキル(能力)」が低下してきた、と問題視している▼自分と年齢が離れた世代や立場の異なる人とコミュニケーションを行なう際、「悩む」という回答があり、「現代人は発信の仕方が一方的になっている」と指摘▼先日、某社のインタビュー取材で「事務機の商売は対面販売が基本。昔も今も変わることはない」と断言している人がいた。「提案するには相手と直接会うことが鉄則」だと▼電子メールやSNSは「対面」の補助剤にしかすぎないのか。白書では非対面コミュニケーションの弱点をICTが克服することに期待を寄せている▼かくいう小紙もメディアながら文字を一方的に流しているだけかも。読者との双方向を考える。
(8月10日号)
戦後七十年目の夏を迎えた。一九四五年の終戦まで十五年戦争と呼ばれた期間を数えると、日本が先の戦争に関わり始めたのはおよそ八十五年前になる▼遠い昔の出来事であるし、もう二度とありえないと信じきっていたが、安保関連法案が強行に推し進められるなど最近の政情をみていると俄かに現実味を帯びてきた▼この国が何故、どのようにして戦争に突き進んでいったのか、また、どんな戦い方をしたのか、いま真剣に考える時期といえる▼太平洋戦争で大敗した原因は二つの技術が欠落していたとNHKのドキュメンタリー番組「エレクトロニクスが戦(いくさ)を制す」で知った。情報技術と防御技術に大きな差があった▼日本の戦闘機の動きを逸早くキャッチしたのは米国が開発したレーダー。一方、日本軍は兵士が双眼鏡で見張りをしていた▼米軍の戦闘機は操縦席に防弾鋼板を厳重に装備してパイロットの命を守ることを重視したが、零戦はこれを軽視し、機体を軽くして飛行距離と速度を優先する設計だった▼技術以前に意識が違った。大和魂で突貫、玉砕と特攻の精神。このような戦い方から今の私たちは何を学べばよいのか▼終戦直後、各地の在郷軍人会で関係書類の多くが焼却された。戦時下でどんな判断をし、どんな文書が作成されていたのか、当時の資料を保管しておいてほしかった。
(8月3日号)
「顧客満足」。仕事に携わる誰もが胸に抱く目標だと思う。コニカミノルタビジネスソリューションズは感動をお届けする≠目指して、様々なソリューション事業を強化するなか「保管文書ゼロ化」のプロジェクトを立ち上げた▼ペーパーレス化が叫ばれて久しいもののオフィスの紙文書はなかなか減らない。それに、紙出力機器を販売する企業がこのような宣言をするのは矛盾ともいえそうな戦略▼いずれにしても、保管文書が無くなるサービスが実現すれば、オフィスユーザーは満足を超えて感動するにちがいない▼6月にJIIMA(日本文書情報マネジメント協会)が大阪で開催したセミナーは終日大雨でも会場は満席。製薬会社の情報管理担当者が電子化に取り組む現場の苦労を切々と伝えた▼「うちはIT屋ではないので上手に電子化できるか不安」「トラック8台分の紙文書をどうにかしたい」「電子化しても20〜30年すればフォーマットが変わって読めなくなるのでは?」…社内でこのような声があがって及び腰になり、「助けてほしい」と▼コニカミノルタは「ゼロ化」プロジェクトを、自社で実践して新事業に育てるという▼先日、出力機器のメーカー団体、JBMIAのオフィスは「過去の文書が多くて倉庫を借りて保存している」と聞いた。「ゼロ化」は業界をあげて実践してみてはどうか。
(7月27日号)
複合機ビジネスから、複合ビジネスへ=B広友イノテックス社の野村専務はコピー機業界にこんな一言を投げかけた(前号に記事掲載)▼小紙が毎年実施している「全国ディーラーアンケート」では、「業界外の商品を取り扱っていますか?」という質問を6年間続けている。取り扱っていると回答する企業とそうでない企業が近年はほぼ半数ずつの割合になってきた▼かつては「コピー機一本」で充足できたこの業界も複合ビジネスに取り組む必要に迫られて久しい。LED電球やプロジェクター、テレビ会議システム、モバイル、内装工事、クラウド、さらにミネラルウォーターと多岐にわたる▼コピー機業界に長年携わった経験のある野村氏が勧めるのは、中小オフィスユーザーのファイルデータを守るサーバ運用サービス。「複合機の保守メンテナンスを日々行なっているサービス担当者が適役。これによって、事務機販社の収益力は回復する」と▼カウンター料金が徐々に減少し、収益性が低下し続ける複合機ビジネス。野村氏の試算では「現在の複合機のMIF(稼働台数)顧客の1割にこの新サービスを提供すれば、日々の収益の目減り分を補完できる」▼コピー機業界はいまやドキュメントソリューション業界。文書情報を蓄積・運用するサーバは、取り扱いにくい業界外≠フ商品とはいえない。
キソ化成産業がレーザープリンタで印字できる和紙のラベルを発売した。図柄に金色などを漉き込んで和風のイメージを取り入れている。用途は、例えば地元の特産品である和菓子やお茶の容器、陶器など置物を入れる箱などに利用できる▼開発者に投入した背景について聞くと、「和紙がユネスコの世界無形文化遺産となったことやクールジャパン、東京オリンピック、また、海外からの観光客が増加するインバウンド効果など、和風のブランドが好まれ、付加価値が向上する傾向にある」と指摘する。同社では既に糊無しの和紙も販売量が昨年から前年比2割増加しているという▼日本を訪れる外国人客は1千3百万人を超え過去最高、消費金額も2兆円とこれも過去最高の勢い。和ものブームで沸騰するこのインバウンド市場に各業界は期待感を高める▼向き合い方の要諦はおもてなし≠フ精神。来訪者を歓迎する様々なサービスが繰り広げられ、この国の自然や郷土料理、文化、技術などに好感や憧れを抱く外国人が増える▼その半面、労働者として既に入国している人たちの状況は過酷だと訴える報道が後を絶たない。働く場だけでなく、生活面でも外国人の家族が快適に暮らせる国とは言い難い▼旅行者には温かいが外国籍住民には冷たい日本社会。これを改善しないとリピーターは増えないと思う。
(7月6日号)
JIIMA(日本文書情報マネジメント協会)が開催した講演・セミナー、懇親会に参加した(記事は前号)。クラウドやビッグデータの時代といわれる今、文書情報が紙から電子へと急速に進む数々の動向が紹介され、デジタル社会への大きなうねりを感じた▼懇親会には国会議員や国会図書館館長、国土交通省・経済産業省の担当部署からも責任者が出席してスピーチが続いた。ドキュメントの業界が提供する技術やサービスへの期待が大きいことを確認。一方、これまで行政に対して旺盛に働きかけをしてきたJIIMAも逞しい▼e‐文書法の規制緩和や会社法、個人情報保護法の改正、不正競争防止法など、次々と繰り出す役人の明晰な頭脳に感心する▼とはいえ、日本年金機構がサイバー攻撃を受けて個人情報を大量に流出した事件をはじめその他のネット犯罪があとを絶たない情況を見ていると、いくら優秀でも、仕組みづくりだけが先行しているようで、どうも現場での運用は心もとない。「紙の書類に戻してくれ」という声が出て当然▼来年1月から施行されるマイナンバー制度は大丈夫なのか? ドキュメント各社はこの制度への対策ソリューションを続々と提供し始めた。企業が社員の情報を安全に保管するためのサービス▼「ユーザーに安心を提供する」。この業界は紙の時代からそれを使命としている。
(6月22日号)
全国各地のビジネスパートナー販社が日ごろ営業活動に勤しみ、メーカー主催のコンテストでしのぎを削る。一年間の努力を称える表彰式はいつ見ても晴れがましい。インセンティブの賞金や海外研修旅行への招待など褒章制度はどの競技会でも用意されていると聞く▼表彰式の壇上にはパートナー各社のトップが立つが、ふと、彼らを支える多くの従業員はどんな人たちなのだろうと想像させる講演を聴いた▼先月、東芝テックが開催したパートナー表彰式での講演会で、元はとバス社長の宮端清次氏はES(従業員満足)の重要性を訴えた。「部下を末端だと思っている経営は破綻する。自分の代わりに頑張ってくれているという気持ちをもつことが大事だ」と▼かつて高度経済成長の時代、池田勇人内閣が掲げた所得倍増計画は、働く人の給料を2倍にしようという政策目標。当時の企業は設備投資も旺盛だったが、「人」を最優先した。今振り返れば、経営者も頑張って≠サういう判断をしたのだと思う▼消費者は買いたいものがいくつもあったから頑張った。結果、モノが売れて景気が良くなり、国民1人当たりの消費支出は10年で目標通り2倍以上に拡大した▼それから半世紀。いま買いたいモノは何なのか。顧客の満足を考える前に従業員が求めるモノ(コト)を考えるのが経営改革の早道かもしれない。
(6月8日号)
先月、「環境/CSR」特集を組むと業界の数社に提案したところ、「商品をPRする企画ではないので…。」と消極的な返答をした企業があった▼たしかに、造った製品を売ることが差し迫った課題であるから、商品についてふれない特集は関心が低い傾向にある▼しかし、売り切りのビジネスでなく、顧客との強い信頼によって長年繋がりを保つのがこの業界の特質であるから、他の業界よりも永続性を大切に考える企業は少なくない▼最近よく耳にする「サステナビリティ」という言葉は、口にするとき舌をかみそうなので、まだまだ定着しているとはいえないが、環境問題やCSR(企業の社会的責任)を考える上では重要なキーワードだということがリコーの取り組みを取材して分かった▼同社は「気候変動による災害の増加や、経済成長やグローバル化の負の側面ともいえる格差・貧困の拡大、人権問題、環境汚染など、これらの問題を解決し、社会の持続性、すなわちサステナビリティをいかに向上させるかは人類にとっての喫緊の課題」と捉え、「環境事業開発センター」を来年から本格稼動する▼今が良ければいいのではなく、将来に渡って好ましい状況を保ち続けることを目指した取り組み▼「経済を発展させることと地球環境を守ることは両立できるのか?」。この問いに答える企業が生き残るのだと思う。
(6月1日号)
新聞紙もバリアブル印刷する時代が来たのかと驚嘆した。「事務機」の隣にある「印刷」の業界紙▼先月インテックス大阪で開かれた「JP展」に行くと、初日の朝に行なわれた開会式の記事が載った新聞が数時間後に会場入り口で配布されていた。驚いたのはその速報性だけでなく、1面の片にあるスタンプラリー企画の紹介内容が一部一部違う▼来場者は一人ひとり、異なる訪問先情報を見て、各ブースのスタンプを集めに回るという新たなイベント体験を楽しんでいた▼近隣の業界とはいえ、この画期的な紙面を刷っているのは、「事務機」のメーカー各社によって年々進化しているプリントオンデマンド技術。このデジタルによる可変情報印刷とオフセット輪転機のスピード性を融合させた▼さらに、紙媒体とインターネットをつなぐ♀驩謔ニしてAR(拡張現実)を利用し、ポスターにスマホをかざすと動画が現れ景品が当たるサービスもあった▼印刷業界は今、受注産業から創注産業≠ヨの転換を図っている。ただ、主催者に聞くと、依然来場者の殆どは印刷業者だという▼会場ではかつての複写機では出来なかったような成果物が数多展示されていた。オンデマンド市場は印刷業界だけのものではない。一般企業の社内印刷ニーズを喚起するのは複写機販売で培った事務機屋の顧客対応力がものをいうはず。
(5月25日号)
「スマホだけで仕事が出来る時代になった」。そんな声をよく聞く。通勤電車でスマートフォンやタブレット端末を操作する人を見ない日はない▼情報機器が生活の一部となる一方で、その「依存症」が問題となっている。ある調査によると、スマホが手もとにないと不安になって学業や仕事に支障が出るケースがあるという結果が出ている▼先月、信州大学の入学式で「スマホやめるか、大学やめるか」と学長が新入生に迫った。「独創力がなくなる」と▼2千年以上前の中国の書物「荘子」に「機(からくり)心」についての逸話がある。「機械というからくりに従事していると、やがては心が乱れて道を踏み外す」▼相手と手紙でやり取りしていた頃は返事が来るのに十日は待てたが、FAXだと2日、今はケータイでメールを送って半日以内に返信が来ないとイライラしてしまう。人はどんどん短気になり、「メンタルヘルス対策」が施行されることに▼速く物事を処理する目的は、それによってゆっくり考える時間をつくり出すことにあるはずが、その時間さえも効率化を競ってしまう。情報機器を扱う業界は最終的に何を目指すのか▼記事を書くのに20年ほど前からキーボードを使っているが、つい先日、他の新聞社の記者が原稿用紙に鉛筆で書いている姿を見た。自分はもう戻れない、と「機心」について思った。
(5月18日号)
スキャナ製品の出荷台数が前年比二ケタ減と大幅に減少した(IDCジャパン調べ)。その要因は「自炊ブームが終わったため」だという▼自炊(じすい)とは、ユーザーが所有する書籍や雑誌を、スキャナを使ってデジタルデータに変換する作業。電子化するとき、データを自ら吸い込む≠アとからそう呼ばれた▼また、読み込む器材を持たないユーザーがデータ化作業を業者に委託する「スキャン代行サービス」も一時流行った▼いまペーパーレス化がどれくらい進んでいるのか不明だが、紙の原稿が数多存在してこそ「スキャナ専用機」の存在価値がある▼日本経営協会が長年実施してきた「電子化ファイリング検定」試験は一昨年「電子ファイリング検定」へと名称を変えた。かつて文書は紙を読み取って電子化したものが多かったが、近年は元本自体がデジタルで作成されていることから「化」は不要だと▼とはいえ、プリンタメーカーによると紙出力量は減っていないというから紙文書は多数存在する▼スキャナ製品はシートフェッドとフラットベッドの二つのタイプがあり、いずれも前年比を割り込んだが、どちらのタイプにも属さないPFUの非接触型のユニークな製品などは好調▼また今年はe‐文書法の要件緩和やマイナンバー制度など法改正が予定され、スキャナ市場にプラスの効果が期待される。
(4月13日号)
花見の宴を今年は職場で開く会社が多いらしい。新入社員も新たな仲間として迎えられ職場内の団結心が高まっているとか▼満開の桜のもとで行楽に興じる人は多いが、この風習がいつの時代からどのように広がって日本文化を象徴する春の風物詩となったのか、そんなことを考える人は少ないかもしれない▼業界各社から入社式の模様が届いた(3面に掲載)。新入社員に贈る各社トップからの激励のメッセージを読むと、「イノベーション」(革新、変革)という言葉が目をひく▼取り組みがイノベーティブであるかどうかを判断するポイントとして、「独創性があるか」「夢(将来性、発展性)があるか」「有益性(実用性)があるか」が問われることになるが、入社したての人たちは未来をどう描けばいいのか▼20世紀、技術立国として発展してきた日本の産業界だが、2000年代に入ってからは足踏みしていると言わざるをえない。ある人が「この国の歴史や文化を振りかえって堀りさげることが日本の産業の復活につながる」と指摘している▼「日本人の好みや仕事の仕方に合ったものをかつては造り提供していたが、21世紀はそれが出来ていない」と▼若い人たちの活躍の場はグローバルに広がっているのはたしか。けれども真のイノベーターに成長するには自国の良さを見つめて豊かな感性を養うことが大事なのでは。
(4月6日号)
TBSテレビの経済バラエティ番組「がっちりマンデー」からまた声がかかった。今度は「一般には知られていないが、その業界では有名な業界スター≠紹介してほしい」という企画だった▼事務機の業界にそういう人が最近は見当らないように思った。昔なら、画期的な新製品を開発した技術者や、凄腕の販売力で勢力を拡げ、怪物伝≠フように名の通った人の話しを聞いたことがあったが▼勿論、今この業界で実力を発揮している人はいる。そういう人を探して番組制作担当者に推薦したが、採用されなかった▼オンエアされた放送を見ると、書店、パン屋、林業、クリーニングの業界には誰もが知る有名人がいることを知った▼従来のやり方に慣れてしまうとなかなか思いつかない新案を考えて実行。お客を満足させるだけでなく、売上増で社員の給料をアップ。さらに、これから就職活動を行なおうとしている若い人たちがその仕事に憧れるようになった、と報じられていた▼事務機は一般のオフィスで使われる商品だから特殊な業界ではない。それだけに、多くの人々が心躍らせるような話題に乏しいというのは寂しい▼そんなことを考えていると先週、関西テレビから問い合わせがあった。最近面白い商品はないのか、と。この業界も目覚しいニュースが色々あるのだと、公共の電波を通じて紹介したい。
(3月23日号)
東日本大震災から4年。復興へ向けて懸命な作業が続く被災地では、自治体職員の疲労が深刻化している。心身ともに疲れ、うつ病を発症する人も。被災者だけでなく公務に携わる人たちの心のケアも必要、と課題が浮上している▼先日展示会で某事務機メーカーのブースに立ち寄り、「お薦めは何ですか?」と尋ねると、自社製品よりも真っ先にストレスを診断するコーナーへ案内された▼メンタルヘルス対策の充実を目的として、従業員数50人以上の全ての事業場にストレスチェックの実施を義務付ける「労働安全衛生法の一部を改正する法案」が昨年6月に国会で可決し、今年の12月に施行される▼メンタルヘルスとは「心の健康」。パワーハラスメントや長時間労働が原因で健康を害し休職する人が年々増えている▼労働者が体調不良になると、企業はコスト面でも生産性においても大きなマイナスとなる。メンタルヘルス不調を未然に防いで、明るく和やかな職場環境をつくることは企業の収益増加につながる、と改めて実感する経営者は少なくない▼ストレスがたまるのは人間関係に起因することが多いというから、50人未満で人事異動の少ない会社のほうが要注意かもしれない▼過酷な労働を強いて社員が退職してしまったら元も子もない。ブラック企業と呼ばれないためにもメンタルヘルス対策は重要。
(3月9日号)
大塚商会の実践ソリューションフェアは今年も東・名・阪で大盛況。東京会場の来場者数は昨年より50%増えたという▼来場動員をかけるのは普通、営業担当者だと思うが、同社ではフェアを企画する部署が担い、工夫を凝らして集客に成功した▼営業部門の活動の成果は先月の決算発表をみても羨むばかりの好業績がうかがえる。売上高6千億円超。年商4千億で驚いていたのはそんな昔ではないような気がするが、「増収増益」「過去最高」と毎年記録を塗り替える▼国内のオフィスユーザーを顧客とするこの業界は厳しい経営環境が続いているはずだが、なぜ大塚さんだけが絶好調なのか▼「クラウドサービス」などの専門用語≠用いないと聞いた。「時代が変わっても、社名を変えない、働く部署の名称も変えない。変えるのは、中身」という信念がある▼部署名にしろ商品名にしろサービス名にしろ、カタカナで字数の多い言葉があふれかえる、そんな業界で、誰にでも伝わるシンプルな表現を心掛けることが顧客に寄り添える秘訣か▼フェア会場内に掲示された看板を見渡すと、「文書がつながる」「安全につながる」「よろず相談」など、やさしい言葉が並んでいた▼中央のメーンステージで最も印象に残ったプレゼンテーターの台詞。「オフィスに必要なものは・・・電気、ガス、水道、そして、大塚商会」。
(3月2日号)
IDCジャパンが先ごろ発表したプリント/ドキュメント管理の成熟度調査では、国内ユーザー企業の約半数が5段階中下から二つ目のレベル2(限定的導入)という結果だった▼これはオフィス機器やシステムの導入判断に関わる人々を対象に、プリントやドキュメント管理の実態、またMPS(マネージドプリントサービス)やモバイル/クラウドプリントの導入状況について聞き取ったもの▼調査では、意思統一、技術、人員、プロセスと四つの視点で総合的に評価した。レベル1は文書管理の仕方が各部署でバラバラに取り組んでいる状態、レベル2は紙出力量を把握するところまで。3はプリントのワークフローを標準基盤化、4はワークフロー全体を最適化(定量的管理)、レベル5はドキュメント中心のビジネスプロセスへ変革を遂げている状態▼国内で初めて行なわれたこの調査では48%の企業がレベル2と圧倒的に多く、レベル5の企業は僅か0・7%だった。米国では昨年レベル3が多数を占めた▼レベル2は、最新の出力機器や文書管理、セキュリティソフトなど導入は進めたものの、社内の一部だけでしか運用されず、隣の部署ではさっぱり…そういう企業が日本に多いと診断≠ウれた▼ハード機器の販売増は難しいかもしれないが、ソリューション提案の伸びしろは充分あると捉えていい。
(2月23日号)
過激派組織ISに拘束され犠牲となった後藤健二さんは中東やアフリカの紛争地に足を運び、そこで暮らす人々と心を通わせた。現場で体験したことを講演会や学校の授業などで語った。「自らの口で直接伝えること」が信条だったという▼「現場」の大切さは業界諸氏もこれまで度々取り上げている。先月の関西リコー会で中村会長は「経営者の使命感と社員のモチベーションは比例する」と、ヤマト運輸の現場の事例を取り上げた▼小船やリヤカー、徒歩でないと荷物を運べない僻地での様子を映し出し、荷物を届けた人と受け取った人とがふれあう感動のエピソードを後日社員どうしで共有しあう研修を紹介した▼これを受けてリコージャパンの佐藤社長は「お客様のことを知るには現場に行かないと分からない」とその重要性を強調。さらに、「多くの営業拠点を構えて現場へすぐに駆けつけられる24時間365日のサポート体制を備えても、それは単なる差別化でしかない。大切なのはお客様のことを誰よりもよく知っていること」と加えた▼現場の重要性は館林リコー2代目社長の語録にもあるらしい。土の中から取り出した玉ねぎは人から人へ手渡されていくうちに姿形が変わるというたとえ▼現場で起こっている真実をいかに正確に伝えるか。その方法や仕組みを顧客に提供するのはドキュメント業界の役割。
(2月9日号)
広いワンフロアのオフィスで大勢の社員が仕事をしている風景をよく見かけるようになった。これは本社を移転する企業の最近のトレンド▼そのメリットはそこで働くワーカー同士のコミュニケーションが活性すること。直接対面で話し合える職場環境が充実し、他の部署の社員とも情報交換できる▼全体の見通しがよく、活気に満ちたオフィスは取材で見学していても羨ましいばかり。ところが、移転して暫らくすると逆のデメリットを感じ始める社員もいるという▼先月プラスファニチャーカンパニーが自社のワンフロアオフィスで催したフェアは、移転1年後に実施した社内アンケートでの検証と改善の取り組みを発表する場でもあった▼間仕切りが少ない開放的な職場に長時間居て気になるのは、響きやすいノイズ(音)。とくに話し声だというから、本来の目的である社員同士の「交流」と個人の「集中」とは表裏一体といえる▼背面が後頭部の位置まで高く伸びたハイバックタイプのチェアやセミクローズタイプのソファに試しに座らせてもらうと、遮音だけでなく周囲の視線をさえぎる効果も体感できた▼ワンフロアオフィスが目指す最大の目標は、それまで分散していた各拠点を集約することで顧客に対して迅速なワンストップサービスを図ること。交流と集中を両立させて成果をあげていただきたい。
(2月2日号)
業界団体や販売店会は様々な活動を行なっているが、なかでも力を入れているのは「教育」だという。市場環境が激変する昨今、新たな技術に対応できるスキルを身につけなければならない▼このような教育研修会の現場を取材する機会は滅多にないが、おそらく専門家が講師となって受講者を指導する、学校でいう授業のような勉強会が繰り広げられているのだと思う▼先日見本市の開会式で今の教育のあり方を考えさせられるスピーチを聞いた▼ある大学講師の話しによると最近の学生はサボってばかりで講義を全く聴こうとしないので途方にくれ、こちらから色々尋ねてみると、インターネットなどあれこれ調べて情報を集め、自ら学習する習慣を身につけ始めたという▼今は上から目線で教え育む℃梠繧ナはないと。価値観が多様化し、何が正しい≠フかが分かりにくい時代。教える≠ニいう発想は上下関係を作ってしまう▼ダイバーシティのマネジメントなどを見ると、支援者が社会的弱者にスキルを伝えるとき教える≠ニいう言葉は「禁句」だという。支援する側もされる側も共に学ぶ学友≠ニ呼びあう▼教育の英訳はエデュケーション。この言葉の語源は「能力を引き出す」という意味だとか。能力が、習得するものでなく元々備わっていると考えれば、互いに尊重しあえる気持ちになれそう。
(1月26日号)
阪神・淡路大震災から20年。この災害を知らない世代がふえつつある。神戸市では被災した人たちの経験一つひとつが神戸の財産、と教訓や知恵を集めて伝えるプロジェクトを実施している。市民団体「阪神大震災を記録しつづける会」では被災者が綴った体験を手記集として出版している▼事務機業界の新年会に行ったら、販売店会や団体が今年は周年事業で節目を迎えるところが多いと聞いた。日本複写産業組合連合会が30周年、関西リコー会が50周年、さらに長い歴史をもつ企業は数多い▼それぞれ設立されたたときの趣意書や会合の記念写真などでこれまでの活動の歴史を振り返ることができるが、昔の先輩方が現場でどんな売り方をしていたのかについては、今ほど情報を収集して記録する時代ではなかったので直接訊かないと分からないことが多い▼最近はモノからコトへ≠ニ言われるが、昔はお客のところへ箱モノを運ぶだけが商売だったのだろうか?▼例えば、「この複写機を社内に置けば、社長さんのメッセージ文書をコピーして社員の皆さん一人ひとりに伝えることができますよ」と薦めた話しを聞いたことがある▼ソリューションという言葉こそ無い時代だが、当時としては訴求力のある提案営業だったと思う。価値ある経験を記録し伝えることが次の世代の繁栄につながっていく。
(1月19日号)
本紙が昨年暮れに実施した「全国ディーラーアンケート」(前号で集計を掲載)では、売上が減少した販社は一昨年よりも多く、政府の経済政策「アベノミクス」を享受した形跡は殆ど見られなかった▼アンケートでは「アベノミクスの効果はありましたか?」という質問を設けたが、「ない」と答えた企業は56%におよんだ(「あった」の回答は8%)。アベノミクスの本丸ともいえる第3の矢「成長戦略」の施策を待てず、解答欄の隅に「早く第4の矢を射ってくれ」と記す悲痛な叫びもあった▼減収の理由を「不況が原因」と答える企業が多かったが、景気が好転するのを受身的に待ち望んでいてもOA業界は活性化しないということをこの「ディーラーアンケート」では何年も前からその兆候を示している▼一方、売上が増加した販社はその理由に「システム化の進展」をあげた。ハード単体売りから脱してソフトやシステムを絡めた営業がソリューション提案につながったかどうかが明暗を分けた▼もう一つ、「不況対策で力を入れたことは?」の中で「人材補強」が目立った。ここ数年これを選ぶ経営者が少なかっただけに注目される。「メーカーとの連携」も上位を占めた▼「OA業界って、どこまでの業種を指すの?」という記述もあったが、他社と連携してサービス力を強化できる人材が今年は期待されている。
(1月5日号)
今年の干支は未。十二支のなかで兎に次いで人気があるという羊は温和で優しいイメージがある。人間に癒しを与える動物▼生命がなくても人の心を癒してくれるペット型ロボットが最近話題になっている。人工知能が発達し、人間の感情を読み取るロボットが今年発売されるとか。人の脳波がセンサーを通して信号となりロボットに伝わる。ロボットと「話したい」「友達になりたい」というニーズが高まっている▼ロボット技術の進展に対する期待は様々な分野で数多い。災害時の救助、介護、工場での作業、家事、道路や橋の点検、農作業、そして、話し相手▼ペット型ロボットは縫いぐるみの電気製品だが、「飼って」いるユーザーにとっては生き物同然の大切なパートナーだという。交換部品が無くなって「老衰」になったパートナーの死を悼み泣き崩れる様子をテレビで見て複雑な気持ちになった▼これほどまでの愛着を機械に対して抱けたら。ある事務機販社では社員全員が「コピー機が大好き」だという。それ故、MFPに進化したこの商品がもつあらゆる機能をオフィスユーザーに少しでも多く活用してもらいたいという想いが沸き立ち、提案活動に熱がこもる▼複写機は機械であり、電子機器でもあり、また、化学反応を起こさせる有機体ともいえる。ペット型ロボットよりも温かみがあるように思うのだけれど。
2015年 ↑
2014年 ↓
(12月22日号)
長年海外で暮らしている友人が先日帰国し、今年1年を振り返る話題になった。いつもインターネットや衛星放送で日本のニュースを見ているが、『今年の新語・流行語大賞』にノミネートされた50の言葉のうち半分は知らないと言う▼国内でずっと生活している記者も、3分の1くらい聞いたことがなかった。情報の仕入れ方や興味・関心が昨今は多様化しているのだろうか▼この業界で今年もっとも流行った言葉はワークスタイル変革≠セったと思われる。小紙の紙面にも何度も登場した。スマホやタブレットが普及し、その利活用が加速、ビジネスシーンやサービス提供の様子が変わってきた。遠隔地との情報伝達もテレビ会議やWeb会議の発達で迅速化した▼「こうした現象が2014年のトレンドでした」と小紙の読者で中小企業の経営者に申し上げたところ、「働き方が変わったところで、一体どうなるの?」と白けた返事が返ってきた。売上や粗利が増加しないかぎり変革とはいえない、と▼モバイル機器を有効活用したい企業の意識はたしかに高まっているが、導入したものの机の中にしまったままという会社も多いとか▼肝心なのは顧客やパートナーとの関係性が深まること。働き方変革はそれを達成するための手段▼来年はコミュニケーションを充実させるための言葉が流行するかもしれない。
(12月1日号)
12月1日は映画の日。テレビが普及し映画産業が斜陽化した昭和30年代の半ば、巨匠と呼ばれた明治生まれの映画監督が「テレビに対抗して開発された70_フィルムはサイズを逸脱している。技術は進歩したのかもしれないが、散漫すぎて芸術性に欠ける」と憤慨した。しかし時代の流れか、その後劇場で上映される作品は横長の大画面が主流になる▼最近、パソコンショップの店頭ではスクエア型(縦横比が4対3や5対4比の画面)が姿を消し、並んでいるのはワイド型(16対9や16対10)ばかり▼世界各国にディスプレイ製品を供給しているメーカーの担当者に聞くと、コンシューマー向けのPCは9割がワイド型。同社の製品カタログを見ると20機種以上あるラインアップのうちスクエア型のモデルは一つだけ▼法人ユースの市場も、欧米だけでなくアジア諸国でもワイド型が圧倒的。そんななか日本のビジネスユーザーだけがスクエア型を求めるらしい▼机上のスペースが狭いのか、縦方向でWebやワープロソフトが見やすいのか、はっきりとした理由は不明だという▼スクエア型の生産中止を考えるメーカーもこの根強いニーズに首をかしげる▼冒頭の映画監督は明治時代の生まれだが、生粋の西洋人だった。日本贔屓だったらしいので日本人の感性や美意識を熟知していたのかもしれない。
(11月24日号)
GDP(国内総生産)が予想外のマイナス成長となり、国内市場にショックをもたらしている。「アベノミクスは失敗だった」と野党から批判の声があがっているが、景気の足踏みは政府だけの責任だろうか▼日ごろオフィスビジネスの進展をサポートし続けるこの業界も、ユーザー企業への対応の仕方に甘さがあったのでは?▼国内の様々な市場を調査するS社は「コスト削減を訴求するだけでは、ソリューション提案として不充分」と指摘する▼コストダウンを実現することは企業の収益を改善させ、売上増加と同等の効果ももたらすから、たしかに価値はある。しかし、これだけでは企業は元気にならない▼例えば遠隔会議システムの市場動向をみると、S社が三年前に調査したときは、企業は社内の拠点間での利用に留まっていたが、その後ICT環境が進み、様々の機器やサービスを組み合わせることで、状況に応じて働き方を変えられる柔軟なワークススタイル変革を実現。そうした企業が少しずつ増えてきた、と今年の調査結果にあがったという▼携帯電話からスマホへ、パソコンからタブレット端末へ、単なる置き換えではなく活用の提案が重要だと▼事務機器の業界には顧客企業の、その先の顧客にも満足を与える≠ニいうコンセプトがある。今の日本経済を救えるのはこの業界だけかもしれない。
(11月10日号)
ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)の複写機・複合機部会・サービス分科会による「懸賞論文」募集で優秀賞に輝いた方々の体験論文を拝読した。今回のテーマは『私が考える10年後のサービスの姿とは』▼今年はこの懸賞が始まって25年目になる。事務機のサービス・サポート業務に携わっている人たちの環境は大きく変わった。機器はデジタル化し、ビジネス文書は紙だけでなく電子データとしても扱われるようになり、受賞者はいずれも「ICTの知識が必要とされ、そのスキルアップに取り組んできた」と述べている▼この先10年後は「保守・メンテナンスのリモートサービスがさらに進化し、機器のトラブルやエラーの発生はネットワークで自動検知する。機械が自分で故障の箇所を診断し、トナーの発注もカウンター検針も自動」と予想する▼そうなればコールセンターもエンジニア自身も不要になるのでは?と不安になるが、「今以上に求められる存在になる」「お客さま接点力≠ヘ絶対変わってはいけない」と断言している▼優秀論文から伝わってくるのは、商品が「複写機」だった頃のこの業界のビジネスは、「複合機」の時代になって、拡大し、深化しているのだという意識▼いま飽和状態といわれるオフィス向け複合機の国内市場だが、10年後は活況を取り戻した業界の姿を見たい。
(10月27日号)
日本経営協会が刊行した「ノマドワーカーの働き方実態調査報告書」では、最近注目されているこの新しい働き方について、ノマドワーカー自身と企業経営者に対してその意識を訊いている▼「ノマド」とは英語で遊牧民のこと。定まった職場を持たず、転々と場所を変えながら仕事をする人たち。長い歴史のなかで農耕・定住・集団で生活を営んできた日本民族とは行動スタイルが異なる▼何故このような働き方を選んだのかという質問にノマドワーカーは「自分の能力やスキルがより活かされると考えたので」と答えており、「自分らしく働ける」とワークライフバランスについては満足し、収入については満足していないケースが多いという▼一方、企業や組織側がノマドワーカーと連携する理由は「外部から高い専門性と知識・情報を調達して事業展開に役立てるため」で、半面、「機密や内部情報が漏えいする」「信用できる相手かどうか分からない」と信頼性への不安も感じている▼それでも、スピード化や創造性が求められる昨今、「今後は連携・活用の機会が増えると考える」の回答が半数以上を占めた▼最近多くの企業が社内で推進する「ワークスタイル変革」も社員のノマド化≠ニいえそう。社内外で既存の概念に囚われない異民族≠ェ活躍することで社会全体でのビジネススキルが向上していくのでは。
(10月13日号)
複合機やプリンターをムダなく使えるようサポートするMPS(マネージド・プリント・サービス)がユーザーに好評だという。IDCジャパン社の調査によると、導入したユーザーの半数以上が満足または非常に満足と回答し、この市場は今後年平均成長率が14%で伸長、4年後は763億円に達すると予測している▼ただ、このアウトソーシングサービスの内容を理解しているユーザーは3割に満たず、認知度は低い。従業員百人未満の企業では2割を切る▼MPSを導入すれば紙出力環境のトータルコストが把握・削減でき、業務の効率化や環境負荷軽減などの効果を得ることができる▼サポートベンダーの担当者に聞くと、「とくに導入当初は効果が大きく、削減した費用でサービス料が支払えるので喜んでもらえる」と。ただし、このオフィスのダイエット≠ヘ、しばらくすると体重≠ェリバウンドすることがあるので、維持・運用の仕方には取り計らいが必要だと▼認知度が低いのは導入企業が大手ばかりが現状だから。だが、5台や10台の小さな組織でも効果は出せるという。まだ僅かだが地域の事務機販売店でMPSに取り組むところもある▼機器の設置台数を減らすという、これまでとは逆の発想ともいえるので戸惑うかもしれないが、基本は顧客に密着すること。事務機屋にはその資質がある。
(8月25日号)
8月は日本が不戦・非戦の想いを強くする月。2つの原爆の日と終戦の日が続き、戦後69年経ってもこれら式典は今の問題として執り行われ平和を祈る▼いつの頃からか戦略≠ニいう言葉に違和感を覚えるようになった。「戦」という文字を見ると戦争を想起し、人が傷つくイメージを抱いてしまうからかもしれない▼企業の方針説明会などに行くと必ず新戦略が発表される。企業だけでなく政府も「成長戦略」を進める▼「戦略」や「戦術」を『デザイン』という語で置き換えてみてはどうかと考えさせられる講演を聴いた▼issue+design代表の筧裕介氏は「デザインとは、問題の本質を直感的に捉え、そこに調和と秩序をもたらす行為。多くの人の心に訴え、行動を喚起し、社会に幸せなムーブメントを起こす活動」だと説明していた▼デザインは、狭義では図案や模様など美術的な施しを指すが、広義では「設計」や「計画」も意味し、考え方や発想の仕方など多義的に用いられる▼筧氏はCSRとともに最近注目度を高める「ソーシャルデザイン」を提唱している。課題に直面している人たちの声を聞き、仲間を集め、意見を出し合って進路をつくる▼今、価値を産み出す「デザイン力」とは何か。共感を得るためには誰もがデザイナーの意識をもち、互いに、競争でなく共創しあうことなのでは。
(3月3日号)
年度末に向けた展示会が先月から各所で活発に催されている。毎年恒例≠フ行事とはいえ主催者は工夫を凝らしてリニューアルを試みる。昨年との違いを発見するのは取材の楽しみの一つ。そんななか、見た目は大して変わっていないのに、来場者が会場にたどり着くまでの前段階での導き方を大きく変えた展示会があった▼デュプロは昨年までタイトルとしてきた「新春フェア」を「Duplo Show」というネーミングに変えた。変わったのは題名だけではなかった。副題に記載されていた文言は、デュプロが少し変わります。=B▼開催前に送られてきた案内パンフレットを見ると、ユーザー(来場者)の業種や業態がまず目に入り、「医療」「小売」「製造」「物流」「印刷」「「自治体・官公庁」「教育」「新聞販売店」「オフィス」など、それぞれが抱える課題を個別に列挙。その次に解決策を提示し、解決する製品やシステムは最後に記されていた▼書き方の順序を変えただけ、のようにも見えるが、ユーザーの立場に立って考えれば、自分の関心のあるブースから見ることができ、時間を有効に使える。さらに、これまで見過ごしていた製品や提案と出会う機会も広がる▼売りたい商品を「主語」から「目的語」に置き換えて、顧客を主語にした。変えたのは少し≠セけだが、ソリューションの価値は増大する。
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